うたびとよ

祖母が亡くなりました。
祖母はその人生の大部分において歌人でした。

彼女は一冊だけ自伝的歌集を出しましたが、僕は今でもまっすぐに向き合うことができないのです。
孫の僕からすると祖母はいかにも老いて小さく温厚でしたが、一方で彼女の自意識にあった闇はセンチメンタルとグロテスクのないまぜ…まさしく少女のようであったのです。また本来であればそうした毒を希釈するはずの叙述上のぼやかしが、他人ではない自分にとってはあまり意味がないというのも辛い。

それでも、いくつか好きなものを選んで自分の中の区切りにしたいと思います。

●水くみて疲れし宵をポケットに忘れゐし鍵乳房にふるる
●おのづから刺によろへる海胆の殻わりてとりだす卵巣いくつ
●いちはやく遠雷の音ききとめし病母にはやき夕翳りくる
●頭を擦りて寄る飼猫の媚態などゆるして雨の一日は果てつ
●ウインドーの蛍光灯に集ひきて死にたる白蛾朝毎に捨つ
●夜に入りて雪の降る音かすかなる厨に遅きけふの灯をけす


by Sonnenfleck | 2008-08-22 06:25 | 日記
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