on the air:ブロムシュテット/N響、春の新マーラー

謎の咳が3週間も治まらず、ライヴから遠ざかっている。
この日もFM定期会員。間が大事な作品がNHKホールで演奏されるときは、FMで聴くのが一番、NHKの収録力は世界一ィ!というのが持論。

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c0060659_18421184.gif【2010年4月10日(土)18:00~ NHKホール】
<第1670回定期公演>
●マーラー:交響曲第9番ニ長調
⇒ヘルベルト・ブロムシュテット/NHK交響楽団
(2010年4月10日/NHK-FM 生中継)

少し前だったら、こういうマーラーは嫌いだったかもしれない。
表面はざらりとしたマットな仕上げ。
縦方向は空隙が多く、決して均一ではない。
横方向への流れも、人間の呼吸のように、やはり均一ではない。
でも、そうだ、ブロムシュテットはこれだ。予想に違わずこれだ。素晴らしい。

宇野功芳が(いつも持ち出してしまうのはきっと「オヤジ」への反抗心なのですが)「生への凄まじい執着といえよう」と表現するこの作品は、FMマエセツで沼野雄司氏が言ったように、ストレートな葬送行進曲が実は存在しない、珍しいマーラー作品でもあるんだわなあ。
そんなことを思うと、この演奏の第1楽章がカラフルなサラダボウルというか、音色セリーみたいに聴こえるのは、とても新鮮だが、そのことにこちらが気づいていなかっただけで、まったく自明のことなのかもしれない。

陰気な皮肉が快速3/4拍子で遠心分離されて、いとも軽やかな第2楽章
ホ長調(B部分?)に突入すると、運動体としての健やかな面白さがさらに強調される。2年前に同じ組み合わせで聴いた《グレイト》のときに「各要素が悪戯っぽく自己主張しながら、それでもふわっと1本にまとまって流線型に推進している」って書いているんだけど、これはそのまま今日も当てはまるなー。あー面白ぇー。ディヴェルティメントだ。
これが82歳ブロムシュテットが僕らに伝えてくれる芸道。なんだろうと思う。

第3楽章がこれまた面白いのは、フツーの演奏ならここで一気に響きを刺々しくしてそれらしい雰囲気を醸成しようとするところ、むしろ逆方向に突っ走ってレガートを(かなり)増量し、今まで以上に繊細優美な音色にしてしまうところ。こういうやり口は初めて体験するぜ。

そんななかで第4楽章がどのように表現されるかについては、それまでの楽章の間中、脳内会議の主要議題だったのだが。
それまで粒状・線状だったマチエールが集合し、太い綱のようにして揺らぐ。これは当然かもしれない。でも、ここに至るまでのバラケ具合が良好だったためか、いざ集合してもずいぶんしなやかに、呼吸するように揺らぐんですね。そのためにトゥッティが官能的なメロディを熱っぽく歌い上げる際にも窒息感がない。かと言って、圧力が弱くて届かないという状況とは根本的に違う。

そして、なぜそのように感じるかわからないのだけど、この演奏からは肯定することの幸福みたいなものを強くイメージするんですわなあ。「おじいさんが指揮するマラ9」的なものをなんとなく期待していた自分の脳髄は、何かまったく新しいものをスパコーンと提示される。N響も素敵でした。
by Sonnenfleck | 2010-04-11 18:57 | on the air
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