ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団@豊田

【2007年11月18日(日)17:00~ 豊田市コンサートホール】
●メンデルスゾーン:Vn協奏曲ホ短調 op.64
→サラ・チャン(Vn)
●ブルックナー:交響曲第7番ホ長調
⇒マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団


土曜日の午後に思い立ってボックスオフィスに電話したら、ずいぶんいい席が残ってたので急遽予約して聴きに行っちゃったですよ。この組み合わせはちょうど2年前の11月にも横浜で聴いてるんですが、これといってヤンソンスのファンというわけでもないので、近場で休日で悪くないプログラムなのにチケットを押さえてなかったというのも、自分の中では別に怠慢ではありませんでした。
…しかし。もし聴き逃していたら、ヤンソンスを理解しようと思う気持ちはさらに後退し、ますます興味が湧かない指揮者として片づけることになっていったと思う。聴きに行ってよかった。

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メンデルスゾーンについては筆が進みません。
サラ・チャンの音と彼女の演奏する姿からわかったのは、汚い音でガリガリと表情をつけるやり方に自分のアイデンティティを感じているらしいということ。音楽を荒らした挙句「どうだ!」という顔をするのを見てゾッとしました。これは好きじゃない。

で、ブルックナーです。まずは一見すると、金の楽観銀の無関心でもって織り上げられた何物か、だったのではないかな。
第1楽章。スコアは明るい響きで完璧に再現されます。バイエルン放送響は2年前よりさらに一歩進んで放恣な鳴り方をするようになっていましたが、それも当然でしょう。最大公約数を信奉することと、それを恥だとする考えは説得力を持たないということを、ヤンソンスは徹底的に教え込んだのだと思う。
速いテンポは懐疑が付け入る隙を与えない。パウゼはただのパウゼでそこに意味を付加する必要はないし、逆に意味を付加することが悪であるように思われる。このつるりとした金銀の圧迫感は相当なもので、些事を気にすることに慣れたクラヲタには抵抗が難しい。

第2楽章。ふてぶてしいくらい太く朗々と演奏される主要主題は、これこそが現代オーケストラ演奏の一つの傾向が極まった結果なのだと思われました。ジューシーで不毛な贅沢。さすがにこれには弓を引かれない。ホールの椅子の上であんぐりと口を開けてしまった。
ただ、ノヴァーク版の炸裂を経て放心したような葬送行進曲の結尾(僕はこの神秘的な「放心」がブルックナーをブルックナーたらしめていると思うんだけど)、ここを愛おしく撫でるように造形したヤンソンスのやり方は、ちょっと意外でした。ここだけは金と銀の織物に常ならぬ慎重な色彩が加わっていたような気がします。

第3楽章。威力で懐疑を一掃するスケルツォがまったくもって凄いのひとことなんですが、その直後に、「放心」した中間部がまたも慎重の苦みを得ていたので驚きました。銀の無関心は、こういったパッセージに意味を与えないのではなかったのか。。
豊田市コンサートホールは巨大なホールではありません。紀尾井ホールに毛が生えたくらい、もしくはオペラシティの横幅を狭めながら3階部分を丸ごと取り去ったような感じ、と書けば関東の方にはわかっていただけるかしら。ヤンソンスもバイエルンも、響きの巨きさには定評があるかと思われますけど、そういう彼らがキャパ1000人の空間に向けて楽観的に砲撃を加えるジオラマに心を奪われます。心は奪われつつも、しかし、中間部に充満する「放心」がずいぶん丁寧な扱いを受けていることに考えを巡らせないではいられません。

第4楽章。ある瞬間では軽すぎ(第1楽章)、ある瞬間では最大公約数すぎた(第2楽章)これまでの展開と比較して、最終楽章では独自の表情を探るような素振りがあちこちで強く感じられました。
でもそれを逆の方向から見ると、激しく緩急をつけて咆哮するオケの表面とは裏腹に、恐らく今のヤンソンスにしか構築できない最強の楽観無関心が、ここへ至って揺らいだようにも思われる。…もしかすると、単に全曲の統一の中でキャラ立ちが弱い第4楽章に濃いアクセントを付けたかっただけなのかもしれないんですけど。

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2年前に聴いたヤンソンス/バイエルンの演奏には、今思い返しても楽観の縦糸と無関心の横糸しか存在せず、僕の感想文でもそのことによる最大公約数への接近しか取り上げていないわけです。
しかし今回のブルックナーには、複雑な色をした装飾糸が(ごく少数ではあるものの確実に)混じっていたように思われます。楽観的最大公約数を信奉し、この日の演奏が終わって手が捥げそうなくらい熱狂的な拍手を送っていた向きにとってはこの装飾糸は邪魔でしかないはずだし、今のところはヤンソンス自身にも積極的にマッチするわけではないだろう。
この曖昧で複雑な装飾糸が、今や世界最高の金銀の間にどれくらい紛れ込んでくるか。。それによって、ヤンソンスは一昔前の芸人状態に戻るかもしれないし、逆に金銀の奥行きを極めるかもしれません。カラヤンみたいに。
by Sonnenfleck | 2007-11-20 07:10 | 演奏会聴き語り
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