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on the air:ブリュッヘン/18世紀オケの《レンダリング》

on the air:ブリュッヘン/18世紀オケの《レンダリング》_c0060659_6524326.jpg【2007年2月18日 ブリュージュ・コンセルトヘボウ】
●シューベルト:交響曲第7番ロ短調 D759 《未完成》
⇒フランス・ブリュッヘン/18世紀オーケストラ
●ベリオ:《カルモ》
→マルグリート・ファン・ライゼン(MS)
⇒バス・ヴィーガース/アスコEns&シェーンベルクEns
●シューベルト/ベリオ:《レンダリング》
⇒フランス・ブリュッヘン/18世紀オーケストラ、
  アスコEns&シェーンベルクEns

まず1曲目の《未完成》を聴いて、冗談ではなく心臓が止まるかと思った。

鬼のような形相の、暗くて、激しい、どん底の演奏でありました。一筋の光明もない。
第1楽章。胸を抉るような低弦の響き、Flが断末魔の声のように引き伸ばされて第1楽章を締めくくり(ここで物凄いリタルダンド!信じられない!)、したがって第2主題はなかなか訪れない。訪れたら訪れたで、気を病んでしまったような暗鬱な音をしている。音楽家は、お客を集めて、お金を取って、こんなに破滅的な音楽をやっていいんでしょうか。。
展開部が来ても、再現部が来ても、この暗さがまだ続くのかという印象が強い。夜のあとに夜が明けない、残酷な音楽です。咆哮がこの世のものとは思えないのです。大袈裟に書いているのではありません。全部本当にあったことです。
第2楽章。今度は予想外に軽くてそっけない。最初の下行音型主題の提示が終わって、付点の付いた主題が登場すると、いよいよ音の量感がすーっと消えます。青く美しく透き通った沼地、それは毒が流れ込んで生き物が住めないから。
ブリュッヘンが18世紀オーケストラに接するやり方も、そして18世紀オーケストラの音自体も、変わったようです。重心が軽くなって、スマートになった。それで、表現主義的な雰囲気はさらに一歩前進してしまったようです。繊細すぎる。。

《レンダリング》の「地」の部分は、前半の《未完成》から引き続いていかにもそれらしい演奏なのです。この空気が薄い感じのままで第5交響曲を聴かせてもらいたいというのが一古楽ファンの望みですが…。シューベルト10番目の交響曲が眼前に広が…ろうとするときに、いよいよピッチが異なる「図」の部分が侵入してきて、その継ぎ目たるやもう何が何やらわからない。酩酊、快感。僕が知っているのはシャイーの演奏だけなんだけども、強烈さははっきり言って段違いです。元が「地」と「図」の齟齬を楽しむ作品だけに、この異常な響きにはベリオも草葉の陰でひっくり返ってることでしょう。

日曜のお昼に聴く音楽じゃなかった。楽しかったけど。
by Sonnenfleck | 2007-07-06 07:07 | on the air | Comments(0)
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