【2008年5月5日(月)14:00~ 新国立劇場】●B. A. ツィンマーマン:《軍人たち》(日本初演) →鹿野由之(Bs/ヴェーゼナー) ヴィクトリア・ルキアネッツ(S/マリー) 山下牧子(MS/シャルロッテ) 寺谷千枝子(MS/ヴェーゼナーの老母) クラウディオ・オテッリ(Br/シュトルツィウス) 村松桂子(MS/シュトルツィウスの母) 斉木健詞(Bs/フォン・シュパンハイム伯爵 大佐) ピーター・ホーレ(T/デポルト) 小山陽二郎(T/ピルツェル大尉) 泉良平(Br/アイゼンホルト従軍牧師) 小林由樹(Br/オディー大尉) 黒田博(Br/マリ大尉) 森山京子(MS/ラ・ロッシュ伯爵夫人) 高橋淳(T/伯爵夫人の息子) 他 →三澤洋史/新国立劇場合唱団 →ウィリー・デッカー(演出) ⇒若杉弘/東京フィルハーモニー交響楽団 劇薬のようなオペラでした。 有楽町で三日間かけて聴いたシューベルトの印象が消し飛ぶくらい。 まずは、日本初演を実現に漕ぎ着けた関係者各位にブラヴォを飛ばしておきたいです。 ■音楽と演奏 予習は一切なしで臨みました。 クラスター気味の強烈な和音で開始される第1幕への前奏曲は、目に飛び込んでくる映像と相まって、多くの聴衆を粟立たせたことでしょう。クラスターなのに肌にまとわりつくような粘り気を覚えたあの箇所、若杉監督と東フィルの意気込みがよく感じられましたもの。 テクスチュアが静かになると、今度はPAを使って大袈裟に拡大されたチェンバロやギターの音が、俗悪なレチタティーヴォに絡み合って素敵な効果を上げています。 クラヲタとして最も強いインパクトを受けたのは、やはり第2幕。 カフェのテーブルの上で繰り広げられる軍人たちの性描写とその背後に流れるジャズ。 これは名フィルで聴いたトランペット協奏曲の内容から十分に予想される。 しかし、鋏を持った母親とシュトルツィウス、ヴェーゼナーの老母、性行為に及ぶマリーとデポルト、この3場面が舞台上で同時に展開するクライマックスで、突如湧き上がるJSB《マタイ受難曲》のコラール〈われなり、われこそ償いに〉。 これは完全に予期していなかった出来事で、、椅子の上で硬直してしまいました。ところどころ激しい不協和音で途切れながらも、あのエグいシーンで、あの美しいメロディがほぼそのままトゥッティで演奏される。。こんなにクソ真面目な対比を衒いなく作ってしまうとは。。若杉センセとオケも渾身の清らかさでそれに応えてましたよ。 楽音、電子音、軍楽のコラージュ。第4幕の大詰めは(プログラムの解説によれば)ホール中に配置された10群のスピーカによる破滅的な大伽藍の出現。これはあそこに身を置いて正解でありました。心拍数が上がって上がって。。 若杉センセに一本だけ飛んだブーは、僕には理解できません。 ■うた マリー役のルキアネッツと、シュトルツィウス役のオテッリが圧倒的。文句ない。 デポルト役のホーレも嫌らしくて非常に良かったんですけど、カーテンコールのときみんな赤い外套を着てるもんだから、見分けがつかず拍手をし損ねました。 ■演出 デッカーの演出は、白と赤と黒を基調にしたシンプルなもの。 「意味がないことを意味する暗喩」を排除した結果、残った暗喩はすべて物語の展開に直結して、わかり易すぎるくらいわかり易いスマートな運びとなっていました。 (最初と最後に登場した「無個性の群衆」はB級ホラーみたいで好きではなかったです。どうせならエヴァンゲリオンみたいに客席にカメラを向けてしまったらよかったのに。) 一方で、これって母親による支配のお話なのかなとも思う。 シュトルツィウスは鋏を持った母親の庇護下にあるようにしか見えないし(最後はそれを振り切ってひとりで「勝利」しちゃうけどさ)、伯爵夫人は若い伯爵の母であると同時にマリーの擬似母になろうとする。 ではマリーの本当の母親は?姉シャルロッテは「軍人たちの娼婦!」という罵言を大きな声で叫ぶことができず、ヴェーゼナーの老母は常識的な秩序の上にあぐらをかくばかりで、ついにマリーを御し得ないわけです。母親の庇護を受けることができず、鏡で自分を見るしかなかったマリーは道を踏み外して、彼女の救済は幕引きの直前に「演出家の慈悲によってしか」行なわれない。 ただ、シュトルツィウスの母親も伯爵夫人も最後まで支配を続けることができなかったわけです。その意味で、デッカーが最後に救済したのはマリーの人生ではなくて、ヴェーゼナーの老母の庇護欲である、というさらに嫌な見方もできるかなあ。白布を覆い被せてさ。。
タイトル : ツィンマーマン「軍人たち」
<日本初演/アムステルダム・ネザーランド・オペラ製作>2008年5月5日(月)14:00/新国立劇場指揮/若杉弘東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場合唱団演出/ウィリー・デッカー再演演出/マイシェ・バルバラ・フンメル美術・衣裳/ヴォルフガンク・グスマン照明/フリーデヴァルト・デーゲン音響/渡邉邦男振付/キミホ・ハルバートマリー/ヴィクトリア・ルキアネッツシュトルツィウス/クラウディオ・オテッリデポルト男爵/ピーター・ホーレマリ大尉/黒田博若い伯爵/高橋淳ド・ラ・......more やはりすごそうなオペラなのですね...名フィルの定期を聞いて、このツィマーマンという作曲家にカナリ興味を持ちました(時間さえあれば私も初台に...)。で、このSonnenfleckさんのエントリを読んで、思わずHMVでギーレンの録音をポチリました^^; どんな音響が体験できるか、今から楽しみです。 >蔵吉さん 壮絶でした。ツィンマーマンはほかに室内楽作品集しか聴いたことがなくて、あの複雑怪奇な音響に度肝を抜かれました。逆にあの響きをモノラル録音で聴くとどのように聴こえるものなのか、興味があります。ギーレンよさげですね。。 本当に素晴らしかったですね。オーケストラの音が本当にこなれた音で聞こえました。まさに、自分たちの音楽にしていたのでしょうね。ブーの意味は私にもわかりませんでした。誰かが、現代音楽ぽい、一生懸命何とかやっているという音にならなかったのが気に入らなかったのではないかとかかれていましたが、私も同感です。 >yoshihikoさん
それ、スパイスが効いていていいですね(笑) 3階正面に座っていたのでオケピットはもちろんジャズコンボ隊も見えなかったのが残念でしたが、第4幕の終盤を思い返すと、それらが奏でる音楽とスピーカーの簡素なミュジークコンクレートとは、非常にいいバランスで鳴っていたように感じます。あの箱の中がどう響くかについても注意深く検討した結果なんでしょうね。
|
カテゴリ
はじめに
日記 絵日記 演奏会聴き語り on the air 晴読雨読 展覧会探検隊 精神と時のお買い物 広大な海 ジャンクなんて... 華氏140度 パンケーキ(20) パンケーキ(19) パンケーキ(18) パンケーキ(17) パンケーキ(16→) タグ
日常
マーラー
演奏会
名フィル
のだめ
B級グルメ
旅行
ブリュッヘン
ショスタコーヴィチ
展覧会
ストラヴィンスキー
バッハ
散財
モーツァルト
ベートーヴェン
アニメ
ノスタルジー
クラヲタ
ラ・フォル・ジュルネ
N響
Links
♯Credo Blue lagoon Blue Moon--monolog DJK Klassik DRACの末裔による徒然の日々 dubrovnik's dream ETUDE Fantsie-Tableaux Langsamer Satz Le Concert de la Loge Olympique music diary~クラシック音楽~ Nobumassa Visione preromantique Rakastava SEEDS ON WHITESNOW Signals from Heaven takの音楽 Takuya in Tokyo Wein, Weib und Gesang ○○| XupoakuOu yurikamomeの妄想的音楽鑑賞とお天気写真 4文字33行 アリスの音楽館 アルチーナのブログ あるYoginiの日常 アレグロ・エネルジコ マ・ノン・トロッポ アレグロ・オルディナリオ あれぐろ昆布漁 いいたい砲台 Grosse Valley Note ウェブラジオでクラシック音楽ライブ 「おかか1968」ダイアリー 音のタイル張り舗道。 オペラの夜 おやぢの部屋2 音楽のある暮らし(そして本も) 音源雑記帖 ガーター亭別館 河童メソッド ギタリスト 鈴木大介のブログ きままにARTSダイアリー ヽ['A`]ノキモメンの生活廃棄物展示場 クラシカル・ウォッチ 古楽ポリフォニックひとりごと 心の運動・胃の運動 コンサート日記 さまよえるクラヲタ人 瞬間の音楽 素敵に生活・・・したい! たんぶーらんの戯言 ディオニュソスの小部屋 ドイツ音楽紀行 弐代目・青い日記帳 爆音!!クラシック突撃隊♪ブログ。 ♪バッハ・カンタータ日記 ~カンタータのある生活~ はろるど・わーど ひだまりのお話 ひねくれ者と呼んでくれ 平井洋の音楽旅 ブラッセルの風・それから ぶらぶら、巡り歩き ベルリン中央駅 まめびとの音楽手帳 萌える葦、音楽をするヒト もぐらだってそらをとぶ やくぺん先生うわの空 ユビュ王の晩餐のための音楽 横浜逍遙亭 よし のフィルハーモニーな日々 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2010 & オペラとクラシックコンサート通いのblog リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」 りんごの気持ち.blog 六国峠@ドクター円海山の音楽診療室 私たちは20世紀に生まれた * * * CLASSICA Dmitri Dmitriyevich Shostakovich Pippo Classic Guide Public Domain classic WEBぶらあぼ クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~ クラシック・データ資料館 木曽のあばら屋 佐藤卓史公式ウェブサイト artscape ミュージアムカフェ 豊田市美術館 東京都現代美術館 川村記念美術館 * * * 管理人宛のメールはdsch_1906 ◆yahoo.co.jp までどうぞ(◆=@)。 以前の記事
最新のコメント
最新のトラックバック
検索
ブログパーツ
ファン
| |||||||||||||||||||||||