<   2006年 03月 ( 19 )   > この月の画像一覧

踊るモダンの瓶底眼鏡

c0060659_21551421.jpgマキシム・ショスタコーヴィチがボリショイ劇場のオケを振って録音した、親父さんのバレエ音楽集。このCDは本当に長いこと探していたもので、お茶の水のディスクユニオンでようやく発見、捕獲となりました◎

1936年のプラウダ批判で、歌劇《ムツェンスク郡のマクベス夫人》Op.29とともに貶められたのがバレエ《明るい小川》Op.39 。この《明るい小川》を最後にショスタコーヴィチはバレエから手を引くわけですが、それから10年後の1947年、ショスタコの友人で自身も作曲家だったレオン・アトヴミャーンが、《明るい小川》を中心にそのころ上演されなくなっていたショスタコのバレエ音楽から20曲ほどを抜粋し、組曲として仕立て直したのがこのCDに収録されている3つの《バレエ組曲》というわけです。
しかしこの「1947年」というのがミソ。
ソ連の国内は戦勝に沸き、スターリンの権力は絶頂ながらも、こと芸術音楽の分野ではちょっぴりご祝儀ムード。この年ショスタコはプロコフィエフやハチャトゥリャーンらとともに「ソ連人民芸術家」の称号を与えられて、これまでにない名声を獲得している。アトヴミャーンもショスタコも、このときは「10年前の若気の至りをもう一度取り上げても大丈夫なんじゃん?」と思ったんじゃないでしょうかねえ。ジダーノフ批判の嵐がまさにその翌年、1948年に吹き荒れたのはなんだか皮肉っぽいお話です。

それぞれ6曲からなる3つの《バレエ組曲》、第1番第1曲〈叙情的なワルツ〉は、たびたびテレビや映画で使われる人気曲。おととしフジ深夜枠で放送されてた「お厚いのがお好き?」のテーマ曲だったのが記憶に新しいですね。それにしても《バレエ組曲》はカップリングの《ボルト》なんかに比べるとずいぶん平明で旋律的な曲だらけで興味深い(ここに吸い上げられる前のもとの《明るい小川》は聴いたことがないので、作品自体が平明なのか、わざと平明な曲をセレクトしたのか、そのへんはよくわかりませんが)。
とにかく、どうしようもなく荒れてメロディアらしい録音、えらく艶っぽい弦、無神経なラッパ、必要のないときは絶対にリタルダンドしない潔さ、全体から漂うチープで猥雑な雰囲気…まるで28歳のショスタコがそのまま封じ込められたような魅力的な音盤であります。この録音で指揮を担当してるマキシムがちょうど28歳くらいなのは、、偶然にしちゃあよくできてますね。
by Sonnenfleck | 2006-03-12 23:20 | パンケーキ(20)

幻想のマウント多摩

c0060659_2222529.jpg帰ってきたら金曜ロードショーで「耳をすませば」が放送されてたので、、見てしまいましたー^^;; なんかこう…自分がどうしようもないほど汚らわしく思えてくるようなこんな映画もまたステキデスネ(棒読み)。

んで、、聖司クンのVn工房でみんなが《カントリーロード》をネタにセッションする場面があるじゃないですか。楽器編成は最初ヴォーカル+Vnだったのが、そこにガンバ、リュート、タンバリンが加わり、さらにタンバリンがコルネット→リコーダーと持ち替えて、しっかり古楽アンサンブル。アレンジもほんのりプレトリウスみたいで楽しい。
ネットで調べてみて知ったんですが、この演奏に限らず、「耳をすませば」BGMの古楽っぽい部分はアントネッロ主宰の濱田芳通氏が担当してるんですね。こちらの情報によると「古楽器は小さな音しか出ず、少し極端ですが、耳をすませなければ聴こえない、、、という雰囲気も起用の理由」とのことで、やべっこんなところでもデキスギ「耳すま」クオリティ(笑)

2005年6月6日 目白バ・ロック音楽祭:《モンセラートの朱い本》
(↑アントネッロ+ヴォーカル・アンサンブル・カペラによる熱いライヴ。目白バ・ロック音楽祭は今年さらにパワーアップしてるみたいですよ。首都圏の皆さま、ぜひ。)
by Sonnenfleck | 2006-03-11 00:03 | 日記

マシン・イン・マサチューセッツ

c0060659_09186.jpgラインスドルフ/ボストン交響楽団によるプロコフィエフ5番&3番のCDをやっとのことで入手しました!昨年TESTAMENTから復刻されたRCA原盤のステレオ録音(1963&66年)。
3番は来週新日フィルの定期で取り上げられるので、予習のためにここ何日かロジェストヴェンスキー/モスクワ放送響のCDを聴き込んでおりましたが…

プロコ作品のなかでもかなり禍々しい響きを持つ3番、しかしその合間々々には静謐で美しいブロックが大量に埋め込まれてます。第1楽章主部や、第2楽章に出てくる甘美なフラジョレット、ハープを伴う第3楽章中間部の柔らかなトーンなどは絶対に無視できない。したがってあちこちに気分の落差のようなものがうまれるんですが、ラインスドルフは全体をビロードのように優雅な雰囲気で包み込みつつも、その落差の描き分けが天才的に巧いんですな。。
ロジェヴェン盤では荒々しい弦にかき消されてまったく聞こえない木管が、金管の爆発のあと滑らかなレガートでふんわりと浮上してくる様子など実に面白い(鍛えに鍛えられたボストン響木管パートの実力もあると思うけれど)。ゆったりテンポで高級に落ち着き払ったラインスドルフに対し、とにかく叫びまくる道を選んだロジェヴェンが幼稚に思えるくらいです(((^^;)

5番も完全な横綱相撲、鷹揚に構えたこのアダルトな魅力は衝撃的ですらある…ってどんなに言葉を積み上げても足りないくらい、完璧な演奏です。木管を中心としたオケの巧さもさることながら、ここまで大きく構えてるのに全体のリズムがまったく崩れてないというのが信じられない(同様に大きく構えたチェリビダッケやテンシュテットは縦の線がメタメタに破綻してる)。なんなんだこの人は!
by Sonnenfleck | 2006-03-10 00:27 | パンケーキ(20)

鳴る...鳴る...何が鳴る?

c0060659_23471355.jpgヤマハサイレントチェロを弾いてみる機会がありました。
SVC-200は見てのとおり、両のひざ当てとハイポジ用の肩、および背面に胸当てを搭載。実際に弾いてみると、確かに空虚な部分には触れる必要がない。ただし、f字孔を覗き込んだり、木の香りを嗅いだり、クビレを愛でたり、ショスタコの弦楽四重奏曲第13番のチェロパートを弾いたりすることができないのは残念ながら仕様のようです。、、この空虚さはなんとなくベルメールの球体関節人形を発想させて愛らしい。
共鳴するはずの胴体がなく、発音しているのが弦そのものであるため、音量は極めて微小。特にC線とG線は非常に鳴りにくいのですが、爆笑なのがそこから増幅された「楽音」。…勝手にホールエコーがついてるんですよ。解説を読むといちおう「小さな部屋/中ホール/大ホール」の3段階調節が可能らしいですけど、、これこそキッチュの鑑。あなたの4畳半もこれでサントリーホール。
by Sonnenfleck | 2006-03-08 00:29 | 日記

伊右衛門@はん

c0060659_2110437.jpg今日は暖かかったなあ。/そうだ京都、行こう。
去年の梅雨ごろ、ペットボトルのお茶について勝手にランキングをつけましたが、そのころ飽きていた「伊右衛門」に最近またはまり始めました。
(茶来もう全然見かけないよ茶来、、、)
そんなわけでサントリー「伊右衛門」2Lペットを買ったら、おまけで「伊右衛門・茶葉」飲みきりパックがついてきたんですよ。どんなもんかなと思って淹れてみましたら、これがペットボトルとそれほど違わぬ味でさすがに吃驚。...「淹れたての茶と同じくらい出来のいい液体をペットに充填している」ってことにしときましょうか?

ところで「伊右衛門」のCM(30秒バージョン)がここで見られるんですが、そのBGM(久石譲)。通常多くお目にかかる15秒バージョンの部分を過ぎたあと、20秒あたりから急に意外な半音階が進入してきてちょっと面白いことになってます。普段こういう系統のサントラ(これって「劇伴」っていうジャンルでいいのかな?)に手を伸ばすことはないですが、実はゲンダイオンガクに嫌気がさしたものすごいメロディメーカーが活動してそう。なんて妄想。
by Sonnenfleck | 2006-03-06 22:30 | ジャンクなんて...

アンサンブル・ノマド@第30回定期演奏会:「20世紀の古典主義」

c0060659_01557.jpg【2006年3月4日(土)15:00~ 東京オペラシティリサイタルホール】
●バルトーク:《コントラスト》 (*)
●ヴァレーズ:《比重21.5》 (**)
●ストラヴィンスキー:七重奏曲 (***)
●ベルク:アダージョ (+)
●プーランク:六重奏曲 (++)
●ウェーベルン:9つの楽器のための協奏曲 Op. 24 (+++)
→アンサンブル・ノマド
  野口千代光(Vn;*,***,+++)、
  菊地秀夫(Cl;*,***,+,++,+++)、
  稲垣聡(Pf;*,***,+,++)、木ノ脇道元(Fl;**,++,+++)、
  甲斐史子(Va&Va;***,+,+++)、菊地知也(Vc;***)、
  萩原顕彰(Hr;***,++,+++)、塚原里江(Fg;***,++)、
  林憲秀(Ob;++,+++)、服部孝也(Tp;+++)、
  奥村晃(Tr;+++)、中川賢一(Pf;+++)、
  佐藤紀雄(Cond;+++)


いつも気になってはいたものの、、選曲の敷居が高くて二の足を踏んでいたアンサンブル・ノマドの定演でしたが、「20世紀の古典主義」をテーマとした今回はかなり保守的なプログラムだったため出かけてみました。広くはないリサイタルホールを埋め尽くす重度クラヲタっぽい人々に安堵を覚えつつ(笑)プログラムを開くと、「来年度以降の定期演奏会中止のお知らせ」が目に留まります…。一期一会だ。

一曲目のバルトークは軽いジャブ、急速楽章のあけっぴろげな感じと緩徐楽章のねっとり重い空気感の対比もまた楽しい。Vnの持ち替えはどうやら変則調弦のようでした。

続くヴァレーズの風変わりな題名は、初演奏者が吹いたプラチナ製フルートの比重に由来とのこと。少ない音で構成されたソロFlの清冽な旋律とその音が残響になって拡散する様子を楽しむ作品のようで、視覚を奪って音に集中させるためかホール内ははほぼ真っ暗。んで気持ちよく耳を傾けていましたら、、無常にも高らかに鳴り響く携帯着信音(-_-メメ) ただの呼び出し音で旋律じゃなかっただけましかもですが、それにしてもよりによってこんなときに!!!! 木ノ脇氏もこれにはさすがに憮然といった様子で、会場もがっかりムード10.0→10.0→満点。

三曲目はストラヴィンスキーが50年代に作曲した擬古典主義的合奏曲ですが、《プルチネッラ》のような旋律の擬バロックではすでになく、形式の擬バロックという感じ。第3楽章ジーグでVn→Va→Vcと順にスタートするのを聴いて「あーコレッリってこういう定型だよなあ」と。ノマドの皆さんはアンサンブルの組み方がべらぼうに巧く、誰が引っ込んで誰が出るかを明確に決めることの重要性を改めて考えさせられる。

休憩を挟んで後半最初はベルクのアダージョ。これはベルクがシェーンベルクのお誕生日祝いに作曲した《Pf、Vnと13管楽器のための室内協奏曲》から、のちに第2楽章だけを取り出して小さい編成に編曲したもの。...意識を失っていたのでこの曲の感想はパスです。

今回の定演のプログラムで聴いたことがあったのは実はプーランクだけ。この華やいだ作品がホールに立ち上ると、がらりと空気が変わりますね。Obの林氏は楽器の調子が芳しくなく、時折「ギギッ」と異音が混じって苦しそうでしたが、技巧的なパッセージを難なく吹きこなす萩原氏のHrには感激。さらにアンサンブルを統率する木ノ脇氏の抜きん出た存在感は、たびたび挿入されるプーランク特有の残酷な響きにおいて発見されるのでした。ブラヴォ。

さて、自宅スピーカなりヘッドホンなりでウェーベルンの音楽を聴くと、休符に果てしない白々しさが漂うのが悩みのタネ。。(*目下オーディオの世界には足を踏み入れておりませんが、ウェーベルンの消える音・演奏空間の広がりが再現できれば、それこそ理想だと思います。)
そんなわけでウェーベルンは可能なかぎり生で聴きたいのですが、今回の演奏ではその欲求が完璧に満たされたですよ。9人が時に寄り添い、時に対立しながら慎ましやかな音を放り投げていく緊張感!ここでやっと登場した中川氏の打鍵の厳しさがまた最高!

もうしばらく彼らの演奏には触れられないようですが、、こんなことならもっと早く足を運べばよかったなあ。ノマドはまた遊牧の旅に出てしまったみたいです。
by Sonnenfleck | 2006-03-05 00:06 | 演奏会聴き語り

王の24人が軽くスキップ☆

c0060659_21372670.jpg同じフランスものでも、リュリの音楽にはラモーのように入れ込むことができないんですよね。両者の領域を重ね合わせるとかなり近しいところがあるのだとは思うのだけど、リュリ御大の音楽はやっぱり17世紀のもので、彼が受け継いでいる簡潔で翳りのある響きとラモーからはみ出した華美な部分とは水と油のように相容れない。目下のところ油の誘惑に囚われている僕にとっては、高潔な水の世界はいまだ難解であります。

しかし、長いこと探していたスキップ・センペ/カプリッチョ・ストラヴァガンテによるリュリのディヴェルティスマン集が渋谷のタワレコに入荷していたので、えいやっと買ってみました。

センペがカプリッチョ・ストラヴァガンテを結成してからまだ4年目の1990年録音。(*音場が極端に左右に狭いのが玉に瑕です。モノラルかっての。)
まず初めにその禁欲的で薄い響きに驚きます。太鼓もリュートもおらず、演奏者は各パート1人ずつでたったの6人。ライナーをざっと読んだ感じでは、これは当時のリュリ受容のスタイルに即した編成であるとのこと。しかし一音々々のぎゅっと締まった粋な響きはすでにしっかりと形成されていて、彼らの特性が物理的な音量だけでコントロールされているのではないことがはっきりとわかる。
多幸症的な切ない高揚感を伴う《アマディス》のシャコンヌ《アルミード》のパッサカーユなど、その「主張する楚々」には惚れ惚れとするほかない。また《プシシェ》序曲の後半、フーガになったところで最高にライトでクールなイネガルを聴かせてくれるのですが、これにて自分の「ギスギス大袈裟イネガル好き」に終止符かもです。ああーカッコいいなあー。

水、然れどもレモンの数滴。
by Sonnenfleck | 2006-03-04 00:08 | パンケーキ(18)

哀愁の旧モガ、ベベベンベン。

NHK教育でやってる「趣味悠々」。
多岐にわたる趣味の世界を覗くことができていつもぶったまげておるのですが、いま放送中の「大正琴で弾く!」もまた面白い。これって「大正琴『を』弾く!」じゃないのがミソで、、古賀政男しか弾いちゃいけないような感じの大正琴でも《大きな古時計》や《きよしのズンドコ節》が弾けるのよっ、というアピールなんでしょう。でもやっぱりアダルトで茶柱な雰囲気を楽器全体から漂わせてるのが微笑ましいところです。(ゴドフスキ作曲《超絶技巧大正琴練習曲集》とかあればね、、話は別ですが。)
そうしたイメージを吹き飛ばすためなんでしょうか、金髪カツラかつアニメ声かつ和装というトンデモねえちゃんが生徒役。…いつもながらのNHKらしい似非親しみやすさの表われかと思いましたが、実はこの山崎バニラという人は大正琴やピアノの弾き語りで活動写真の弁士をやるという異色の人物でありました。周到な人選。

3月15日放送回の「ジュピターでアンサンブルに挑戦」という予告を見て、ここでも誰かさん@250歳かよぅ…しかも大正琴アンサンブルで??と一瞬当惑。しかし、ああ違う平原綾香の《ジュピター》だよなとひとりごつクラヲタ、咳をしてもひとり。風邪か。
by Sonnenfleck | 2006-03-03 00:52 | 日記

鉱物と音符の交わるところ

c0060659_2331964.jpg帰宅@ずぶぬれ。

道中聴こうと思って持っていったのが、プロコフィエフ最晩年のバレエ音楽《石の花》であります。
昨年くらいから大型店の店頭にメロディアの純正品がちょこちょこと並び始めていたんですけど、このたび新サイトも登場するにおよび、ついにメロディアも十数年の低迷を乗り越えて復活か!という状況。しかしその陰で RUSSIAN REVELATION や RUSSIAN DISC などのメロディア音源のライセンスを取って発売していたロシア系の謎レーベルは一時期の高値が嘘のように値崩れしてしまい(レコード店としては一気に売り切ってしまいたいのだろうか?)、このロジェヴェン盤もそこを狙って買い込んだ中の一枚。

地味でつまんなそうな題名じゃないですか。石で花ですからね。《ロメオとジュリエット》みたいなオサレな語感には全然かなわない。…でも、これを聴かずにクラヲタ人生を終わらせるのはあまりにももったいない、そんな逸品なのですよ。
若い石工がウラルの鉱山で石の結晶を見つけ、念願の石の花を彫り上げる。銅山の女王に魅了される石工だったが、最後は恋人の助けで地上へ生還しハッピーエンド。
ソ連っぽい安直な台本はこのさいどうでもよく、ただ耳を傾けるべきなのは、いつもよりさらに明るくて楽しく、そしてとにかく切ないプロコの音楽。20世紀最高のメロディストの面目躍如っすよ。さらにそれだけじゃなく、自己破壊的な音響の名残が部分的に残っているのも萌えポイント高し。なによりこんなにエキゾチックな方向に舵を切ったプロコなんてほかに知らないんですよ。チャイコの西洋@二度漬け@露西亜風味が胡散臭く思えたら、今度は《石の花》のアヴァンギャルド民族舞踊でヴァーチャルにウラル散策。
by Sonnenfleck | 2006-03-02 00:53 | パンケーキ(20)