【2008年10月15日 スタヴァンゲル・コンツェルトハウス】
<ベートーヴェン・フェスト4> ●交響曲第8番ヘ長調 op.93 ●交響曲第9番ニ短調 op.125 《合唱つき》 →イーサ・カタリーナ・ゲーリケ(S) マリアンヌ・ベアテ・キエランド(MS) ペーター・ロダール(T) アンドレ・モーシュ(Bs) →スタヴァンゲル響合唱団 ⇒フランス・ブリュッヘン/スタヴァンゲル交響楽団 (2008年11月8日/NRK Klassisk オンデマンド) 本放送も再放送も録音をミスって絶望的な気持ちになっていましたが、「おかか1968ダイアリー」さんで情報を得、めでたくオンデマンドにより聴取(大感謝!)。ブリュッヘン+スタヴァンゲル響のベートーヴェン・ツィクルスも最終回ですね。 実はベートーヴェンの9曲の交響曲のうち、第8番だけはいまだに正体がわからずにおりまして、感想らしい感想が書けないのです。転調も動機も目まぐるしすぎてついていけない。 まったく未知の作品を聴くつもりで今回のライヴを辿っていると、粘りが強かった80年代のブリュッヘンとあんまり変わらない調子に戻っているのがまずわかります(第1楽章のハイテンションはほとんど無理があるくらい「豪快」に聴こえる)。 ブリュッヘンの内面の要請は、この作品では静謐な空間づくりをする必要はないと判断したのでしょうが、それは先日の《英雄》や《田園》とあまりにも異なるので、凡夫は翻弄されるしかありません。ただし第2主題というか副楽想というか、とにかく優美な旋律や和音が流れ出すと、そこにはこれまでに聴かれていたようなガラス質の響きが確かに顔を覗かせているのです(特に第4楽章は岩石とガラスが溶融して互いにくっつき合ったような不思議な感覚)。 + + + それで第九、ですが。 全体的にみて、総合的に聴いて、完成度の高い演奏とは思いません。第1楽章はアンサンブルが絶えず前につんのめって破綻しかけているし、第2楽章はぶっきらぼうだし。期待していた第3楽章も練り上げ不足で完全に響きが濁り、落ち着きがない。 ツィクルス中でもっとも粗っぽい出来、、このままでは竜頭蛇尾もよいところ。。 でも、ブリュッヘンが最後に用意していたのは別のやり方だったんですね。 どかどかどかっと始まった第4楽章が、実は突き抜けちゃっていることに気がつく。 フォルム維持からも音色からもパッセージ造形からも自由になってしまって、テキトーなアーティキュレーションによるゆるゆるふわふわの音、リズム取りもダッサいし響きも鈍いんですよ。でもそのかわり、これ以上ないくらい善良で陽気な祝祭が繰り広げられている。まったく肯定的で明るい音楽になっているのです。実際、このまま善良なカオスの嵐を引き連れてゴールしてしまうのかな、それでもいいな、と思っていました。 ところが、そうこうしているうちに終結部分のAllegro ma non tantoに差し掛かるとがっくりテンポが落ちる。で、ホール中にばら撒かれて混乱していた響きがさーっと集まってきて硬く凝縮し、澄み切ったような音響空間になってしまうのです。もうその状態でPrestissimoに突入するので恐ろしくキレイ。《田園》の最後の状況によく似ていますが、こちらは透徹していながら響きにどことなく生きものらしい温かみがある。 いやはや、これは錬金術的とでも書いたらいいのか。。 どうしてこんな設計をし、おまけに成功しうるのか、永遠の謎だな。言葉を連ねても上手く表現できないので、せっかくのオンデマンドですからぜひ皆さん聴いてみてください。 最後はお決まりの拍手→手拍子化。僕らもすみだでやりましょうかねコレ。 *on the air:ブリュッヘン/スタヴァンゲル響のベートーヴェン 1(第1番~第3番) *on the air:ブリュッヘン/スタヴァンゲル響のベートーヴェン 2(第4番+第5番) *on the air:ブリュッヘン/スタヴァンゲル響のベートーヴェン 3(第6番+第7番)
by Sonnenfleck
| 2008-11-09 08:46
| on the air
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