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振り返れば死者の歌

c0060659_6364191.jpg【Altus/ALT162】
●ショスタコーヴィチ:交響曲第14番ト短調 op.135 《死者の歌》
→テレサ・カーヒル(S)
  ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)
⇒ガリー・ベルティーニ/ケルン放送交響楽団
(1988年2月8日/ケルン・フィルハーモニーでのライヴ録音)

朝夕は秋風が田圃をわたる羽後から、帝都混凝土炎暑音樂生活に復帰しましたが、こういうときは「音源雑記帖」さんの不思議系のお話を思い出しつつ《死者の歌》を聴く夕涼み。(ほんのり怖い、くらいがいいんです。)
先日三枚まとめて発売された、Altusのベルティーニ・ライヴシリーズから。
こういうレパートリーをちゃんと選んできてくれるのが嬉しい。

「第4交響曲がショスタコの中で最もマーラー似」というのはよく言われることだけれども、第14交響曲の豊かな歌謡性と凄味のある諧謔に惹かれる自分としては、この曲こそショスタコ濾過槽を通過したマーラー・エキスの結晶なのではないかと思ってましてね。《大地の歌》との連関は編成等の表面的なもので、むしろ《子供の不思議な角笛》みたいなグロメルヘンの末裔ではないかと。
ベルティーニを何でもかんでもマーラーと結びつけるのはよくないよねえと思いつつ、この《死者の歌》ライヴには、ベルティーニとケルンのオケがマーラー演奏で使っていた口ぶりや姿勢が色濃く反映されているのも確かで、その点でまさに僕の理想に近いようです。

それは特に、モチモチと弾力に富む急速楽章の肌触りと、緩徐楽章の深く甘い陶酔感によって感じられるところ。
前者はたとえば〈マラゲーニャ〉〈心して〉〈ザポロージェ・コサックの返事〉(ここは重くシニカルに統御された第8楽章の美しいフォルムが聴きものであると言えます)。後者で言ったら〈自殺〉のクライマックスも凄いのだけど、煮詰まってとろとろになったオケの甘みを愉しむなら〈詩人の死〉から〈結び〉にかけての7分間が最強です。第11楽章のパーカッションがこんなに美麗に響いているものがあっただろうか!

バルシャイ+ヴィシネフスカヤによる匕首状の演奏が頭にあるから、最初はこの演奏に驚いたけれど、一度味わってしまうと止まらなくなりますな。カーヒルというソプラノのバターナイフのような甘ったるい声も、DFDのいやらしい歌い口も、全部含めてこのハイパー甘露状態です。唯一「各国語歌唱」であるのが…玉にキズ。
by Sonnenfleck | 2009-08-17 06:40 | パンケーキ(20)
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