【2007年9月30日(日)15:00~ しらかわホール】
●バッハ:無伴奏Vc組曲第1番ト長調 BWV1007 ●コダーイ:無伴奏Vcソナタ op.8 ●ブリテン:無伴奏Vc組曲第1番 op.72 ●バッハ:無伴奏Vc組曲第3番ハ長調 BWV1009 ○アンコール バッハ:同第4番変ホ長調 BWV1010 ~プレリュード、アルマンド ○アンコール クルターク:《影》 ⇒ジャン=ギアン・ケラス(Vc) 起床→ブログ書き→再びうたた寝、というのが天気の悪い休日によくあるスタイルなのですが、この日は昼寝から覚めてもまだ寒い秋雨が降り続いていて、実に気が滅入る。ケラス兄さんには申し訳ないけど、比較的強い面倒くささを覚えながらしらかわホールへ。。これで風邪を引いた気がする。 さて名古屋にもよく来ているらしいケラス兄さん。 彼のブリテンを愛してやまない僕にとって、この機会は大変な幸運です。バッハ3曲、アンコールに《愛の挨拶》、以上!みたいな「地方向け」のプログラムじゃなくて本当によかった。 まずコダーイから、と思ったけど、完璧すぎて特に感想がない。感想文殺し。困る。 これまでに生で接したチェリストの中でも、難しそうにしている様子をここまで感じさせない人は初めてな気がします。コダーイのあのささくれ立った響きが、技巧によって調教されていく様子、、ちょっと残酷だったな―。文句のつけようがない演奏、それをひけらかさないチェリストのカドの立たない甘めの音が、余計に空しさを呼び起こさないではない。 続いてブリテン。 CDで聴いてきたケラスの演奏というのは、表現しようとする意志が音の圧力だけでなく行間においてもなお強く滲み出る、いわば「喋りたがりなブリテン」でありまして、このへんがモルクやコーエンと違うところかなと(ロストロポーヴィチとウィスペルウェイは聴いたことがない。彼らのバッハから予想すると、もしかしたら彼らも「喋りたがりブリテン」かもしれない)。 で、問題はバッハです。 秀美氏のは「踊るバッハ」、ウィスペルウェイのは「遊ぶバッハ」、リンデンのは「語るバッハ」で、ロストロのは「宣言するバッハ」。僕が好きな演奏はこんな感じで、何らかの形で外向きに整理されてるんですが、、ケラスの演奏は世にも珍しい「出るバッハ」。「出すバッハ」じゃないのが新しい。お客にこれを提示して喜ばせてやろう、驚かせてやろう、とかいう狙いや衒いがほとんど感じられない代わりに、呼吸のように音符が吸い込まれて音が出てくるという自然な流れが根底にあるようです。 ただこの「自然な流れ」というのは、「自然に流れ出る」ということであって、「流れてくるもの自体が自然」という意味ではない―。 アーティキュレーションに注意して聴いていても、右手からは古楽っぽいテイストがほとんど感じられません。どーうも…これをやってるケラス兄さん…全部センスに任せてるような気がしてならない。フランソワのラヴェルかケラスのバッハかというくらい、センスを煮詰めたような大胆な演奏じゃないだろうか。 急速な舞曲、クーラントやジーグで、パッセージが潰れるくらいの大胆な緩急をつけていたりする彼のセンス(音符が聴き取れない!)…僕は断じて受け入れられません。ナルシシズムさえ感じる。ただし全面的に「嫌い」のひとことで片づけることもできない。第3番のサラバンドの流麗な調子はこれまで聴いたこともないし、第4番のプレリュードはほんのり桜色だし、、要するに甚だ面白い局面もまた多い。。受け入れられるか受け入れられないかといったら、たぶん受け入れられないのですが(ケラス兄さんの新譜は買わない)。 でもアンコールのクルタークは感激。
by Sonnenfleck
| 2007-10-05 07:01
| 演奏会聴き語り
|
Comments(2)
Commented
by
ここなつ
at 2007-10-06 22:09
x
お加減はいかがですか?
実は私もケラス兄聴きに行っておりました。 バッハについては全く同感です。 ものすごく大胆なアプローチなのに、呼吸をするように自然な演奏で、 非常に新鮮な体験でした。 アウフタクトなんて息を「す」と吸った時の様だったし。 コダーイ、本当に素晴らしかったですね! あと、クルターク弾く前のケラス兄がお茶目で可愛かったです(笑)。
0
Commented
by
Sonnenfleck at 2007-10-07 14:46
>ここなつさん
ありがとうございます。なんとか体調が改善されたので、これからまたしらかわホールにでかけるところです。 私自身は彼のバッハを全面的には受け入れられませんが、あれこそ新世界のバッハ!と考える方がいらしても全然不思議ではないと思います。新しい、面白いやり方だったなあとつくづく感じました。 アンコールのあたりは実に上機嫌でしたねー。きっと演奏がうまくいってのことでしょう。
|
カテゴリ
はじめに 日記 絵日記 演奏会聴き語り on the air 晴読雨読 展覧会探検隊 精神と時のお買い物 広大な海 ジャンクなんて... 華氏140度 パンケーキ(20) パンケーキ(19) パンケーキ(18) パンケーキ(17) パンケーキ(16→) タグ
日常
クラヲタ
ショスタコーヴィチ
バッハ
旅行
のだめ
散財
モーツァルト
ラ・フォル・ジュルネ
ベートーヴェン
B級グルメ
ノスタルジー
ブリュッヘン
マーラー
演奏会
名フィル
アニメ
ストラヴィンスキー
展覧会
シューベルト
Links
♯Credo
Blue lagoon Blue Moon--monolog DJK Klassik DRACの末裔による徒然の日々 dubrovnik's dream ETUDE Fantsie-Tableaux Langsamer Satz Le Concert de la Loge Olympique minamina日記 mondnacht music diary~クラシック音楽~ Nobumassa Visione preromantique Rakastava SEEDS ON WHITESNOW Signals from Heaven takの音楽 Takuya in Tokyo Valenciennes Traeumereien Vol.2 Wein, Weib und Gesang ○○| XupoakuOu yurikamomeの妄想的音楽鑑賞とお天気写真 4文字33行 アリスの音楽館 アルチーナのブログ あるYoginiの日常 アレグロ・エネルジコ マ・ノン・トロッポ アレグロ・オルディナリオ あれぐろ昆布漁 いいたい砲台 Grosse Valley Note ウェブラジオでクラシック音楽ライブ 「おかか1968」ダイアリー 音のタイル張り舗道。 オペラの夜 おやぢの部屋2 音楽のある暮らし(そして本も) 音源雑記帖 ガーター亭別館 河童メソッド ギタリスト 鈴木大介のブログ きままにARTSダイアリー ヽ['A`]ノキモメンの生活廃棄物展示場 クラシカル・ウォッチ 古楽ポリフォニックひとりごと 心の運動・胃の運動 コンサート日記 さまよえるクラヲタ人 瞬間の音楽 素敵に生活・・・したい! たんぶーらんの戯言 ディオニュソスの小部屋 ドイツ音楽紀行 弐代目・青い日記帳 爆音!!クラシック突撃隊♪ブログ。 ♪バッハ・カンタータ日記 ~カンタータのある生活~ はろるど ひだまりのお話 ひねくれ者と呼んでくれ 平井洋の音楽旅 ブラッセルの風・それから ぶらぶら、巡り歩き ベルリン中央駅 まめびとの音楽手帳 萌える葦、音楽をするヒト もぐらだってそらをとぶ やくぺん先生うわの空 ユビュ王の晩餐のための音楽 横浜逍遙亭 よし のフィルハーモニーな日々 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2010 & オペラとクラシックコンサート通いのblog リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」 りんごの気持ち.blog 六国峠@ドクター円海山の音楽診療室 私たちは20世紀に生まれた * * * CLASSICA Dmitri Dmitriyevich Shostakovich Pippo Classic Guide Public Domain classic WEBぶらあぼ クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~ クラシック・データ資料館 木曽のあばら屋 佐藤卓史公式ウェブサイト 柳の下 artscape ミュージアムカフェ 豊田市美術館 東京都現代美術館 川村記念美術館 * * * 管理人宛のメールはdsch_1906 ◆yahoo.co.jp までどうぞ(◆=@)。 以前の記事
2023年 07月 2022年 07月 2020年 07月 2019年 02月 2019年 01月 2016年 06月 2015年 09月 2015年 06月 2015年 02月 2014年 11月 more... 検索
その他のジャンル
ブログパーツ
記事ランキング
|
ファン申請 |
||