【2008年4月26日(土)16:00~ 愛知県芸術劇場】
<コバケン・スペシャル Vol.13> ●ロッシーニ:《セヴィリャの理髪師》序曲 ●ドニゼッティ:《愛の妙薬》~〈人知れぬ涙〉 ●マスネ:《ウェルテル》~〈春風よ、なぜ我を目覚ますのか〉 ●マスカーニ:《カヴァレリア・ルスティカーナ》間奏曲 ●ヴェルディ:《仮面舞踏会》~〈今度の航海は無事だろうか〉 ●プッチーニ:《トスカ》~〈星は光りぬ〉 ○アンコール カルディッロ:《カタリ、カタリ》* ナポリ民謡:《オーソレミオ》* →佐野成宏(T) ●ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調 op.92 ○アンコール 《ダニー・ボーイ》はあったのか?途中で席を立ったのでわかりません。 ⇒小林研一郎(*Pf)/名古屋フィルハーモニー交響楽団 「コバケン」かつ「スペシャル」ですから、推して知るべし。 わずか1週間前にツィンマーマンの不健康なスコアを炸裂させたばかりなのに、今度は桂冠指揮者であるコバケン大明神の掛け声の下、大明神のフェイヴァリットを威勢よく演奏する名フィル。プロは大変だ。 前半は普段まったく聴かない曲ばかりでしたので、却ってリラックスして楽しめたなあ。マスネのオーケストレーションってチャラチャラしてるのに品があって面白い。 佐野氏は名古屋の演奏会チラシでもよく名前を拝見していますが、声は明るくて軽くて甘くて、さらに上背もあるために舞台映えもして、ええなあと思いました。 オケの団員をみんな袖に帰して、コバケンのピアノ伴奏で歌ったアンコール2曲。なんでこのプログラムでステージの上にピアノが置いてあるのか冒頭から謎だったんですが、なるほどねえ。。ねっっっっっっとり歌うコバケンのピアノ伴奏も興味深かったし、リラックスして本プロよりさらにムーディに歌う佐野氏がずいぶんよかった。コバケンのアナウンス曰く、ソロ歌手佐野を合唱団の中から見出したのはコバケン自身とのことで、中でも《カタリ》は彼の歌唱指導の賜物だとか。。道理であの演歌的装飾。。 いっぽう後半のベト7は稀に見る品のない造形で、これはもう笑うしかない。 もちろん品のないことを批判するのは簡単ですが、こういうとんでもない(しかしわかり易い)演奏をライヴで安定的に聴かせてくれる指揮者が他にいるかというと、他にはいません。コバケンの文脈で考えればずいぶんいい演奏だったように思います。 前半2つの楽章は比較的すっぴんでありましたが、後半は超スパーク。古典派とかピリオドとか、どっかにすっ飛んでいきました。第3楽章のトリオではちょっと考えられないような凄まじいリタルダンドがかかってオケが崩れかかってましたし、第4楽章はスフォルツァンド(+粘着テヌート)とアクセントの嵐で、お客さん大興奮。名古屋の人ってあんまりブラヴォ飛ばさないなあと思ってたけど、そうでもないみたい。 要約すれば、面白がったもん勝ちということでした。 ベト7ということで、小学生を含む家族連れや普段クラシックには興味がなさそうなカポーを多く見かけたんですが、彼らがこの熱狂的な演奏を聴いたり、終演後の熱狂的な歓声を一構成員として成したりした経験が、後々生きてくれるといいなあと思ったです。定期でヲタを処理し、コバケンのシリーズ(実質的には「名曲シリーズ」)で啓蒙活動をやっている現在の名フィルの体制は、なかなか良好なバランスでありましょう。
by Sonnenfleck
| 2008-04-27 07:09
| 演奏会聴き語り
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Comments(6)
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ライオンの昼寝
at 2008-04-27 18:25
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稀に見る品のない造形のベト7だと事前にわかっていたら、下世話な好奇心を満たすために行けばよかった^^;
しかし、それが啓蒙として役立っているとの考えは、言われてみればよくわかるけれど、ちょっと思いつかなかった。 「作品の素晴らしさは変なことをしなくてもわかる」というある意味では正しい意見は、あくまでもクラシックが好きになった人にしか通じにくいことですからね。 のだめファンに肥溜の芳しい香りを嗅がせて誘う・・・コバケンの手練のひとつであり、ケレンの限りを尽くして勝負ということですね。 そして、常々「文章にも魅かれて」ここを読んでいる私としては、今回もまたSonnenfleckさんの見事な表現に感嘆・羨望・快感・・・何度も読み返して「こういう表現方法をいつかどこかで使えるようになりたい」と思う次第です。 そうそう、名フィルHPは良くなりましたね・・・感想を書き込めるんだから。 私は定期の感想と要望を書きました。 また、様々な座席からのステージの見え方も写真で見られるし、HPが本当に双方向のネット特性を活かすようになり、嬉しいです。
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Sonnenfleck at 2008-04-27 19:32
>ライオンの昼寝さん
恐縮です。ありがとうございます。 生まれて初めて聴いたプロの大オーケストラがコバケン指揮のハンガリー国立響なので、実はコバケンは私の大恩人であったりします(笑) 今回のコンサートでクラシックデビューを飾った方たちは非常に幸せだと思いますよ。大きな編成のオケを聴く醍醐味に溢れて、純粋に面白かったですもの。あの歓声と拍手の中に身を置いて、ああクラシックって面白いなあと思った人が、定期演奏会でクラシックの多様さに衝撃を受けるという枠組みもできていますし、いい感じだなあと思います。 公式サイトに感想が書けるんですか?!そ、それは知りませんでした。。直接投稿すれば、こうやってネットの片隅で書き散らかすよりずっと効果的ですね。今度挑戦してみようかなあ。。
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ライオンの昼寝
at 2008-04-27 22:01
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今回の感想も書けるようになってますよ。
コバケンスペシャルVOL13を表示させ、会場で受取った(はずの)パンフレットに記載のパスワードを入れると、書けるようになります。 私は定期の感想をこちらのコメント欄に書かせてもらい、それを元にした感想と今後の要望を名フィルHPの4月定期(第346回)のページに書きました。 このパスワードは定期のパンフレット16ページに載ってますので、そちらも感想を書き込んではどうでしょうか? ひとつのやり方として、今後は「ここで好きなように感想を書く:不特定の名フィル・ファン&クラシック・ファンを対象に自己主張」の後に「それを元にした感想と要望を名フィルHPに書く:名フィルを対象に情報発信」というのもあると思います。 Sonnenfleckさんんの感想は役立つと思いますので、ぜひHPに書いてください・・・名フィル・ファンとしてお願いします^^
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Sonnenfleck at 2008-04-27 22:28
>ライオンの昼寝さん
それがですね、定期のプログラムのパスワードは発見できたんですが、今回のコバケンのプログラムではパスワードが見つからないんです(笑) 次回定期まで持越しですね。
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ばーなん
at 2008-04-30 17:09
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佐野さんの歌声は空気の振動とともに私の2階の席まで届いてきましたよ(驚)私は佐野さんの歌声が好きです。注目している一人です。
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Sonnenfleck at 2008-04-30 23:08
>ばーなんさん
私の座っていた3階までもちゃんと届いてました(笑) 上のほうにもちょっと書きましたけど、アンコール2曲がよかったなあと思います。気取らずにキザをやるのは、オペラのアリアみたいにかっちりしたものよりも民謡や愛唱歌のほうがしっくりきますね。それらが集められた彼のリサイタルがあったら、ぜひ聴きにいってみたいです。
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