10日前の土曜日、ってまだ暑かったのか。あの日は天気がよかったので、前から行きたいと思っていた岡崎市美術博物館を目指して小ドライヴを決行。名古屋ICから東名に乗って30分くらい飛ばすと岡崎ICに着きます。 岡崎市美術博物館はICのすぐそば(それは地方都市においては「郊外」を意味する)の丘陵に佇むガラスの建造物。まだ完成して10年余りの新しい建築なので、似たような条件の豊田市美術館を意識しないではいられないけど(目の前に池があるところまで一緒)、あそこと決定的に違ったのは、とにかく人が多い!という点ですねえ。エントランス前の噴水で遊ぶ子供たち、展示空間にひしめく家族連れにカップル…「お一人様」の少ないことと言ったら。。 しかし今回の「ピカソ展」も、「ピカソ展」の例に漏れることなく、子供たちや家族連れやカップルには必ずしも優しくないプログラムであったわけです。 出品作品は各年代・各様式から満遍なく全99点(10年代のキュビスム作品がほとんどなかったのは残念)。展示スペースが狭いのと暗いのとで若干ごたついた印象がありましたが、面白いものが多く出ていたので行った甲斐アリです。 まずは20年代の新古典主義時代、《緑色のガウンの女》(1922年)と、《腕を組んだアルルカン》(1923年/左画像)。 入り口からすぐの場所に掛けられたこの2幅は、ともに柔らかな色彩と愚直な太線で描かれた「まったり重たい」雰囲気を漂わせます。このころって《パラード》や《プルチネッラ》の美術を担当したりしていたみたいですし、キュビスムから新古典主義への移行は、同じくバーバリズムを封印して新古典主義に入ったストラヴィンスキーをどうしても意識せずはおれません。ピカソとストラヴィンスキーっていうのは、どうしてあんなにキャラが重なるのか。。 続いて30年代の「ミノタウロス」。 《ミノタウロス酒宴の図》(1933年/右画像)や《ミノタウロマキア》(1935年)に表現される暴力と好色のイメージは、一方で困惑や怯えの裏返しなんだろうなあという気がしています。ミノタウロスシリーズに描かれた女性はみな陶器のような美しさを持っており、存在というよりはただの対象という感じなので、ミノタウロスの孤独はいよいよ深い。この作品でも現実味があるのは彼自身の姿だけです。 ミノタウロスシリーズで取り上げられる直截なエロシーン・グロシーンはただの表層にすぎず、そこから目を背けたり、反対にそこにだけ興味を持ったりしては、ミノタウロスの小さな悲しい眼には気づかないということだろうか。 途中、陶芸など興味の変遷を少し挟んで(《5人の牧神の長方形皿》など微笑ましいものが多く、家族連れには一息つく瞬間だったことだろう)、最晩年の作品では《銃士とアモール》(1969年/左画像)に表現された老人の姿に惹かれます。 膝の上に乗せたアモール(クピド)はこちらを向いてにっこりと微笑んでおり、老いた銃士の満足げな口元からは温かい雰囲気が伝わる。華やかな(しかし鋭くない)色彩。「銃士」の主題ってピカソが好んでたくさん描いていますが、この作品ほどゆったりとした気分にさせられるものは知らないです。暴力も戦慄もなくなった瘋癲老人ピカソが、ふっと見せた安らかな心地。 岩手とか大阪とか岡山とか浜松とか、散々巡回していたようです。岡崎では10月8日まで。 そのあとは熊本かな。
by Sonnenfleck
| 2007-10-02 07:11
| 展覧会探検隊
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