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on the air:ブリュッヘン/スタヴァンゲル響のベートーヴェン 2

on the air:ブリュッヘン/スタヴァンゲル響のベートーヴェン 2_c0060659_65697.jpg【2008年10月8日 スタヴァンゲル・コンツェルトハウス】
<ベートーヴェン・フェスト2>
●交響曲第4番変ロ長調 op.60
●交響曲第5番ハ短調 op.67
⇒フランス・ブリュッヘン/スタヴァンゲル交響楽団
(2008年10月11日/NRK Klassisk)

第1回に続いて。まずは第4番から。
これがあの空疎な《プラハ》、あの寂しい《エロイカ》をやっていたのと同じ指揮者の音楽だろうか。。

第1楽章は序奏だけ恐ろしく不気味に静まり返っていたので、ああ第4もこれでいってしまうかと思われましたが、いやいや。主部の重たい疾走感は昔と変わらない。
分厚い響きをそのままに人懐こいゴムボールのように跳ね回り、低弦はわしわしと重い歩みを重ね、要するに少し前の(録音がたくさん残っている時期の)ブリュッヘンそのままに、音符を踏みしだいてゆきます。
展開部に差し掛かると、確かに、音型の威容そのままに響きがスカスカとして空虚な感じを与えないではないけども(あれっ、そうかも、という選択肢を聴き手に与えている点がすでに、これまでのブリュッヘンのスタジオ録音群とは違うところではあるが)、最後にティンパニのみ「ぼわぁぁん」と残響を長めに取るたった一箇所のユーモアで、憂き世のことを忘れさす。

この変ホ長調の第2楽章は凡百の指揮者であっても儚げな情緒を演出することができる音楽ですが、ここでのブリュッヘンはまだらのように陰翳の濃淡を変化させて、怒り笑いのような、泣き笑いのような不可思議な時間を作り出している。至極ぶっきらぼうな刻みの上で、しっとりとClが歌っていますもの。この感覚は不思議だ。とても。

ところがここに接続されるのが、放り出してしまったかのようにフツーな第3楽章、反復されるリズムの入れ食い状態「だけ」に偏執的な拘りを見せて、色彩感も何もないような第4楽章なので、一体全体何が何やら。。

+ + +

そしてやっぱり、「ブリュッヘン最近様式」で演奏されてしまう第5番

響きを撤収させたあとの、不気味な残滓のような音を主役に据えつけてしまった。元の響きが真面目であればあるほどこの「残滓音」の空疎さは際立ちます。妙にダルな第1楽章
フォルムの豪気さに対してその中身は減点法で作り込まれているらしく、第2楽章の恐ろしく張り詰めた静けさには、ちょっとこりゃもうついてけねえッスの弱音を吐きそうになります。いつ終わるともわからないヒリヒリした感覚。聴いているのが辛い。なんでこんなことに?

同じように針のムシロな第3楽章ブリッジを抜けると、ところが、最後には吹っ切れたように足取りも軽く、愉快痛快爽快な第4楽章が現れる(この日一番の鋭いティンパニの打ち込みはここで聴かれる)。我々は仙人さまに翻弄されるしかないのか!

スタヴァンゲル響はやっぱり巧いオケなようです。第5番の最終楽章のコーダで「タンッッ!…たたらたたタンッッ!…たたらたたタンッッ!」っていう音型が出てくるじゃないですか。ここでブリュッヘンが要求していた(主に軽さに関する)精度は並大抵ではなかったと思うんですが、完璧にクリアーしてましたもん。

恒例となりました手拍子攻め。立ち尽くしている猫背ブリュッヘンの姿が想像されます。
by Sonnenfleck | 2008-10-17 06:24 | on the air | Comments(0)
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