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土に根を下ろして生きる。

土に根を下ろして生きる。_c0060659_6311545.jpg【L'OISEAU-LYRE/4759355】
<バッハ>
●チェンバロ協奏曲第2番ホ長調 BWV1053
●チェンバロ協奏曲第4番イ長調 BWV1055
●チェンバロ協奏曲第5番ヘ短調 BWV1056
●チェンバロ協奏曲第1番ニ短調 BWV1052
⇒オッターヴィオ・ダントーネ/アカデミア・ビザンティナ

kimataさん大絶賛の一枚。買ってみたのです。

バッハの協奏曲中、ここには書けないような個人的な思い入れもあって1055を猛烈に愛する(鼻の奥がツンとするくらい好きな)ワタクシとしては、まずはトラック4から。
…おいおい。通奏低音の安定感が物凄いぞ。
こういうバッハって長らく聴いてなかったなあ…。
曲調の要請による揺らぎは絶妙なバランスで配合されてます。ミュンヒンガーやリヒターではないですからね。でもこのように横方向の進みゆきが完璧に安定していて、曲芸的なところがまったくなく、人の歩行を想起させるような演奏が、オワゾリールから登場したっていうのが面白い。MAKあたりから始まったのがピリオドの浪漫主義だとしたら、ダントーネがここでやり始めているのはピリオドの新古典主義? いいなあ気持ちいいなあ。

第1楽章はこの傾向が最も強い。ダントーネはソロではあるけども自分のアンサンブルを丁寧に統率することも同時に考えているようで、ソロかつ通奏低音みたいな趣き。こういうのが久しぶりで逆に新鮮。。冒頭からCbとVcが本当にいい仕事をしている。
やはり第2楽章でもVnのボウイングに神経を尖らせていて、浪漫的に歌い崩しやすいこのメランコリックなメロディに枠をつけて確りと支えさせているわけです。「タ~ラ~↓タ~ラ~↓」ではだらしないが、「タ~ラ~↓タッター↓」で応答すれば清々しい。
そして第3楽章。新古典主義の「新」たる所以は、その直前の段階を経験し成果を吸収しているところにあるわけです。ここでは横方向はがっしり安定しながらも、花が方々で咲き乱れているような装飾が散りばめられてとても美しい。結末でトゥッティが下から掬い上げる華やかな装飾を付けていて、、かなりグッとくる。

あと。録音のコンディションが凄まじいレベルだという点も書いておかねばでしょう。
この演奏、1パート1人なんだけど、各楽器の個性が最大限に発揮される形で音が記録されていて、たった5人のトゥッティとは思えないくらい厚みのある響きになっているんです。
チェンバロの仕様については記載がないけど、角の取れた丸い音のする個体で、それがトゥッティと溶け合っている様子を聴いていると「単純に」気持ちがいい。
第2楽章のおしまいで、最後の残響とともに鳥のさえずりが捉えられている。遊び心。

+ + +

1055だけでひとくさり書いちまいましたが、他のナンバーだって素敵なのです。
南国の夜のように甘く暑く揺らいでいる1056のラルゴからは、チェンバロだって撥弦楽器だよねっていうことを強く思い出させますね。結尾で夜の大気が急に流れ込むような通奏低音の捌き方には、非凡なセンスを感じる。
by Sonnenfleck | 2008-09-18 06:48 | パンケーキ(18) | Comments(2)
Commented by kimata at 2008-09-18 22:03 x
「ピリオドの新古典主義」、それは言いえて妙です!

こういうガッチリしたバッハは、ありそうでなかったし、それに絶妙なバランスで揺らぎが加えられていて面白い。ダントーネ、恐るべしです。

ちなみに私も1055好きです。

ARTSレーベルに残されてるダントーネはこれから開拓予定です。
Commented by Sonnenfleck at 2008-09-18 22:20
>kimataさん
ただのクラシカルとロマンならそれこそ聴くべき録音はたくさんありますが、ネオクラシカルは意外に供給が薄かったですからね。これは面白いと思います。
ARTSのダントーネ・レヴュー、楽しみにしてます。イタリアンな1055でああいう演奏が可能ということは、きっとヴィヴァルディやコレッリも素晴らしいでしょう。私はOnyxレーベルのバッハのVnソナタとか攻めてみようかしら。。
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