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モンテヴェルデ屋襲撃

更新を心待ちにしているブログやサイトの数を数えだしてしまうと、両手両足の指を使っても到底足らないわけだが、その中でも特に文章が美しくて好きなのが「Langsamer Satz」「音のタイル張り舗道。(旧『はた迷惑な微罪』)」、そして「ゴロウ日記」なのであります(敬称略)。文体の傾向は三者三様ながら、この方たちのような文章が書けたら悔いはないなと思いながらの日々。

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モンテヴェルデ屋襲撃_c0060659_21471510.jpg【Virgin/5099923614024】
●モンテヴェルディ:『愛の劇場』
→ヌリア・リアル(S)
  フィリップ・ジャルスキー(C-T)
  シリル・オーヴィティ(T)
  ヤン・ファン・エルザッカー(T)
  ジォアン・フェルナンデス(Bs)
⇒クリスティナ・プルハール/ラルペッジャータ

このアルバムは、その「音のタイル張り舗道。(旧『はた迷惑な微罪』)」さんが取り上げていたもの。
そして、僕のモンテヴェルディ観がすっかり変ってしまった記念の一枚。

ラルペッジャータ、というアンサンブルは名前のみ知っていて、エスニックなスタイルを売りにしているようだ、ぐらいの理解でありました。偏狭なクラヲタ精神に蝕まれているせいで、辺境的な演奏に近づくのがなんとなく恥ずかしいナ、という阿呆な想念も、このアンサンブルを見つけるタイミングを遅らせた。

モンテヴェルディはアレッサンドリーニもサヴァールも一応聴きましたが。彼らのような「ヌーヴェル・キュイジーヌ」でさえ、この食材にもってりとクリームソースを掛けて料理していたんだなあ。ラルペッジャータの演奏を聴いてしまって、なんだかそういう気がした。
この、香草というか山菜というか、いずれ古い時代の強い残り香を伴う繊維質の音楽に、厚いクリームを纏わせるのも一つのやり方ではありましょう。しかし自分には、クリームによってその瑞々しい歯ごたえや苦みがスポイルされていたように思われる。むしろスパイスと岩塩だけで味つけするラルペッジャータのやり方は、僕にとってはこれ以上考えられないくらい、モンテヴェルディの本質を浮かび上がらせているように感じられるのです。

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たとえば(いきなりアルバムの最後で恐縮だけども)、トラック16の〈西風が戻り〉というナンバーの軽快さ。余白が多いスコアの隙間を乳成分で満たしてしまうのではなく、岩塩の粒々でむしろ隙間を拡げて空気を含ませてしまう。チャッコーナのチャキチャキした軽さをこのように表現するのかあ。すごいなあ。。そしてジャルスキーとリアルの声で決定的に背すじを射抜かれるステレオ。

それから、ああこんな曲があったんだな―トラック3の〈ずっとあなたを見つめ〉
これは《ポッペアの戴冠》のフィナーレを飾る二重唱とのことで、天国的に美しい音響。僕がラルペッジャータを称賛したいのはまさに、こういうゆったりとしたナンバーにしつこさが微塵もないという点なんだよねえ。擦弦楽器はあってもごく薄く振りかけるくらいに、逆に強く撥弦楽器のスパイスを効かせて(トラック6の〈苦しみが甘美なものならば〉、トラック10の〈安らかにみな忘れ〉などみなそうだ)。

でねでね。トラック2〈ああ、私は倒れてしまう〉の異様な表現は、ぜひご自分の耳で確かめてみてほしいス。セクシーすぎるコルネットの音もあり、、アントネッロのライヴだと瞬間的にこんな感じになってることは珍しくないけどね。。しかしジャルスキーの声はエロいな。。
by Sonnenfleck | 2010-03-04 21:55 | パンケーキ(17) | Comments(0)
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