11月に、スキップ・センペの自主制作レーベル「Paradizo」からラモー作品集が出るらしい。という話を聞きつけて小躍りしたです。HMVの煽り文
「センペの分厚く華麗で濃厚なラモー!ラモーの過激にして濃厚な音世界。」だけでご飯三杯いけちゃうね。
まずは旧譜のスカルラッティで下調べ。
【Paradizo/PA9003】
●ドメニコ・スカルラッティ:ソナタ集
⇒スキップ・センペ(Cem)+オリヴィエ・フォーティン(Cem)
ドメニコのソナタって、味も香りも形もどぎつい南国の果物のようで、北国志向・密室志向の自分としてはもともとそんなに積極的に聴きたいとは思わないんです。
しかしこれは。これは違う。クセやエグみもそのまま生かして、全部一度に並列的にぶちまけているではないですか。センペの発音オプションの幅広さ、「アナログ」と言ってしまってもいいような極彩色の和音感覚が、これでもかと発揮されている。
一時的にはあまりにも要素が多すぎてうるさいようにも思われるけれども、慣れてくるとこの熱帯雨林のようなカオスこそドメニコ!というような気がしてくるから不思議です。カオスを上品に覆い隠したつもりで魅力をスポイルしてしまうヤワな演奏は、センペを前にして涙しながらひっそりと立ち去るしかないだろう。
計17曲のうち2台チェンバロで演奏される4曲は、轟々々々と鳴って「COOL!!!」の一言。
明らかにクラの受容器じゃないとこを刺激されるもん(
ニ長調 K492 "Presto"凄い)。
ソロになっても、やはり目の前にはエグい形をしたフルーツと、フルーツが生っている熱帯雨林と、それを狙う極彩色の鳥が見え隠れいたします。たとえば
変ホ長調 K193 "Allegro"の攻撃的なスタイルも気持ちがいいですが、しかしセンペが狙っているのが楽曲の速度による幻惑的な効果だけじゃないというのは、ディスクの最後・17曲目の
ニ短調 K32 "Aria"の艶めかしい肌触りから伝わってきますね。
属人的なところを拡大していった結果、異様に凄惨な響きになってしまったピエール・アンタイとともに、天然カオスのスキップ・センペも、ドメニコ演奏史上に燦然と輝く。