あんまり期待しないで出かけたら事実その通りで、逆に安心して見ることができたという変な展覧会でした。
<都市と自然と人びと>をコンセプトに掲げ、「家庭の情景」、「人と自然の共生」、「都市の肖像」という3パートに区切ってエルミタージュの至宝をご紹介!という触れ込みですが、そりゃこれだけ並べれば西洋絵画のほとんどは当てはまるだろと。キャプションもテキトーでなんともいえない散漫な印象。。出品目録がないという時点で怒り心頭でありましたが…それでも心を動かされるものがいくつかあったのは幸運でした。 ■フランソワ・ブーシェ 《沼地の風景》(1746) ↓ ブーシェです。 画像は常識的な色合いに見えますが、実際は全体に青緑色の霧が立ち込めたような湿り気のある絵。 彫像と釣り人を対応させているのは明らか。さらに赤い服の釣り人が持っているタモ網を照準器のようにして視線を後景に誘う、見事な構図だと思います。 あとは後景の入り口左横に立っている樹木がどうも直截な、その…うーむ;; ■ケル・グザヴィエ・ルーセル 《バッカスの勝利》(1911-1913) ↓ ■ピエール・ボナール 《汽車と荷船のある風景》(1909) 画像 ■ピエール・ボナール 《ヴェルノン近郊のセーヌ川》(1911) 画像 そして150年後のナビ派な人々。 寡聞にして「画家の」ルーセルは今回初めて知ったのだけど、鮮烈な色彩で描かれた《バッカスの勝利》は「作曲家の」ルーセルの作品と同じくらい印象的でした。画面を縦に貫く稲妻型の線、そして橙と空の青みのコントラストが実にリズミカル。 ボナールの2作品は、彼の作品の中ではいささか地味な雰囲気。でも《汽車と荷船のある風景》の左下や《ヴェルノン近郊のセーヌ川》の空に置かれたピンクは紛うことなきボナールの色です。前者は汽車が吹き上げる優しい煙、後者は矢鱈と装飾的な地面の草など、見るべきところが多い。 チラシに印刷されて宣伝に使われてる作品では、作者不詳の《聖母子》(15世紀)と、ピーテル・ヤンセンス・エリンハの《オランダの室内》(1670)以外、ピンときませんでした(画像)。エリンハという人の作品は、まあフェルメールみたいと言うのは簡単だけれども…この中にモンドリアンのような美しさを認めるのは邪道でしょうか。。 あとはモネもルノワールもルソーも、なんかなあという感じ。彼らのベストではないような。ゴーギャンは苦手なのでノーコメント。 それにしても「大」は言い過ぎ。よくて「中の上」くらいです。3月4日まで。(公式サイト)
by Sonnenfleck
| 2007-01-14 23:17
| 展覧会探検隊
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Comments(2)
こんばんは。
エルミタージュは今名古屋巡回中でしたか。 東京展では何やらあまり評判が宜しくなかったようで、 結局私も行かずじまいに終ってしまいました。 ちなみに展覧会に付く「大」ですが、 Great Museumという意味で付けられているそうです。 (Great Exhibitionでは決してないと。) どうなのでしょうか…。
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Commented
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Sonnenfleck at 2007-01-18 22:54
>はろるどさん
ちょうど絵画に飢えていたので、比較的気持ちよく見られました(笑) 東京展の会場は都美だったんですよね。もし「たくさんの展覧会のうちのひとつ」であったなら、不快感を覚えたかもしれません。都美の展覧会はこちらの期待を煽っておいて裏切ることが多いですし。。 しかしこれ…Greatなりエルミタージュ、という意味だったんですか。 「大」という漢字のイメージとは対照的に細かくてマニアックな作品が多かったので、これはもしかして「展覧会の題名」に関する自己パロディなのかなとひとりで可笑しがっていたところでした。
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