武本京子ロマンティック室内楽 第2回「ピアノ五重奏の魅力」

c0060659_656267.jpg【2007年9月23日(日)14:00~ 電気文化会館】
●シューマン:Pf五重奏曲変ホ長調 op.44
●ドヴォルザーク:Pf五重奏曲イ長調 op.81
⇒武本京子(Pf)
  日比浩一、後藤龍伸(Vn)
  杉山光太郎(Va)
  太田一也(Vc)


予想通り、素晴らしいコンサートでした。

武本京子さんという方は名古屋では本当によくお名前を拝見するピアニスト。愛知教育大学の教授をされているらしい。その実力者(名古屋楽壇のドン?)が室内楽のメンバーとしてセレクトしたのは、なんと名フィルの首席奏者たちだったんですね。
名フィルの看板を背負って立つ2人のコンマスに、歴戦の2首席…なんと贅沢なアンサンブルでしょうか。。自分に名フィル・フィルターがまったく掛かってないと、そのように言うつもりはないですが、これは本当に素晴らしい組み合わせだと思う。日比さんと後藤さんだとかなりキャラが違いますしね。N響だったら堀・篠崎(山口?)・店村・木越(藤森?)ですけど、これはいかにも実現しそうにないなあ(苦笑)
そういったわけで、会場は(1)名フィル関係者(団員も?)(2)弟子・生徒を含む武本さん関係者(3)鈴木さんを含むルンデ系のクラヲタで満員。みんな明らかに期待してます。

仰天の名演、シューマンについてだけ書かせてください。。
第1楽章の熱狂的な第1主題を、驚くべき輝かしさで提示されてしまいました。百戦錬磨のオケプレイヤーだからこそ用いる、「舞台」用の強い表現。ビンと張った太い綱のような音の姿が見えます。
そして第2主題、武本さんが柔らかく発言を促し、太田さんのVcがほんのちょっとしたテンポ・ルバートをかけつつゴリッと語りかけると、杉山さんのVaが静かに応じて、後藤さんと日比さんが優しくリズムを刻む―その対話の様子にぞくりとする。このシンクロは物凄い信頼関係がなければ成立しないよなあ。。この部分でもって素晴らしさを実感したわけです。

いやー第2楽章ではすっかり泣かされてしまった。
まず最初の葬送行進曲主題を、後藤さんは実に淡々と素っ気なく開始する。残響をあえて消し、ぽつ...ぽつ...とした歩みだけを強調させます。これはちょっと寂しすぎやしないかと思いきや、途中のエスプレッシーヴォに差し掛かりますと、豊かな表現力でもって抑えていた感情を一気に解放し、「泣き」を演出してくれる。。ここでこちらも涙腺決壊。。お客の心をグワシと掴む、オケメンらしい持っていき方だと思います。
楽章も後半、葬送行進曲主題が厳しさを増す局面においては、Vaの杉山さんの老獪な歌い口が際立って光る。悲劇を歌う外声2人の蝶番役のみならず、第2Vnを務めた日比さんとともに充実しきった内声を届けてくれました。

第3楽章。例の躁的上行音階でも我を失わず、サロンの女主人のようにゆったりと4人をもてなす武本さんのPfに乗って、Va→2ndVn→1stVnという受け渡しが実にスムーズ。
第4楽章まで来るとこちらももう安心し切ってしまって、逆に細かいところを掴まえて聴く気が失せてしまいます。積み重なっていくフガートの上に乗っかって、どんどん上へ持ち上げられていくようなロマン派らしい高揚感。クライマックスで決然と打鍵する武本さんに痺れます。。

で、こーんなに素晴らしい演奏だったのに、お客の拍手はあっさりしたもの…。
信じられないことにカーテンコールが1回もなかったのです。そりゃあ前半だけどさ。最後の数人になるまで拍手を続けてみたけど、周囲が明らかにさあーっと退いていったので諦めました。僕だけ一人で興奮してたのだろうか。。秋風ショック。。
この演奏会、ステージ上にはマイクが立っていたし、楽章ごとに念入りにチューニングしてたので、おそらく録音していたものと思われます。発売されたら自分の興奮が間違いでなかったことを確認しなければ。
by Sonnenfleck | 2007-09-25 06:59 | 演奏会聴き語り
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