名古屋フィル 第334回定演

【2007年3月23日(金)18:45~ 第334回定演/愛知県芸術劇場】
●ドビュッシー:《牧神の午後への前奏曲》
●ラヴェル:Pf協奏曲ト長調
  ○アンコール シベリウス:《悲しきワルツ》
●ベルリオーズ:幻想交響曲 op.14
⇒フレデリック・シャスラン(Pf;ラヴェル)/名古屋フィルハーモニー交響楽団


いやはや、質の高い演奏が続いております名フィル。
今日のキャッチコピーが「才人シャスラン日本デビュー」だったので、「才人」ねえ…と思って油断していたのです。1963年生まれのフランス人、略歴を見る感じではメトやバイエルンにも定期的に呼ばれる中堅オペラ指揮者のようですが。

そしたら、牧神の開始からフレーズ感をこれでもかと強調した娯楽路線。。
あざとい…あざといが引いたら負けのような気がする。これは素直に楽しんだほうがいいナ。
こういう曲作りのとき、コンマス後藤氏のノリのよさが光ります。

続いてラヴェル。響板を取り払ったピアノが鍵盤をこちらに向けてセッティングされてます。
これですね、曲が始まる直前、なんでムチがスタンバってるの?というくらい《左手のための》だと勘違いしてたのです。「左手のほうなら弾き振りもアリかな」なんて。
でも始まってみると「両手のほう」だったので吃驚しました。これを引き振りしちゃうのってバーンスタインの有名なライヴしか知らないので、実際に目の当たりにすると凄いですね。。

だいたいピアニストの手が鍵盤を離れる局面が非常に少ないこの曲で、指揮者としてオケを統率するのは至難の業だと思うんですが、それなのにシャスランは曲芸のようなアッチェレランドを頻繁に用いて、スリル満点な雰囲気に仕立て上げます。でも名フィルがついていってたのを聴く感じ、即興的なようでいてその実あれは計算されたサーカスだったんだろうなあ。両端楽章の最後、真っ逆さまに転落していく様子はまさにラヴェルの華でした。あれでオケがほとんど崩壊しなかったというのが素晴らしい。調子がいいなあ名フィル。
しかしいっぽうで第2楽章がカラカラに干からびていて全然面白くなかったのが逆に興味深いです。これだけ聴衆を惹きつけるツボを理解している人のピアノのタッチが、ここでは物凄く平板になっていて…これをわざだと思うのは穿ちすぎでしょうか。。

後半、幻想交響曲もやはり同じ傾向のエンタメ路線で、時折「これはカルロス・クライバー…」的なリズムのキレを示していたのが仰天でした。第2・第4・第5楽章のノリのよさ、軽薄だと非難するにはあまりにも気持ちよく決まっていくのです。
(*その反面、縦の音符数が増える箇所ではそれほど熱心な対応がなくて、ごちゃついたり濁ったりということはざらにありました。)
そしてここでも、第3楽章が絶望的に退屈。面白いなあ。MIDIを聴いてるみたいでした。別の楽章でテンポが速い箇所では自在な伸縮があるのに、ここではそれが厳格に戒められている。情感を排することについては並々ならぬ拘りがあるのではないかと。このシャスランという人のプロコフィエフとか一部のモーツァルトとか、あとはラヴェルの他の曲とか、上滑りしてて非常に期待できそうです。でもリハが厳しそうなので再登場は望み薄かも。

ところで第5楽章でイデー・フィクスを華やかに吹いたEsクラリネットの方(遠目ではアジア系に見えませんでしたが…エキストラだろうか?)、ラヴェルの第1楽章でも水際立ったソロを聴かせてくれてました。ブラヴォ。
by Sonnenfleck | 2007-03-24 13:44 | 演奏会聴き語り
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