【2007年7月28日(土)14:00~ 宗次ホール】
●ドビュッシー:《パンの笛、またはシランクス》 ●ランベール/オトテール編:ブリュネットとドゥーブル《ある日ぼくのクロリスは》 ●ファン・エイク:《ダフネが最も美しい乙女だったとき》 ●同:《イギリスのナイチンゲール》 ●同:《わが麗しのアマリッリ》 ●テレマン:無伴奏Flのための12の幻想曲~第7番ニ長調、第8番ホ短調、第12番ト短調 ●C.Ph.E. バッハ:無伴奏Flソナタイ短調 Wq.132 ●クープラン:《恋のうぐいす》 ●ドンジョン:3つのサロン・エチュード op.10-1~3 ●ブラヴェ/クヴァンツ/有田編:無伴奏Flのための組曲ホ短調 ○アンコール クヴァンツ:練習曲から ⇒有田正広(Fl、ピッコロ) 一ヶ月ぶりのコンサート。。 CoCo壱番屋の創業者である宗次徳二氏が、この3月、名古屋・栄の中心部に建設したのが「宗次ホール」であります。これまで行きたいと思うコンサートがひとつもなかったんですが、今回ようやく面白そうなプログラムが出たので行ってみました。 座席数310なので東京で言えば白寿ホールとほぼ同じくらいのスペックですが、広くはないスペースを無理矢理2階建て構造にした感があるので、体感的にはさらに狭い。実際に昨日体験してみて感じたんですが、たぶんあの狭さではピアノ一台がぎりぎり限度だろうし、弦楽四重奏ですらちょっと圧迫感があると思うんです。いやーでもクラヴィコードが理想的に聴けるホールなんて最高じゃないですか?せっかくいい箱持ってるんだからがんがん古楽やってくださいよー。マダム向けのゆるいプログラムも必要だろうけど、名古屋の古楽ヲタは絶対的に飢えてるので(少なくとも僕はそう)、どうか温かい施しを。。 今回は有田氏のレクチャー付きコンサート。解説だけでなく、有田氏所有のフルートが何本も登場し、ピリオド楽器同士の細かな違いとそれに伴って移り変わる作品の印象が楽しめるという素敵な趣向でした。聴衆は150人くらいかな。もったいない。 フルートにおけるピリオドとモダンの構造的な違いって知らなかったんですが、モダンは中が寸胴の円筒形、ピリオドはおしりに向かって内径がすぼまる円錐形らしいです。したがってモダンは細かなニュアンスを犠牲にして大きな音を獲得したのに対し、ピリオドはホールに響き渡る音量を持たない代わりに発音の素早さと陰翳豊かな音色を確保していると。 初っ端のドビュッシー《パンの笛》、楽器の見た目は光り輝いているのでモダンで演奏するのかと思っていましたら、先年カナダの教会の地下から未使用状態で見つかった1867年製ピリオド楽器とのことで、確かにちょっとくぐもった温かい音色…。 音色の点で最も驚いたのはクープラン《恋のうぐいす》で使用されたa'=396のバロック・ピッコロで、これは明らかにモダンの突き刺さるような音とは異なるのです。普段ミンコフスキの録音なんかでバロック・ピッコロは聴いてるはずですが、改めて実物に接するとその柔らかく官能的な音に惚れ惚れとしますね。繰り返し後の微妙な装飾が本当に美しく儚く響きます。 1740年ごろに製作された総象牙の白いフルートで最後に演奏された、ブラヴェとクヴァンツの組曲ホ短調もよかったのだけど(「音が骨っぽくて硬い」という印象は全然大袈裟じゃない)、この日の白眉は個人的にはテレマンの《無伴奏Flファンタジー》かなあ。特にフランス風序曲を模した第7番ニ長調!たった一本の横笛の後ろに、あの豪奢な付点と繊細なフーガが立ち上ってくるのが聴こえるんですよ。涙が出た。 この日の夕食はもちろん、建前的には宗次ホールの繁栄を祈念して、本音的にはもっとまともなプログラムのコンサート増やしてよねというクラヲタの願いを込めて、ココイチのチーズカレーをざらざらと掻き込んだわけでした(やましい気持ち)。
by Sonnenfleck
| 2007-07-29 13:52
| 演奏会聴き語り
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Comments(2)
私も同じように「やっと聴けるものが・・・」という思いで行ってきました。ここのステージ、本当に小さいですよね。ステージだけならルンデといい勝負じゃないかというぐらい。でもあそこよりは断然天井も高いので是非とも古楽系のコンサートも増やしてほしいものです。
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Sonnenfleck at 2007-07-29 21:59
>kimataさん
お互い考えることは一緒ですね(^^;)ようやく宗次ホールを体験できました。客層も「それらしい」男性が多くて可笑しかったです。 ステージから上に伸びる壁面の装飾がきれいでしたし、実際そこに沿ってすーっと音が立ち上るような、素直な音響だったなーと思います。ここのホール自体にはかなり魅力を感じましたが、、いかんせんプログラムが。。次に足を運べるのは小林道夫センセのチェンバロでしょうかねえ。
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