【Arte Nova/74321277682】
●ツェムリンスキー:抒情交響曲 op.18 →ジェームズ・ジョンソン(Br)、ヴラトゥカ・オルザニック(S) ●ベルク:《抒情組曲からの3楽章》 ●同:《アルテンベルク歌曲集》 →ヴラトゥカ・オルザニック(S) ⇒ミヒャエル・ギーレン/SWR交響楽団 お前は《抒情交響曲》の旨みを100%享受しているか、と問われたらまだまだ修行中ッスと答えるしかないですが、わからないなりにこの作品のぐじゅぐじゅにうわあぁぁっと顔をうずめるのも楽しみ方のひとつでありましょう。 第1楽章の冒頭からして、絢爛豪華な大編成オケが「のたくる」様子は聴いていて気持ちがいい(ここの主題はカッコええですよね。SWR響巧し)。この主題が何度も顔を覗かせながら、女声が歌う偶数楽章を通過し、ごく短い第5楽章〈恋人よ、お前の甘い口づけから解き放してくれ〉に辿り着く。このあたりから始まる分厚い混沌の濁流。これに押し流されるようにしてぼぉ...っとするのもオツですし、第7楽章〈安らぐがよい、わが心よ〉が静かに終わるのは反則だよね、と思うもよし。 ギーレンの采配はよく言われるようにドライではあるけれども、それは余計なものを足さないという一点に関してドライなのであって、元のスコアをフツーに、過不足なく鳴らすことについて彼は吝かではないんじゃないかな(案外抑揚が激しく、彫りが深い彼のマーラー演奏を思い出すまでもないでしょう)。 彼はロードローラー型の整理整頓指揮者ではないように思うのです。これによって、もともとぐじゅぐじゅしたスコアが、見事にぐじゅぐじゅしたまま提示されてく。ジョンソンというバリトンはドイツ語のディクションがビミョーな感じがするのだけど、そのビミョーさも、オルザニックというソプラノの地味な声質も、冷淡な録音コンディションも、すべて混沌を形成する一部。 カップリングにはベルクの《抒情組曲からの3楽章》と《アルテンベルク歌曲集》が配されていて、ツェムリンスキーの後の清涼なデザートといった感じ。このディスクってもっと重要視されてもよいと思うんですが、出たレーベルがまずかったのかなあ。 さーて今日は家でじっとしていよう。
by Sonnenfleck
| 2008-11-03 09:26
| パンケーキ(20)
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Comments(10)
こんにちは。
私、このCD好きです。 「叙情交響曲」はこれしか持ってないんですが、勝手に必要充分だと思ってます。 私の中では「叙情交響曲」と「大地の歌」とシマノフスキ「夜の歌」の3曲って セットになっております。、 「20世紀後期ロマン派声楽つき東洋趣味交響曲トリオ」というくくりです(長いって)。 3曲まとめて聴くと精神的にすっかり無常化・浪漫化・退嬰化して、 気分はもうクリムト(なんじゃそりゃ)。
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mamebito at 2008-11-03 21:26
お久しぶりです。
ギーレンのこのディスク、ArteNovaで安いし買おうか迷っていたので、Sonnenfleckさんの投稿がとても参考になりました。 私はシャイー+ACOとエッシェンバッハ+パリ管を聴いていましたが、その旨みを70%ぐらいしか味わえていないと思います。ギーレンの「余計なものを足さない」「スコアをフツーに過不足なく鳴らす」演奏の方が曲の純粋な魅力に気付きそうな気がしました。聴いてみますね。ありがとうございました。
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Sonnenfleck at 2008-11-03 22:26
>木曽のあばら屋さん
私も実はこれ一枚しか持っていないんです。最近安く発売されたマゼール/BPOの演奏も気になっていますが、きっとギラギラしているんだろうなあ。 シマノフスキの「夜の歌」って何だっけ、と思ってCD棚を探しました。交響曲第3番のことでしたかー。ラトル盤しか持っていないのですが、3連休の最終日の夜に聴く音楽ではありませんね(笑) 明日なんか来なければよいのにとしみじみ思います(退嬰)
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Sonnenfleck at 2008-11-03 22:30
>mamebitoさん
Arte Novaのギーレンはたぶんどれもよい演奏だろうなと思いつつ、他には手が出ていませんが、ダフクロよりもむしろショスタコーヴィチの第12番が気になっています。きっとあのあからさまなスコアがあからさまに曝け出されているのでしょう。 ギーレンの提示方法でしか抒情交響曲を知らないので、エッシェンバッハの耽美世界(ですよね?)は大いに気になります。。
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モザイク
at 2008-11-04 00:30
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私は「75歳記念」の4枚組で所持してます。
ショスタコーヴィチはバルトークのピアノ協奏曲第3番とのカップリングとなっています。この2曲と、抒情交響曲(叙情、と表記されてますが)と併録されているモーツァルトの39番が特にお気に入りです。いずれも、テクスチュアを明晰に示す手腕が発揮されていますね。左より、1st,va,vc,2ndと並ぶ配置(ギーレンとSWRはこれが多いのですが)も個人的に高ポイントです。 ギーレンは、出自(シュトイアーマンの存在)といい経歴といい、シェーンベルク辺りの演奏に関しては「家元」的存在といえるのではないでしょうか。5つの管弦楽曲やモーゼとアロンの映像作品も、実にいい仕事をしていると思います。
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mamebito at 2008-11-04 00:43
ArteNovaのギーレン、ショスタコ12番とモツ39番が気に入りです。
12番はおっしゃる通り妙な思い入れが無く“曝け出される”感じで録音も優秀。曲自体簡潔なこともあって言いたいことが端的に伝わる秀演だと思っています。 エッシェンバッハは本当に耽美ですね。あとパリ管の音色美についつい目が向いてしまいます。
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pfaelzerwein
at 2008-11-04 12:20
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私はギーレン指揮SWRは、90年とあとは晩年しか聞いていないのですが、これもここ十年ほどの録音ですか?後年は特にコントロールの意志が希薄だったです。もちろん、素晴らしい音楽を実践していましたが、指揮者としての意欲はショルティーやドホナーニなどの職業意識とは一線を隔していますね。
これはバーデン・バーデンでの録音ですか?まあ、共同制作という名の横流し商品ですから、録音技術的にそれ以上を期待することは出来ません。それ以上に、上の指揮者としての考え方にも通じると思うのですが、音楽家として録音には比較的冷淡な感じがしますね。私はこの指揮者の録音はフィリップスでのアロイス・ツィンマーマン協奏曲集しか持っていないです。 この曲は、クレー指揮盤を所持していますが、マゼ-ルも一時やってましたね。ラトルはどうなのかな?
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Sonnenfleck at 2008-11-04 21:24
>モザイクさん
あーその4枚組、買おうかどうか迷ってるうちに見当たらなくなっちゃったやつです。ご指摘のシェーンベルクをはじめ、一部の作品/作曲家については他の追随を許さないような演奏もしますよね。《モーゼとアロン》はモノラル録音にビビッて入手できていませんが。 しかしモーツァルトは、想像がつきません。。
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Sonnenfleck at 2008-11-04 21:29
>mamebitoさん
思いのほかこのエントリが盛り上がりを見せていて興味深いです。皆さん好きなのかなあ(笑) 《抒情交響曲》はギーレンの「竹を割ったような」アプローチも許すし、エッシェンバッハの音色美攻撃も許すし、《大地の歌》に比肩するような作品だと思います。やはり。 ギーレンのショスタコ&モーツァルトは買いですね。メモっておきます。
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Sonnenfleck at 2008-11-04 21:38
>pfaelzerweinさん
おっしゃるとおりSWRの「ハンス・ロスバウト・スタジオ」といういかにも響きのドライそうな(笑)スタジオで、1994年に録音されています。確かに(こういう常套的な表現を使うのは気が進みませんが)指揮者の「体臭」みたいなものは一切しませんね。演奏者の存在をアピールすることが目的の演奏ではないようですし、録音には比較的冷淡、というのも大いに頷けるところではありますが、私はそうした姿勢にも強く共感します。 ベルンハルト・クレーですか?面白そう。。ラトルはきっと満を持して鳴り物入りの録音を敢行するでしょう。いかにも好みそうですもの。こういう作品を。
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