2006年 03月 12日 ( 1 )

踊るモダンの瓶底眼鏡

c0060659_21551421.jpgマキシム・ショスタコーヴィチがボリショイ劇場のオケを振って録音した、親父さんのバレエ音楽集。このCDは本当に長いこと探していたもので、お茶の水のディスクユニオンでようやく発見、捕獲となりました◎

1936年のプラウダ批判で、歌劇《ムツェンスク郡のマクベス夫人》Op.29とともに貶められたのがバレエ《明るい小川》Op.39 。この《明るい小川》を最後にショスタコーヴィチはバレエから手を引くわけですが、それから10年後の1947年、ショスタコの友人で自身も作曲家だったレオン・アトヴミャーンが、《明るい小川》を中心にそのころ上演されなくなっていたショスタコのバレエ音楽から20曲ほどを抜粋し、組曲として仕立て直したのがこのCDに収録されている3つの《バレエ組曲》というわけです。
しかしこの「1947年」というのがミソ。
ソ連の国内は戦勝に沸き、スターリンの権力は絶頂ながらも、こと芸術音楽の分野ではちょっぴりご祝儀ムード。この年ショスタコはプロコフィエフやハチャトゥリャーンらとともに「ソ連人民芸術家」の称号を与えられて、これまでにない名声を獲得している。アトヴミャーンもショスタコも、このときは「10年前の若気の至りをもう一度取り上げても大丈夫なんじゃん?」と思ったんじゃないでしょうかねえ。ジダーノフ批判の嵐がまさにその翌年、1948年に吹き荒れたのはなんだか皮肉っぽいお話です。

それぞれ6曲からなる3つの《バレエ組曲》、第1番第1曲〈叙情的なワルツ〉は、たびたびテレビや映画で使われる人気曲。おととしフジ深夜枠で放送されてた「お厚いのがお好き?」のテーマ曲だったのが記憶に新しいですね。それにしても《バレエ組曲》はカップリングの《ボルト》なんかに比べるとずいぶん平明で旋律的な曲だらけで興味深い(ここに吸い上げられる前のもとの《明るい小川》は聴いたことがないので、作品自体が平明なのか、わざと平明な曲をセレクトしたのか、そのへんはよくわかりませんが)。
とにかく、どうしようもなく荒れてメロディアらしい録音、えらく艶っぽい弦、無神経なラッパ、必要のないときは絶対にリタルダンドしない潔さ、全体から漂うチープで猥雑な雰囲気…まるで28歳のショスタコがそのまま封じ込められたような魅力的な音盤であります。この録音で指揮を担当してるマキシムがちょうど28歳くらいなのは、、偶然にしちゃあよくできてますね。
by Sonnenfleck | 2006-03-12 23:20 | パンケーキ(20)