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くもとちゅうりっぷ

くもとちゅうりっぷ_c0060659_10372171.jpgJapanese Classic Cartoon(1943)

YouTubeで面白いものを発見。
昭和18年(1943年)に制作された、国産アニメーション映画《くもとちゅうりっぷ》がUPされてます。

てんとう虫の女の子と、それを狙うクモのおじさん。女の子はチューリップの花弁の中に匿ってもらうのだが、クモのおじさんはチューリップもろとも糸でぐるぐる巻きにしてしまう。しかしそこで嵐。クモのおじさんは吹き飛ばされて、めでたしめでたし。

くもとちゅうりっぷ_c0060659_10373980.jpg大変素晴らしく動いていて(「のだめ」の演奏シーンよりよく動いてるかも…)、第二次大戦中に作られたアニメとは思えない。。
この作品、付随しているBGMがまたいいんですよ。
作曲者は弘田龍太郎、演奏は作曲者指揮の松竹交響楽団。弘田は『鯉のぼり』や『しかられて』で有名な童謡作家ですけど、クモのおじさんが迫るときのバーバリックなパッセージや、細かい弦楽のトレモロと不吉な金管で描く嵐のシーンなど、ここではリヒャルト・シュトラウス風の鮮やかな大管弦楽に作曲者の懐の深さが知れます。全体的にファゴットのソロがとても多いのが面白い。松竹交響楽団に名手がいたのだろうか?

クモのおじさんの「声優」、村尾護郎という人は、ググってみると戦前の藤原歌劇団で活躍したバス歌手らしく、彼が歌う妖しげなバラードが非常に不気味で味があるのもなるほど納得。2003年までご存命だったようです。をはり。
by Sonnenfleck | 2007-03-11 10:39 | 広大な海 | Comments(15)
Commented by dr-enkaizan at 2007-03-12 20:40
毎度です、この頃のアニメは日本国内の限られたスタッフが、国外の情報が途絶したなか独自に技術を開発したころであります、この前後の桃太郎のはなしをマレー攻略にもじった戦意高揚アニメ、『桃太郎の海鷲』(1942年)や、その姉妹編の『桃太郎 海の神兵』(1945年)などには今日お馴染みでその色合いによってはポケモン事件のようなこともおきる、透過光や、ここに見られるレイアウトのピントをずらす立体的効果など、アメリカに負けじ開発を進めており、今日のアニメの活力の根幹になっていますが、いまのアニメにどれだけの気概があるのは、お察しのとおりでしょうね。

なお・・・村尾護郎氏ですか・・・・宇野功芳先生の声楽の師匠ですね。
ようするに我々は間接的に、氏の孫の世代に当たるわけですね(笑)ではでは

Commented by Sonnenfleck at 2007-03-12 23:17
>ドクター円海山さん
さすがのフォローありがとうございますっ。
技法上の工夫・演出はすでに完成の域に達してますよねえ。雨を下から見上げるカットは戦慄しました。ジャパニメーションの遺伝子をビリビリと感じます。
しかしクモのおじさんが水没するシーンはなんだかとても悲しかったのですが、戦局が悪化する中で、いっぽうでアニメも戦意高揚に使われてたんですね。。不謹慎かもしれませんが、「桃太郎」2作も見てみたいものです。

なんと功芳センセのお師匠でしたか>村尾氏。物凄いところでつながっていますね。
Commented by dr-enkaizan at 2007-03-13 00:27
コメントこちらにも恐縮です、最近レスピーギでカルミナに火がつき、サティーのネタ中編の仕上げと多忙が重なりまして、そんな頭には少々リフレッシュする話題でありました。
>ジャパニメーションの遺伝子をビリビリと感じます。
たしかに実は、最近フジ系の二つのアニメの評価が逆転してしまいました、テレビドラマ『電車男』のオープニングから派生した月面兎兵器ミーナ方が期待してなかった分、意外にもに音楽も作りもよく驚いております、どうもアニメのの○メは製作者側の音楽の無理解が露見されつつあり、東京ではアレグロバルバロが流れる状況の回なのですが、オケは依然動かず、台本がナイスナ補足もご指摘通りなのですが、やはり実写のオケでのそれが比較され非常に期待の大きい分のダメージがあります。
そして原作の17巻の人間ドラマが濃厚にながれだしている、流れを見ると今の演出では破綻をきたしそうなので、アニメが一連の暗黒史ではと危惧されております。ともかくアニメであるから動かないのは致命的なのかもしれません。つづく
Commented by dr-enkaizan at 2007-03-13 01:09
かつて今日の料理件シンセサイザーの冨田勲氏が言っていた、シンセサイザーはオーケストラの器楽の音色を模倣して、それに等しくなるが、そこで作るのはオケの代用ではないという意が、ここにも通用するようであり、おそらくこの枠の週ドラの代用でのアニメというコンセプトがことさら一連の流れを悪くしているのかもしれません、これはいずれ放送終了後にでも・・・要するに多少アニメ向きではなかった原作と音楽があることの制約と誤解が原因でしょうね。
として観てのはなしであり、クラ的にはたしかに使用曲はかなり凝っていたわけですが・・アニメ ともかくアニメとしては、勢いで出来てしまった、ミーナに軍配を上げざるえません、変身バンクやマイティージャックのオマージュもある、武器搬送バンクなど、ともかくあらゆる工夫で動かそうとしてます、音楽もアメリカのイーストマンのハンソンの弟子の音楽や、ナイマンや武満のホセでのブルーノートのバカラックなどを彷彿するようなもの他多彩であり、羽田健太郎の弟子の方だそうですが、羽田氏のマクロスの音楽を始めてアニメで聞いた時のような、映像とシンクロしたクラ的快楽とフュージョンの快楽の共振をかんじるものでした。
つづく
Commented by dr-enkaizan at 2007-03-13 01:55
前述のわかる部分がようつべにありますが、
ttp://www.youtube.com/watch?v=FQiHQolmtio&mode=related&search=
月並みの変身シーンバンクですが映像とシンクロする音楽の巧みには唸らされました、まるで同じ目的意識でアニメサイドと音楽サイドが双方競いあっているころがあり、双方専用に作られた強みを感じます。この点での、「アニメの遺伝子」に於いて、の○めアニメの事例は、原作のニュアンスをアニメに生かせる綿密な準備を怠った故に、斯様な状態になったと言えそうです。
 一例としてはニーナでは利点に働いている「同一フレームにシンクロしてる複数の単一対象の動き」で、件では器楽をそれで絞った故、どうしても止めでのみオケのような面で多数が動くことを表現できなくなり、絵としてのオーケストラがアニメの群処理の難しさを露呈してしまったんでしょうね。
 ゆえに、あまりに絵につけられた本来合うべき音楽滑るような印象を拭えないような感になったともいますし、 また肝心の曲の楽章を丸ごと違えるとなどは・・非常に痛い思いにも駆られました。

 実は原作が、アニメの方法論とは違う点の表現を確立していて、弄る余地のない精密さだったわけでもありますね
Commented by Sonnenfleck at 2007-03-13 21:44
>ドクター円海山さん
ううむ…鋭い分析…。
月面兎―は電車男から出たいわゆるスピンオフってやつですかね。それ自体が演出のこだわりから発生したミーナと、最高のこだわりポイントを生かしきれてないのだめと、どちらが幸せなんでしょうねえ。
のだめは原作のコマ割りや表情を素晴らしい精度で再現しているだけに、脚本面での意図不明な改変・演出の単純なミスは実に悲しいです。原作の「弄る余地のない精密さ」っていう点について心の底から同意せざるを得ません。。笑うに笑えぬ音楽の冗談でしょうか。
Commented by dr-enkaizan at 2007-03-14 01:16
お付き合い恐縮です。
>それ自体が演出のこだわりから発生したミーナ
ですね件のオープニング
http://www.youtube.com/watch?v=PaFW-TfCRIE
自体
http://www.youtube.com/watch?v=rzy1RNJBUo4
のDaicon 4のオマージュであり、これは恐らくこのトピックのアニメの血脈次ぐエポックメイキングなものでありましょう、板野サーカスと呼ばれる多弾のミサイルの軌跡運動や究極の飛翔表現は、てんとうむしちゃんとくものおじさんの動きと飛翔の拘りが、普遍化したころにほかならないと思います。つづく
Commented by dr-enkaizan at 2007-03-14 01:27
 ちなみに、アニメのミーナの第六回での天道虫の子孫と思われる(笑)玉虫ミーナの変身
ttp://www.youtube.com/watch?v=3khsjWNZ0Pw
と攻撃
http://www.youtube.com/watch?v=IMkNoKOvRdQ

などアニメ単体の魅力に満ちており、いつの時代もこのての陣営の炉加減もわかる次第であります
ともかく、あのオープニングに「恥じない工夫」を制約と無意味かもしれない台本の上に一生懸命盛り込んでいる好感があります。

まあその逆は・・の○め原作に人気にあやかりながら、不完全な台本に画像の表現の調理といった趣で非常に不幸な出会いだったわけす。

それだけ、「楽屋落ち」「蒙昧で無礼」なところが専門陣営に言いたい事はあるのですが、それらを棚に上げると、原作には絶妙なニュアンスの集合体であり。さすが人気を獲られる必然律が存在すると思います。この作品から多くを学び後進がさらなるクラ物をを期待したいですね(笑)

 追伸「ダイコン」は実際ブラバンだったので?リアルタイムで、文科系の部活コネクションでダイコンの活躍への衝撃は伝聞にて受容しており、当時はそれ系のものには羨望の的でメッカとなりつつありました。

Commented by pfaelzerwein at 2007-03-15 00:42 x
流石に宇野功芳先生の声楽の師匠ですね。「ハンモック」から「誰でも乗せて」への飛翔には、あたかも風に揺られるハンモックのように魂を揺す振られてしまいますね。あの退廃的な軽妙さと多脂質の粘りに僕は、憧憬と寂寥感に魂が呼び起こされる。
それにしても、人種主義とかのコメントがありますが、確かにカンカン帽を被った黒人然としたクラウン蜘蛛は米国を表わして、足の太短い天道虫は音楽と共に大和撫子を表わしていますね。吹くのはカミカゼで当時のニュース映画映像と重ねれる部分はあるかもしれません。技術的に水没まで観れなかったのは残念ですが。
戦意高揚のプロパンガンダと言うよりも、既に「包囲」などが強調されて、小林秀雄の諦観に満ちた世界を思い浮かべます。
Commented by Sonnenfleck at 2007-03-15 12:25
>pfaelzerweinさん
戦時下にこれを見ることができた層というのは本当に限られていたのでしょうけど―追い詰められた状況でこの映像を見たら、涙が出るかもしれません。いまこうして見るだけでまさに「憧憬と寂寥感」に苛まれるのに。。
題名が「くもとてんとうむし」でなく、大して登場時間の長くないちゅうりっぷが引かれてきている点、「守ってもらいたい」てんとう虫の悲観が滲んでいる、と言ったらウエットになりすぎでしょうか。
Commented by アニメファン at 2007-12-11 06:12 x
あの艶かしい天道虫のモデルさんは、
アニメータの実の奥さんだったということであります。
Commented by Sonnenfleck at 2007-12-11 21:59
>アニメファンさん
情報ありがとうございます。一枚一枚手描きで描きこまれたてんとう虫のカットには…確かに愛情が感じられますね。
Commented by shiroshim at 2013-07-08 19:55 x
くもとちゅうりっぷの動画拝見しました。懐かしい村尾護朗先生の歌声を聴けて感激し増した。私はS39年から五十年弱村尾先生のご指導のもと合唱団の一員として歌ってきたものです。宇野先生も私たち合唱団の演奏会においでいただき好評を雑誌に書かれたこともあります。
村尾先生は記述にもありますように藤原歌劇団の初期のメンバーであり歌劇にも多数出演しております。残念なことに音源がほとんどなく(今現在の音楽作りに全霊を注ぎ、過去のことは全く無頓着な方でした)今回の動画はソロとして聴ける大変貴重なものです。大変懐かしく聴かせていただきました。
*シャリアピンの日本公演の時村尾先生はピアノの譜めくりをされるなど大変多くのエピソードの持ち主です。
Commented by Sonnenfleck at 2013-07-10 21:20
>shiroshimさん
たいへん貴重なコメント、誠にありがとうございます。
この文章は今から6年前に書いたものですが、今でもときどきこの動画が見たくなります。そうしたときに村尾さんの深いバスの声が脳裏によぎるのは言うまでもありません。この動画をYouTubeにアップロードしてくれた見知らぬ誰かに感謝ですね。

それにしてもシャリアピンの譜めくりとは!これまた貴重な証言をいただいてびっくりしております。こうしてウェブ上で時代が交錯するのが、何とも言えず不思議な感覚です。

Commented by iustitia at 2013-10-20 13:35 x
昨日、東京国際映画祭で、デジタル復元版を見てきました。画質が格段に向上し、これまで不明瞭だった細部まで鮮明になりました。
今後、上映機会が増えるのではないかと思います。
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