on the air:ブリュッヘン/スタヴァンゲル響のベートーヴェン 1

c0060659_6154915.jpg【2008年10月4日 スタヴァンゲル・コンツェルトハウス】
<ベートーヴェン・フェスト1>
●交響曲第1番ハ長調 op.21
●交響曲第2番ニ長調 op.36
●交響曲第3番変ホ長調 op.55 《英雄》
⇒フランス・ブリュッヘン/スタヴァンゲル交響楽団
(2008年10月5日/NRK Klassisk 生中継)

いつもお世話になっている「おかか1968」ダイアリーさんで、「ブリュッヘンがノルウェーでベートーヴェン・ツィクルス(しかもウェブで聞ける)」という、マジかよ!な情報を拝見し、鼻息も荒くエアチェック。リコーダー仙人の現状をお伝えするのが、当ブログの重要な役目のひとつと思いますれば。

ノルウェーのスタヴァンゲル響は、ググってみるとBISにたくさん録音があるみたいですし、来日公演もやっているみたいですが、小生的にはまったく馴染みなし。しかし、もともとブリュッヘンを迎える体制がしっかりしていなければいきなりベートーヴェン・ツィクルスをぶち上げることもないだろうし、きっとこれまでも浅からぬ付き合いがあったのでしょう。仙人が最近よく登場するオランダ放送室内フィルに比べて、このオケはだいぶ骨格ががっちりしている印象。

まずは第1番。従来型の大柄な不機嫌ベートーヴェン。
最初の交響曲だろうがなんだろうが、ブリュッヘンの中ではこの作品はこういう趣きなのだ。
18世紀オケの録音に比べると、モダン楽器であるために響きがブリリアントなのが印象的です。18世紀オケでやると本当にどす黒くなっちゃうであろうところを、スタヴァンゲル響のポテンシャルで明るくしている様子。

+ + +

続く第2番は、バランスという意味ではこれが一番だったかな。
シャンゼリゼ劇場での18世紀オケとのツィクルスは無理がありすぎる展開ばかり(オケがブリュッヘンの感情を汲み取りすぎているからなのかもしれない)で、聴いているのがちょっと辛かったのだけど、スタヴァンゲル響の面々とは適度な緊張関係にあるようです。つまり、オケとしてはピリオド風のアーティキュレーションと実行するよう努めながらも、自分たちの血となり肉となっている「ベートーヴェン」のフォルムを維持しようという意志が徹底されているんだよなあ。ここがブリュッヘンのカリスマを120%信じている18世紀オケとの違いだろう。

全体を通じて細かい瑕は多いのですが、フォルムが崩れて溶け出すようなことはない。何が起きるかわからないようなドキドキはないものの安心して聴いていられます。
第1楽章はスケールの大きさからやっぱり象のような雰囲気を醸し出しますが、響きに澱みがない。ここで何か物凄く若返ったような印象を受けるのは、例のおかしな空疎感がないだけでなく、アクセントがいつも以上に溌剌としているからだと思う(ブリュッヘン的「重み」の連打は苦しいと思うが、オケは非常に健闘している>新日フィルはこれを実行するだろうか?)。上述した、オケとの緊張関係をそこに見出してもいいかもしれません。

第2楽章は白眉!あの美しい音色が出てくるのなら、すべて身を委ねましょう。。
ピッチが不安定なところを突っ込むのは野暮。指揮者の要請によるアーティキュレーションは守られているもの。終結部でのフルートはまるでトラヴェルソのような音がしている。
第3および第4楽章もリズムが死んでおらず、濁流のような重々しい展開がちゃんと存在していて安心。今日は仙人は空疎に囚われていないようです。ブラヴォも飛ぶ。

+ + +

トリは《エロイカ》
さてさて何やら響きが透明に、フォルムは乱れないもののテンポに関する呼吸は深く、逆にアクセントは比較的浅くなり、音楽がふわふわとし始めました。あああ。第1番と第2番は従来型の演奏だったけど…やっぱりブリュッヘンこういう造形をするようになっているのか。第1および第2楽章の静謐な空気感がたまらなく恐ろしい。
特に後者、葬送行進曲は黒々としていて、従来からあるブリュッヘンのデモニッシュな好みと、最近の空気の薄さが融合して「静かな不穏」が漂っています。。

湧き上がるリズムで聴かせるケースが多い第3楽章は、この演奏の場合リズムの箍の完成度よりも響きの色合いが美しいところに惹かれ、すっかり聴き惚れてしまいました。遠慮会釈なしにギラギラしている演奏もいいけど、ブリュッヘンは深い呼吸によってフレーズを自由に伸縮させながらオケを絶妙のバランスで鳴らす。
第4楽章に何とも言えない寂寥感が漂っているのはどうしてだろうか。従来のようなマッシヴな重みももちろん捨て去ったわけじゃないのだけど、それ以上に、響きを減点法で構築していく様子にただならないものを感じる。したがって最後の抒情的変奏の晴れ晴れとした美しさには涙が出ます。

お客さんはすっかり喜んでしまって、最後には手拍子化。
でもアンコールなんかやらないのがブリュッヘン。来週の第4番+第5番も楽しみだぜい。
by Sonnenfleck | 2008-10-06 06:18 | on the air
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