【ARCHIV/477 6547】
●ヘンデル:《アルチーナ》、《ヘラクレス》、《アグリッピーナ》、《ジューリオ・チェーザレ》、《ヨシュア》、《アリオダンテ》、《テオドーラ》、《ゴールのアマディージ》、《オルランド》、《リナルド》から ⇒マグダレーナ・コジェナー(MS) アンドレーア・マルコン/ヴェニス・バロック管 ヘンデル録音史に残りそうなアリア集が、ボストリッジ盤と時を同じくしてもう一枚。巨大匿名掲示板の「バロックの歌姫たち」スレッドに、このコジェナーの新譜について「大女優の名演技を見せつけられるよう」という書き込みがありまして、僕としてもそれ以上的確な形容が思いつかないんですけどねー。 まずは奇しくもボストリッジとの「直接対決」になった、《アリオダンテ》の2つのアリア〈不実な女よ、戯れるがよい〉と〈次の夜〉。 ボストリッジが植物的な不気味さを隠し味にして抑制を歌い上げたのに対し、コジェナーは初めから肉食の生々しい欲望をぶつけてくる(繰り返しのあとの「a morte in braccio」は壮絶...)。このアリアに限らずあんまりヘンデルや古楽を聴いてる実感がないのがこのアルバムの特徴で、最強の個性派女優としてのコジェナーが前面に押し出されて来、彼女のスタイルによる何か新ジャンルのうたを聴かせてもらってる感じですね。 〈次の夜〉、暗い歌の多いこのアルバムの中では貴重な「明るい」ナンバーなんですけど、やはり陰鬱な情念が勝っています。ここまでどす黒いヘンデルってのもオツなもんですが(笑) まあしかし、、頂点というか、最強の聴かせどころが《オルランド》の「狂乱の場」である以上、このアルバムのキャラづけは決まってしまいますよね。。 これだけの美しい声を持った素敵な女性が、ここまでやっちゃっていいの??という荒れ狂ったディクション、下から抉るような地声、合わせて白痴的な絶叫で、世のコジェナーファンを凍りつかせたことでしょう。きっと。 で、このアルバムでもっとも古楽的なのは、伴奏をやってるマルコン/VBOなわけです。ボストリッジの伴奏をしていたビケット/啓蒙時代管とはまったく異なるスタンスで、とにかく雄弁にコジェナーの声と張り合う。彼女がそれに負けないアクを全開にしているから、うまいこと釣り合っているんだろうなあ。 そしてこれも、「ヘンデル」ではない…。この乾ききった通奏低音(特にリュートの趣味!)は、ヴェネツィアの赤毛の誰かさんの音楽を造形するときのためのものでは(笑) そんなわけで、ここに「ヘンデル」を聴く愉しみはないような気がします。ボストリッジ以上にない。 情念演出もここまでくると、僕みたいな腰の軽いバロクーには重たすぎて受け止められないんであります。「Italian Cantatas」のときはこんな印象は受けなかったんだけどなあ。行きつけのヘンデル小屋のつもりでぷらっと入った場所に、得体の知れないものが繁茂していたような…そういった緊張を強いる類の疎外感。でもコジェナーを聴くつもりで入ったのならそのものずばりストレートなのであった。複雑。
by Sonnenfleck
| 2007-09-14 07:07
| パンケーキ(18)
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Comments(2)
いつも絶妙な評に感じ入っています。
コジェナーの歌いっぷり、クラシックのオペラと言うより、ミュージカルを聞いているような。 「行きつけのヘンデル小屋の・・」のくだり、思わず口元がゆるみます。 リュート奏者は、マルコンが「アンドロメダ」で日本に来たときと同じ人なのかな。 まるで自分も主役のように一緒に声をだして歌っていたような。実に陽気な仕草の人だったような記憶があるけれど、どうだったか・・
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Sonnenfleck at 2007-10-14 22:00
>Hokurajinさん
歌というジャンルにバロックから入ってしまったので、このように感じているのかも。。行き慣れないロッシーニ小屋とかプッチーニ小屋にも勇気を出して入ってみないと…です。 アンドロメダ、聴いてます。そのときの感想文を読み返すと赤い字で「通奏低音が巧い」って書いてありますので、たぶんリュートにも感激したのでしょう。記憶が曖昧なのが情けない。。
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