エアチェックってやっぱいいよなあ。昔の感覚を取り戻してきたよ。
【2008年6月20日 ポーランド国立歌劇場】 ●モニューシコ:歌劇《ハルカ》から2曲 ●オリヴィエ・グレフ:交響曲第1番(BsとOrchのための) op.327 →Wojtek Gierlach(Bs) ●ブラームス:交響曲第4番ホ短調 op.98 ○アンコール ラヴェル:《亡き王女のためのパヴァーヌ》 ⇒マルク・ミンコフスキ/シンフォニア・ヴァルソヴィア (2008年6月21日/Polskie Radio Dwójka生中継) LFJでおなじみのシンフォニア・ヴァルソヴィアの新しい音楽監督に、なんとミンコフスキ。 ちょうどGW明けくらいにこの情報が出回ってけっこう吃驚したんですが、早くもそのコンビのライヴを聴くことができました。いつものように坂本くんさんの番組表で見つけて、さっそくポーランド放送にアクセス。「.pl」に踏み込むのは初めてだなー。 まずモニューシコ。ポーランド国民楽派の祖。 その代表作であるオペラ《ハルカ》の、おそらく序曲とどこかの前奏曲か間奏曲が続けて演奏されます。スメタナとやや湿り気を帯びたロッシーニが握手をしてるような、力強くもどこか切ない旋律を押し出してきます。モニューシコ。 ポーランド放送はあんまり音質がよくないので細部まで判断を加えるのは難しいんだけど、特に2曲目は後半からラモーのように陽気で単純な舞踏が乱入してくるナンバーでして、湿気を一気に吸収してあっけらかんと大団円に持ち込む「乾燥ぶり」はいかにも(特にバロックをやるときの)ミンコフスキ。強く乾いたアタックの裏で木管をひゅーひゅー鳴らすのも◎。先日聴いたカルメン+アルルの女よりはずっとバロックに近いところで演奏してる感じがします。 オケは、コルボのシューベルトで聴いた時点と比べると段違いに軽量化が図られた模様。 続いてグレフ Olivier Greif (1950-2000)の交響曲第1番。 ポーランド系ユダヤ人の両親のもとパリに生まれたグレフは、パリ音楽院とジュリアード音楽院で学び、主にピアノ曲と声楽曲で知られているらしい。僕は寡聞にして存じ上げない。 この交響曲は彼の最晩年である1997年に作曲されています。 バス歌手が歌うのは、パウル・ツェランのドイツ語詩。 曲調は、、、、これは《バービィ・ヤール》の正当な末裔でありました。テキストの内容はあまり聴き取れないんですが、ツェランの詩ということはきっと救いのない内容であるだろうし、グレフをして作曲せしめた何かがあると思われる。何より、晩年のショスタコーヴィチにまったく酷似した暗い調性感に基づく語法で、しかしショスタコにあった冷笑と幽かな希望をすっかり消し去って、どんよりと濁った視線をこちらに投げかけてくるんですな。 これは演奏がどうこうという作品じゃない。ひたすら重い。 + + + 長くなりそうなのでこの辺でいったんお開き。その2へ続きます。
by Sonnenfleck
| 2008-06-26 06:40
| on the air
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Comments(6)
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pfaelzerwein
at 2008-06-26 12:32
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モニューシコなどやるのをみるとミンコフスキはポーランド語を喋るのでしょうね。名前からしてポーランド系とは判りますが、意外でした。親父さんは一体何世なのかしら。
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Sonnenfleck at 2008-06-26 23:18
>pfaelzerweinさん
実はコンサートの休憩時間に、予め収録していたと思われるミンコフスキのインタヴューが流れていました。フランス語で。そこへポーランド語の吹き替えが被さるものですから、何が何やらさっぱり。それでもアンコールの曲名はポーランド語でしゃべっていた(それで聴衆が喜ぶのはどこの国も同じですね)ので、これからポーランド人化していくんでしょうかね。古楽風味ショパンはあり得るなあと思ってます。
大変ご無沙汰しています。
この人事、びっくりでしたね。ちょっと調べたところ、アダムスは去年のクラクフの音楽祭Sacrum Profanumで既に取り上げているようですよ。 ミンコフスキの家族に関してはウィキペディアのフランス語版から辿ることができます。お祖父さんはこの人のようです。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%8C%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%95%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC グレツキ「悲歌のシンフォニー」もやる予定らしいし、確かにこのところミンコフスキ、ポーランド人化しつつあるような気がしますよね(ユダヤ・アイデンティティもあるかもしれません)。これまで古楽系の演奏家は、伝統と同時に自らのパーソナルな出自も音楽から切り離す人が多いイメージがあったので、この例は興味深いです。
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Sonnenfleck at 2008-06-27 23:23
>yusukeさん
復活おめでとうございます!暮れからずっと心配していました。 新しく引っ越されても覘きに行かせてもらいますね! ミンコフスキ情報、興味深いです。。こういう家系の中に位置づけられる音楽家だったんですかー。そうすると今回取り上げてたグレフなんかは当然も当然の大本命だったわけですね。グレツキはCD売っちゃったなあ(笑) ローカル古楽でパッと浮ぶのはサヴァールくらいですが、確かにその傾向ってこれから拡大していきそうな感じですね。今はまだ初期バロックくらいが波打ち際ですが、だんだんコレッリくらいにもそういう波が押し寄せてきそうです。モダンと同じように、どんな出自の指揮者がどこの国のアンサンブルを振るのかが(妙に)重視されることになっていくかもですね。
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iustitia
at 2008-06-30 01:06
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グレツキ「悲歌のシンフォニー」は、最近、思いがけないところで耳にしました。
上映中止が相次いだことなどで話題になった映画『靖国 YASUKUNI』で使われていました(音源はNaxos盤)。 http://www.yasukuni-movie.com/ http://ml.naxos.jp/?a=8.550822 『靖国 YASUKUNI』は、28日から、名古屋シネマテークでも上映されているようですね。
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Sonnenfleck at 2008-06-30 22:02
>iustitiaさん
実はCDも売り払ってしまって、恥ずかしいことにあの曲がどんな感じであったか思い出せないんですよ。。映画を見る習慣もすでに無くしてしまったので、一挙にどちらも取り戻すチャンス、、ですかね^^;;
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