【2009年2月11日(水) 15:00~ すみだトリフォニーホール】
●ハイドン:交響曲第96番ニ長調 Hob.I-96 《奇跡》 ●同:交響曲第95番ハ短調 Hob.I-95 ●同:交響曲第93番ニ長調 Hob.I-93 ○アンコール 同曲~第4楽章 ⇒フランス・ブリュッヘン/新日本フィルハーモニー交響楽団 ハ、ハイドンを集中して連続三曲聴くのがあんなに疲れるとは。ハイドン不感症ぶり、ここへきてしっかり発揮してしまいました。。その上、《天地創造》で聴かれたような透徹した空疎とそれを実現させる精密な合奏も、残念なことにこの日はかなり断片的にしか出てこず、ちょっと拍子抜けしたというのが正直な感想です。日曜の多摩公演から中二日、時間的な余裕もないし、オケに疲れが出てたのかもしれません。 以下はハイドン音痴が書くことなのでそこは差し引いていただきたいんですけど、《奇跡》はなぜかアンサンブルが荒れている上に、フレーズ感を妙に希薄にする最近のブリュッヘンの好みがずいぶん表に出てきてしまってたと思います。結果として聴き手には何も方向性が示されず、半端な印象を受けてしまった。 スタヴァンゲル響とのベートーヴェンはフレーズ感の希釈が上手くいっていたけど、ハイドンの機関は、それ自体でレールに乗っかりある程度は推進していってしまうベートーヴェンとは違い、まだ指揮者が罐に石炭を入れてやらないと進まないと思うんだよなあ。 いっぽう、たぶん今のブリュッヘンに合っているのは暗くて真面目な第95番なのですが。。 第2楽章中間部には転調して一瞬だけシューベルトみたいになる部分がありましたが、《天地創造》でてんこ盛りだった空疎感(変な表現だ)は、この日はここが最大値だったように思います。そこ以外では従来の元気な音楽づくりが急に思い出されたように浸入して来、全体的にはややどっちつかずな雰囲気がありました。ううむ。 で、最もしっかりと練り上げられていたのは、最後の第93番だったんじゃないかなあ。 練習時間が長かったのかもしれないし、休憩を挟んで一息ついたのかもしれない。団員たちの顔も締まって、オケの響きも今度は統一されている。しかしそれだけではなくて、この作品の古典的なつくりの行間に漂う浪漫の萌芽もかなりプラスの方向に働いたような気がするのです。うまく説明できないので単なる主観でしかないけど、この作品はかっこいいニックネームがある第96番よりもずっと起伏が激しく、浪漫的なオーラがある。 やはりブリュッヘンは、「フレーズをフレーズとしてそれらしくモデリングすること」への興味をやや薄れさせているようで、むしろこのように作品の内燃機関がはっきりしていると響きの醸成だけに力を注ぐことができ、結果としてよい演奏につながるんではないかと思います。 喝采に笑顔で応じるブリュッヘン。何度目かのカーテンコールの時に、オケに向かって両手でピースをしたと思ったら、よっこらしょっと指揮台に上がってしまった!慌てて第93番の譜面から第2+2楽章のページを探し出すオケ団員の皆さん。どうやら予定外だったらしいアンコールは、昔のブリュッヘンみたいな演奏でした。
by Sonnenfleck
| 2009-02-12 06:23
| 演奏会聴き語り
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