2007年 05月 11日 ( 1 )

ボレイコ応援プロジェクト、その後

c0060659_6512049.jpg2年前に未知の指揮者として取り上げたアンドレイ・ボレイコですが、東京のオケへの度重なる客演と、今年はPMFオケを振っての全国行脚、そしてこのたびhänsslerからショスタコの第4交響曲をリリースするに及び、ついに「期待の人」として知られるようになったようであります。
継続的に録音してきているシルヴェストロフのシリーズを除けば、ほとんどメジャーデビューと言ってもよい録音。そこにタコ4を持ってくるというのが大胆不敵です。オケはシュトゥットガルト放送響。

まず、第1楽章冒頭の破滅的な響きをあえて強調しないのが面白い。
確かにどでかい山を最初に遠慮なく築いてしまうと、それ以降にたくさん現れる大小の起伏群がその魅力を減じる可能性があるんですよ。これまで聴いたどの4番とも違う、全体のフォルムへの細やかなこだわりは驚異的です。
プレストに突入する直前数分間における木管のキャラクタづけの妙技を、プレスト頂点での総ユニゾンによるずり上げを、再現部へ至るカウントダウンがキラキラと光っているのを、じっくりと聴いてみてください。これほど贅沢に手間暇かけて彫塑された4番なんて、他にありましたか?勢いに任せて表現主義的に鳴らすだけがタコ4の解法ではない。。

第2楽章は、美音やグロさで聴かせるのではなく、ただひたすらに構造を提示することに専念する(素晴らしく無表情で灰色のレントラー…)。こういう単純なリズムを刻ませると、ボレイコはどんどん冷たく醒め切っていくのです。ここではシュトゥットガルトの魅力的な木管さえモノトーンに染まって、不思議な世界が見える。

…はっ。と気がつくと、甘い表情がついたFgのソロ。第3楽章はちょっと4番とは思えない、もっと言えばショスタコらしくないくらい鮮やかな手管が披露されて、《ペトルーシュカ》の謝肉祭のような目まぐるしい転換がフルカラーで目の前に広がります。これはいかにも亀山郁夫が喜びそうなユーフォリアではないか!たとえ「直伝」の鋭い響きでないとしても、これがショスタコがイメージしていた1920年代のソヴィエトの雰囲気にかなり近いと僕は思う。
その途中でいくつか差し込まれる破局(わかり易いのはテューバの闖入でしょう)は残念ながらいささか唐突すぎる印象を与えるけども、2台のティンパニを的確に捉えた録音とともに、フィナーレの金管コラールは狂熱的で大変素晴らしいです。この速さは一体どうしたことだ。。

チェレスタの跳躍を最後にほんのちょっとだけ待つ彼のセンスが好きです。
併録の《マクベス夫人》組曲は…残虐なアンコールピースとしてもっと評価されるべき。さっき調べたらすでにNML内に存在していましたので、アカウントをお持ちの方はぜひお聴きになってみてください。
by Sonnenfleck | 2007-05-11 06:52 | パンケーキ(20)