昨年の9月末に見たときには、ヴォーカロイドにクラシックを歌わせるジャンルそのものが停滞している感が強くあって、こりゃもうチェックする必要もないかなと思ったんですよ。でも8ヶ月ぶりにニコニコ動画に潜ってみたら、新しいヴォーカロイドは発売されているし、独自の進化を遂げた作品はUPされてるし、またも活気を取り戻したみたいで。
まず皆さまの目と耳で確かめてみてください。全部ニコニコ動画でゴメンナサイ。
◆ヴォーカロイドの正統:「歌わせてみた」系
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【MMD】巡音ルカでカルメン:ハバネラ【偽フランス語】
新しいヴォーカロイドは「巡音ルカ」というらしいです(笑) 英語が発音できる機能を搭載しているみたいで、それをムリヤリ駆使すると、「初音ミク」には難しかった子音の多い言語(フランス語とかね)が比較的うまくいくようです。その例がこちら。1分すぎると耳が慣れます;;
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巡音ルカにC.モンテヴェルディのCor mio mentre vi miroを歌わせてみた
逆に英語機能に頼りすぎると、イタリア語やラテン語がうまくいかなくなってしまう欠点もあって、アメリカの田舎の合唱団が、初見で朝の9時に歌ったモンテヴェルディ、みたいな。
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【KAITO】マタイ受難曲第57曲アリア(バス)「来たれ、甘き十字架よ」
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【KAITO】 海を駆けるオーディン 【レーヴェ】
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【KAIKO】 糸を紡ぐグレートヒェン 【シューベルト】
過去に発売されているヴォーカロイドを使った作品も、精緻を極めるようになってきました。この3つは選曲センスも素敵だし、ドイツ語の発音もほぼ完璧だし、個人的には殿堂入り。
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【MEIKO】 原光 【マーラー】
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【巡音ルカ】マーラー《復活》より第4楽章『原光』(冒頭音量注意)
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【KAITO】 目覚めの太鼓(死んだ鼓手)【マーラー】
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KAITO - Revelge (G.Mahler) Deutsch - VOCALOID(YouTube!)
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【初音ミク】 マーラー: ほのかな香りを私はかいだ
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【初音ミク】 マーラー: 私の歌をのぞかないで下さい
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【初音ミク】 マーラー: 真夜中に
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【初音ミク】 マーラー: 美しさのために愛するのなら
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【初音ミク】 マーラー: 私はこの世に忘れられた
そしてなぜかマーラーが大流行。《リュッケルト歌曲集》が揃っているのには驚いた。
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【鏡音レン・重音テト】ペロタン作曲「アレルヤ」【がくっぽいど】
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【Vocaloidの合唱団】 主に向かいて新しき歌を 【J.S.バッハ】
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タリス『40声のモテット』をがくぽ40人で合唱した
合唱系だとこのあたりが秀作。
◆ヴォーカロイドと一緒:「参加してみた」系
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プーランクの「今日キリストが生まれた」をボカロと合唱(UP主:Bs)
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ブラジル風バッハ第5番よりアリア(Sop:初音ミク, Vc:俺×8)(UP主:Vc)
《ブラジル風バッハ》は凄まじい労作と思われます。ぜひ聴いてみてください。
◆ヴォーカロイドの異端?:「ヴォーカロイド器楽」系
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【巡音ルカ x 6】 S.S.Prokofiev Toccata Op.11
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初音ミクラシック No.23 『道化師の朝の歌』
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初音ミクラシック NO.27 『ヴェクサシオン』(画像が怖いので苦手な方はご注意)
最後は、
「声にかなり似たもの」を使って「声」ではできないことを表現する方法であるところの「ヴォーカロイド器楽」の系統です。プロコフィエフはやや無理がありましたが(苦笑)、ラヴェルとサティは独特の雰囲気が出て面白いと思います。
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音楽美学の観点から、ヴォーカロイドによる「模倣」(あるいは「制作」)に関して考えたりすると面白いんじゃないのと思ったりしますが、思うだけで、一体この日常生活においてどの口が声に出して発信することができるのよという罠。