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33年目の浮気

33年目の浮気_c0060659_610450.jpg【Profil/PH06065】
●ショスタコーヴィチ:交響曲第15番イ長調 op.141
●ボリス・チャイコフスキー:管弦楽のための主題と8つの変奏
⇒キリル・コンドラシン/シュターツカペレ・ドレスデン
(1974年1月23日/ドレスデン文化宮殿)

これってけっこう有名な演奏なんですよね。めでたく正規盤化。
モスクワpoとのスタジオ録音と同じころの演奏かと思われます。
演奏時期が非常に接近しているためか、あの畳み掛けるような異常な高速テンポ設定は同じ。コンドラシンの第15番スタジオ録音は、恐らくあの謎のテンポにより多くの聴き手を混乱させてきたんじゃないかと思います(「拙速」という感想も見かけたことがある)。
13番や4番のような手放しの絶賛が出るでもなく、でもコンドラシンのショスタコ全集と言ったらタコヲタの間では「ネ申」扱いですから、どうしても腫れ物を触るような評ばかりが集まることになっちゃうんじゃないかなあ。かく言う僕もコンドラシンの15番を聴くことはそれほど多くありません。。

あのスタジオ録音は「メロディアらしい」窮屈な音響空間の中いっぱいに音符がみっちりと充填されてるようなイメージなんですが(したがってコンドラシンがそもそも得意技としている強烈猛烈な音の厚みがどうしても強調される)、逆にこのドレスデン・ライヴは、文化宮殿の椅子に腰掛けて聴くホールの響きにかなり忠実なんじゃないかなという気がする。つまり酷薄な空気・痛い響きといった、13番や4番のレヴューではよく見かけるけど、15番の感想ではこれまであまり見かけられなかった(でもコンドラシン×ショスタコの忘れてはいけない特質である)要素が強く出てるんですね。これは少し予定調和的ながらも面白い発見。

コンドラシンの第15番像というのは、遺された唯一のスタジオ録音から我々が勝手に解釈した「充填率120%の攻め系交響曲」じゃなくて(もちろんドレスデンのオケもたとえば第3楽章なんかでは実にノリノリ、極めて愉快な音響を出しててさすが東独一のオケ!なんだけど)、やっぱり13番や4番と同じように、ぼんやり寒々とした薄い響きの部分がポイントなのかもしれない。第4楽章ラストのチャカポコチャカポコ…のシーンの緊張感には脱帽します。少なくともここは間違いなくスタジオ録音の上を行く超絶世界、スタジオ録音が平明な蛍光灯だとしたら、このドレスデン・ライヴは蝋燭のように微妙な陰翳。

ボリチャイはなんとなくミニマルな肌触りの作品。未来っぽいです。
by Sonnenfleck | 2007-09-21 06:14 | パンケーキ(20) | Comments(0)
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