ネパールから来た海賊(その一)

最近海賊盤の話題が多いですね。。闇夜に気をつけるなりしたほうがよいでしょうか(笑)
2005年くらいからアリアCDのサイトで見かけるようになったネパール(!…リマスタリングはドイツらしいけど)の海賊レーベル「KARNA MUSIK」。この4月に活動終了との告知がありまして、慌てて必要な2アイテムをオーダーしました。
今回はそのうちの1つ、ハイティンク/VPOのライヴについて。

c0060659_630199.jpg【KARNA MUSIK/KA-261M】
●モーツァルト:交響曲第32番ト長調 K318
●同:Pf協奏曲第27番変ロ長調 K595
→アルフレート・ブレンデル(Pf)
●ショスタコーヴィチ:交響曲第10番ホ短調 op.93
⇒ハイティンク/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(2006年6月8日/ムジークフェライン大ホール)

タコ10コレクターのプライドをくすぐる「ウィーンのタコ10」。これ以外ですと2001年にロストロポーヴィチが振った演奏しか知りません。
ハイティンク指揮のものとしては3種類めの第10ですが(1枚目は77年のロンドン・フィル、2枚目は85年のコンセルトヘボウ)、このウィーン・フィル盤、ちょっと不思議な演奏です。。

第1楽章冒頭の悲劇的な響きが、チャイコフスキーのように甘く切なく滑らかに流れ出す。ソヴィエト時代のささくれ立った録音がデフォルトで設定されている耳には…明らかに異質に聴こえるんですが、ここの弦楽合奏は有無を言わせない美しさであります。こんな音を出すウィーン・フィルも恐ろしいけど、これを引き出すハイティンクの手腕にも唖然とする。
ここで第2主題のFlソロがおしまいのほうで致命的に音を外してしまうんですが、(そのためか)展開部に至るまで緊張感は持続して、弦のユニゾンとスネアの後ろでひらひらと木管群が飛び回る様子が大変美しい。この作品の「声を上げて絶叫」ではない箇所について、多くの演奏は音を無機質に、硬くすることで対応しているんですが(それがどこまでオケ全体で徹底されているかによって成功する/しないが決まっているようです)、ここではまったく逆のアプローチで、不思議と退廃的な雰囲気に持ち込むことに成功してるんですね。面白い。

第2楽章の速いテンポはこれまでどおり。ハイティンクがムラヴィンスキー寄りの解釈を示しているという点で興味深いのですが、この楽章の醍醐味である木管の奇怪なユニゾンの存在感がLPOよりもACOよりも格段に上で…さすがVPO。。しかし第1楽章の様子からもっと円やかな演奏が予想されていましたが、意外に残忍な追い込みが効いていて濃い口。

第3楽章の造形は極めてオーソドックス。エリミーラ主題のHrが静かで美しいのはいかにもですが、中間部のドンチャン騒ぎがどうにもマジメで…ここだけはちょっと物足りないかなあ。。そしてDSCH主題が滑らかなレガートによって紡ぎ出される様子は違和感アリアリ(苦笑)

第4楽章はふわふわと唐突に始まってしまい、ここもちょっとおかしな印象を受けます。第1楽章の柔らかさは巧まざる気まぐれの成果なのか?ハイティンクの旧録音はもう少し充実してたぞ。。
アレグロには快速テンポで突入しますが、ここはハイティンクのペース。これまでの彼の録音と同じスタンスで、あくまで腰軽に醜く薄くやるんですねー。おかげで今度はウィーン・フィルがいきり立ってドンチャン騒ぐ様子が垣間見えるのです。マジメな上司が無理して騒いでるみたいでちょっと気恥ずかしいのですけど、それでもコーダはR.シュトラウスのように光り輝いていて風格があり…何と言ったらいいのか…オケがショスタコの語法と別の立ち位置にいることによって出来上がった不思議な演奏。

+ + +

そして実は前半のモーツァルト2曲が超絶名演なのでした。ブレンデル久しぶり。。
by Sonnenfleck | 2007-07-03 06:39 | パンケーキ(20)
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