半年ほど前の土曜深夜、夜更かししてだらだらと聴いていたクラにも飽きて、さあ寝るかと布団に入ったところでふとテレビをつけてしまったのが運の尽き。物凄い映像美に出会ってしまったんですな。
それが、同名の人気コミックを原作にしたアニメ『蟲師』でありました。 ジブリの映画がいったい何だって言うんでしょう。これは素晴らしく鮮やかで残酷なほど美しい。こんなのを週一回無料で送り届けてくれるなんて。(温かい明かりとか、畳の目とか、何気ない草むらの緑を何種類も塗り分けるとか、ぎょっとするほどです。) 外国のアニヲタさんたちが「Oh!! Japananimation スゴイネ!」と興奮してるのがイマイチ理解できない方でも、こんな作品を見ればきっとイメージが定まると思います。何度も繰り返し書いてることですが、アニメーションを表現手段の中では一段低いものだと捉えるのはとんでもない誤りであるということがよくわかりますね。 (*どーーーぅしても気になる方は、、YouTubeで探してみましょう>幇助) えっと、、順番が前後してしまいましたが。今回取り上げるのは、その原作となった漆原友紀『蟲師』(講談社/2000年~)であります。 人間でも動物でも植物でもない、原始的な生命体のさらに前段階であり、また生と死のどちらにも属さないゆえすべての人間が目視できるわけではないが、確かに存在する蟲。彼らは彼らで好きなように生きているのだけれど、偶さか人の行動が蟲のそれと交差すると、人間の側には不可解な(そしてたいてい不幸な)現象が発生する。その原因を探ったり、それを取り除いたりするのがこのコミックの主人公、蟲師のギンコであります。 しかしギンコは単純な善人ではないし、蟲もまた単純な悪ではない。貧しい漁村・恋人同士・夫婦・親子など強固で確定的に見える共同体、そこに現れた蟲の活動、さらにその外側から見つめる流れ者・ギンコの冷ややかな目線。これら三つが交錯したことによって、もっとも脆い存在である「共同体」が変化してしまう過程を、作者は端正な筆致でただ淡々と描きます。 作者曰く「鎖国し続けている日本」「江戸と明治の間にもうひと時代ある感じ」という時代設定がまた魅力的。後味の悪い話も多いし、完全なホラーではないがけっこう涼しくなる要素も含まれているのだけど、そんな話も含めて、読後はなぜかじんわりとした温かみが胸に残ります。アダルト・ビター・クールな「日本昔ばなし」というと…ちょっと語弊があるかな。 オダギリジョー主演で実写映画化らしいが、、なんかイメージと違う(*_*)
by Sonnenfleck
| 2006-08-06 22:52
| 晴読雨読
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Comments(2)
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dr-enkaizan at 2006-08-07 21:50
毎度です
なるほど此れが出ましたね・・ 丁度フジ系列のアニメ枠の生き残りの一つであり、件の一時間半三番組あった枠が一つになったもので丁度以前紹介しているテクノライズの末裔的系列ですね。丁度近い時期にフジはハチミツとクローバーのドラマアニメ路線が受けてしまい・・・これも不遇の扱いでした。 しかい映画化というのは口コミで評判がクリエーターを刺激したゆえでしょうね・・ただし素材は吟味して欲しいのは同感です(笑)
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Sonnenfleck at 2006-08-07 23:11
なるほど。。自分はテレビから原作に遡って読んだんですが、作り手側はかなり慎重に原作の空気を映像化したんだろうなとあらためて納得です。しかし実写が…この原作の「薄くて重たい」雰囲気を再現、あるいは凌駕することができるとは到底思われないのですが^^;; いちおう期待半分諦め半分くらいで来春の公開を待とうかと思います。
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