ヨハネス・モーザー Vcリサイタル@しらかわホール

順番は前後しましたが、先週の日曜日に出かけたコンサートの様子。

c0060659_50789.jpg【2008年10月19日(日)11:00~ しらかわホール】
●バッハ:無伴奏Vc組曲第1番ト長調 BWV1007
 ●ブリテン:「ザッハー」の主題
 ●デュティユー:ザッハーの名による3つのストロフ
 ●ベリオ:《言葉は去ってしまった》
 ●ヘンツェ:カプリッチョ
 ●ルトスワフスキ:ザッハー変奏曲
●バッハ:無伴奏Vc組曲第3番ハ長調 BWV1009
 ○ショスタコーヴィチ:Vc協奏曲第1番変ホ長調 op.107~第2楽章カデンツァ
⇒ヨハネス・モーザー(Vc)


しらかわホールの名物企画「ELEVEN AM」の、4回目かな。
日曜の朝からこんなにマニアックなプログラムを用意するしらかわホールが大好きです。

バッハでサンドイッチしてあるけれども、今回のプログラミングの中核は「ザッハーもの」。
すなわちパウル・ザッハー70歳の誕生日プレゼントに贈られた、12人の作曲家(ベック、ベリオ、ブーレーズ、ブリテン、デュティユー、フォルトナー、ヒナステラ、ハルフター、ヘンツェ、ホリガー、フーバー、ルトスワフスキ)による無伴奏Vc曲集であります。今回はそこから5作品が選ばれました。
このときの発起人であったロストロポーヴィチは、自分の孫弟子がこの曲集を易々と弾きこなす未来を想像していただろうか。1979年生まれのヨハネス・モーザーは、ゲリンガスの弟子。ゲリンガスはスラーヴァの弟子。

+ + +

金髪長身にメガネのモーザーが出てくると、僕のそばに多く座っていたオバハンたちがわーとかきゃーとか言ってました。ううん確かにカッコええね。
彼の音は非常に見た目どおりというか、スマートでクレヴァー。抉られたり胸倉を掴まれたり、そんなことはまったくない。ひたすらスマート。でも与えられた要求に高いレベルで応えるためだったら汚らしい音も野蛮な歌も辞さないよHAHAHA、という感じなのが可笑しい。

まず外周を固めるバッハ2曲がずいぶん脱力した演奏で、面白かったでした。
激しい抑揚も軽い機知も、全部承知の上であえて柔弱な演奏に終始していたように感じられます。あのぬるま湯のような雰囲気が意外や意外、逆に集中し切った「ザッハーもの」と対比を描いて、新鮮な趣きを与えるんですよ。なるほどねえ。

さてさて5曲の「ザッハーもの」ですが、セレクションが非常によかった。
ブリテンはもう功成り名遂げた大作曲家ですから、あの軽やかな(テキトーな)筆致。
ヘンツェとルトスワフスキの作品は、過去からの流れの上に自分たちが立っていることをよく意識したトラディショナルな雰囲気だし、一方でデュティユーとベリオは特殊奏法を課しまくりでまったく意気軒昂。要するに5曲聴いていてとてもバランスがいい。

それでもあえて選ぶとすれば、デュティユーザッハーの名による3つのストロフと、ルトスワフスキザッハー変奏曲が、個人的には特に感銘を受けました。
前者はC線とG線がスコルダトゥーラされ、ベリオほどではないにせよスル・ポンティチェロも頻発するとげとげシリアスな作風。どっちを向いても藪の中みたいな印象を受けはしますが、モーザーの歌い方(そう!歌っていた!)には不思議な色彩感があって、それを味わっているうちに最後まで進むことができました。
反対に、後者はパウゼが効果的なコミカルな作品。モーザーもそれを意識してか、急発進と急ブレーキでホールの空気を前後左右に揺すります。最後は彼が踏んだ急ブレーキでお客さんは前方へすっ飛ばされる(慣性の法則)。それを見てにやりとするチェリスト。
by Sonnenfleck | 2008-10-24 05:00 | 演奏会聴き語り
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