そして時は動き出す

c0060659_7395590.jpgどんなに素晴らしかった音楽でも、その上に新しく別の音楽を重ねると簡単に色褪せ、おおよその枠組みだけ残して化石のように沈黙してしまう。その繰り返し。

だからカーステはミュート、帰宅してからも抜け殻のようにぼんやりとインターネット、ただしウェブラジオには絶対に接続しないし、CDにも手を伸ばさない。この1週間まったく音楽が聴けなかったのは、内的な欲求が全然盛り上がらなかったせいでもあるし、上述の「上書き保存」を恐れたためでもあります。

でも金曜の朝、ヤープ・テル・リンデンが弾いたバッハの無伴奏チェロ組曲をクルマの中で恐る恐るかけてみて、ああこれならもう大丈夫だなと思った。今や用心深くワーグナーのフォルダが形成されていて、その上に「名前を付けて保存」されている。

学生時代に《トリスタンとイゾルデ》の前奏曲を分析させられて以来、ずっと感じていたこの作曲家への違和感、自分のものには到底なりそうもないという違和感も、どうやら拭われたようでした。あの響きは自分の中に組み込まれて、これからは自分の聴く耳の一部として機能してくれるように思います。
by Sonnenfleck | 2008-08-02 07:42 | 日記
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