【DISC4…BALLETS VOL.4】
●バレエ《ミューズの神を率いるアポロ》(1928?) ●バレエ《アゴン》(1957) ※ ●バレエ《カルタ遊び》(1936) ⇒イーゴリ・ストラヴィンスキー/ コロンビア交響楽団 (※はロスアンジェルス祝祭交響楽団) いよいよ新古典期に突入ですね。このあたりから作品の感想なのか演奏の感想なのか明確でなくなってきますが、ご容赦ください。。 さて、《ミューズ...》はきっとフランス・バロックへのオマージュ的な要素が強いんでしょうね。 第1景〈アポロの誕生〉なんか、フランス風序曲の雰囲気をしっかりと漂わせながらモダンな不協和音がキリリと鳴り響くわけで、大変美しいですよ。ここにはクラヴサンも管楽器もいませんが、あの惻惻とした抒情の本歌取りは確かに成功してますよね。リュリだー。 第2景の後半、〈アポロのヴァリアシオン〉に一瞬だけ現れる壮麗な量感が見事。。このあと〈コーダ〉で後腐れのないリズムの応酬があり、最後の〈アポテオーズ〉にかけてゾクリとするような清潔さの中に音楽は消えていきます―。 コロンビア響ってそもそも草食動物的で淡白な音がしますが(いや、CBSのパサパサした録音のせいなのかな)、この作品ではそれがよく生きてきて、暗部や恥部に深入りしない、上品で冷たい音楽が流れてくる。これより以前の何曲かで聴かれたギクシャクぶりはほとんど見つからなくて、やっぱりあれはセリー時代の演奏者ストラヴィンスキーが振り返る、作曲家ストラヴィンスキーの「原始主義」の表現なのかなあと思う次第。 ここで《アゴン》のヒリヒリした感触が、大きな落差を生みます。。 《ミューズ...》に比べて参加する楽器の種類は圧倒的に増えたはずなのに、充填率はグッと下がった感じ。この曲は今回初めて聴いたんですが、このソロイスティックな楽器の使い方がストラヴィンスキーの晩年様式なのかー。なのかな。聴き進むうちに当初の乾燥した印象は消えて、キラキラパラパラした硬質の輝きを発見します。。 最後に《カルタ遊び》で再びの大ギャップ。。作品ごとのこういう落差を楽しめるのはストラヴィンスキーだけですよねえ。 作曲年代は《ミューズ...》より後ですが、ちょっと《火の鳥》を思わせるエキゾチックな旋律美が顔を出したりして、先祖帰りしたような鮮やかさと素直さを兼ね備えたこの曲。ストラヴィンスキーもずいぶん滑らかな造形で、フットワークも軽くあっという間に走り抜けてしまいました。例のロッシーニ引用もあんまり意識的でなくて好ましいし、その後の変容も自然でいいなあ。 ところで、当ブログのストラヴィンスキーマラソン迷走ぶりを見るに見かねたドクター円海山さんが、支援エントリを書いてくださいました。ありがたいことです。してみると、1936年作曲の《カルタ遊び》で感じたストラヴィンスキーらしからぬ気持ちよさ・破綻のなさは、石田氏的が言うところの「ポーズ」なのか。ふむふむ。
by Sonnenfleck
| 2007-08-27 07:05
| パンケーキ(20)
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Comments(2)
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dr-enkaizan at 2007-08-28 00:54
毎度です
いえいえみるに見かねたというわけでは(笑) 、マラソンにつき物の水飲コップの「アレ」みたいなものです。 なお、アポロはサロ様城ではお馴染みの人気曲であり、これが気に入ったらサロネンやアンセルメあたりもいいですね。 さて アゴンの見解もまったく同じで恐れ入ります、ストラヴィンスキーが初めて、ロサンゼルスでシェーンベルクに教わったとされる・・・ドデカフォニーを取り入れた曲であり、明らかに「12音するぞ」と端的にわかる、トロンボーンと低音ピアノでそして正-反向で表われる12音音列は習作めいて微笑ましいところもあります。 そして貴兄の鋭く感じる「充填の低下」は、ピアノとオーケストラの為のムーヴメンツで結晶化しますのでお楽しみです。 うーん やはり音が見ていることを感じる、トピックが素晴らしいです。
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Sonnenfleck at 2007-08-28 21:52
>ドクター円海山さん
いやー給水がなければランナーはまずいことになりますから(笑) アポロは確かにサロ様がよさそうですね。彼の彫刻のような肌理でもってこの曲を演奏されたらたまらんでしょうなあ…じゅるり…って実は昔々にサロネンのCDは聴いたことがあるはずなんですが、恥ずかしいことに印象に残っていないのです。今度はちゃんと買い求めてとっくりと聴いてみます。 《アゴン》はやはりドデカい曲でしたか。LP時代にあった(のですよね?)解説がやっぱり読みたいのですが、いっぽうで解説を見てしまうとイメージの飛躍が困難になるわけで、一長一短かなと思いました。
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