今日は突発的に仕事がお休み。こんなこともあるのか。 ということで少し遠出、お隣は豊田市にある豊田市美術館まで行ってきました。 初っ端からですが、うーん、、ここはかなり気に入ったですね。 オープンは1995年、高台にドカンとそびえるシンプルな筐体は、名古屋らしからぬ(ごめんなさい)アカヌケぶりです。収集と展覧会企画の対象がモダン以降というのも個人的には萌えポイント高し。名古屋地区で「通いたい」と思う美術館がようやく見つかりました。。 開催中の「GARDENS―小さな秘密の庭へ」は、10名の現代美術アーティストがそれぞれに「庭」の概念をモチーフにして制作した作品を連続的に体験できる、コンパクトな特別展であります。表現が高踏的すぎて何が言いたいのかよくわからない「ゲンダイビジツ」と、センセーショナルな餌で「へー」と驚かせつつ一瞬で印象が消えるコンテンポラリー・アート、これらばかりが蔓延っている印象は一般的に言って確かにあるんですが…嬉しいことに本展は両者の長所を巧く汲んだナイスバランスな作品が多かったですね。 第2セクションにいきなり登場したのは、居酒屋でビールやコーラの壜を冷やしているあの素っ気ない業務用冷蔵庫。その中には照屋勇賢の《Dessert Project》が収納されている。…冷やさなければならないのは、それがデザートでできているからです。 砂糖とお菓子で構築された彼の小さな街並み・青いゼリーの海は確かにキュートなのだけど、どこか不穏な人工性を主張している。。不思議です。 第2セクションと第3セクションを隔てる壁に、大人がやっと頭を入れられるくらいの覗き窓がついています。中を覗くと、、そこには水溜りと繁茂する羊歯が。これは比喩でもなんでもなく、栗林隆の《Divider》は本当に壁の中に小さな庭が構築されている作品なんですね。しかし窓から頭を抜くと、美術館らしい白い壁と監視のお姉さんが座っているのが見えるわけで。自分を守るためには、究極的に囲うしかないのか。あるいは秘密の花園2.0。 第6セクションに入ると、甘い匂いがしてきます。 ジャック・ヴィエイユの《ガール・オブ・ランド》は、とちおとめの鉢が何百も放射状に並ぶ巨大なインスタレーション。蛸足状の水生栽培機構により極めて人工的な形で栽培される苺ですが、冒頭の《Dessert Project》の暗い人工性とは違って、何か火傷するくらいの絶対的な肯定ニュアンスが漂っているんですよね。栽培されてるのが苺だからなのかなあ。 第7セクションには樹木の化石が折り重なっているような白いセラミックの泉―小粥丈晴の《泉》が現れます。 水面は一見死んでいるように動きませんが、近づくとかすかな水音が。死んだ樹木の先端から静かに落ちるように設計された水滴がやはりポジティヴな印象を与えて、この回遊式庭園を閉じるのでした。 …うちはいつも夏の日ざかりですけど、たまには11月の弱い陽光を入れたりしてもいい。
by Sonnenfleck
| 2006-11-10 23:40
| 展覧会探検隊
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Comments(4)
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s_numabe at 2006-11-11 01:49
おう、遂に行かれましたか、豊田市美術館。ここは実は日本で最も素晴らしい美術館なのだ。建物、展示室、コレクション、展示方法、展覧会企画力、そのすべてに洩れなく及第点のつく、この国では他に例をみない場所なのです。カフェも居心地がいいですよ。いつも行けて羨ましいな。
たった今、TVでノリントンの「39番」が始まりました。奇矯のようで奇矯じゃない、これは凄いですね。
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ここ、いいですよね。内装もシンプルで居心地いいですし、、。
GARDENSは実はだいぶ前に私も見に行ったんですが、感想書きそびれてました。あの額縁の穴は傑作です。思わぬところにアザラシの頭とご対面で、空間が歪んだような感覚がしました。よくよく考えたら「なんだ、オレもアザラシと同じ姿勢じゃないか・・」と気づかされたり。。。 モダンアートなんだけど、高踏的じゃなくどこかエンタメ的要素もあったりで、「スッと入り込めるモダン」なところがいいですよね。
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Sonnenfleck at 2006-11-11 14:17
>s_numabeさん
モダンとコンテンポラリーに特化しているのに、無理も気負いもない…素敵な場所でした。常設のウィーン分離派のコレクションもいいものばかりで気に入りました。教育プログラムで訪れていた中学生たちを見かけましたが、、豊田市民は幸せですね。次はカフェにも挑戦しないと! ノリントンの放送日って今日だったんですね…しまった。あれはぜひ映像も見てみたいので、、地上波待ちですか。。
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Sonnenfleck at 2006-11-11 14:24
>kimataさん
やはりチェック済みでしたか^^ 最初は壁の裏側の鉄骨しか見えないので不審がっていたら、監視員に「どうぞ頭をお入れになって…」と言われ、グッと突っ込んで吃驚。あの壁にぶら下がってるアザラシの頭がこの角度で見えるってことは、今立ってる床面は…あれ?と(笑) 間違いなくあそこは空間が歪んでましたね。楽しい体験でした。 ゲンダイオンガクも高踏に高踏で返すような不毛さがありますが(それも魅力のひとつですが)、エンタメを主たる路線にした作品がもうちょっと数多くあってもいいと思うんですけどねえ。
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