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ラ・トゥール展@国立西洋美術館

金曜日、花見客で混雑する上野でジョルジュ・ド・ラ・トゥール展を見てきました。
「美術館へ行くのが趣味なんです」という人でも、ラ・トゥールを知っているかというと必ずしもそうではない。1593年にパン屋の息子として生まれたラ・トゥールは、三十年戦争の戦渦に巻き込まれながらも、パリやロレーヌ地方を中心に広く名声を確立していました。1652年に没したのちは急速に忘れ去られますが、20世紀になって劇的に再発見されることになります。フェルメールに似てますね。
今回の展覧会の企画は、西洋美術館が2003年にラ・トゥールの真作《聖トマス》を購入したところにさかのぼります。ラ・トゥールの現存する真作はわずか40点あまり。《聖トマス》はその中でもごく最近発見された作品で、西洋美術館が日本の個人コレクターを経由して買い上げたものです。世界各地に散らばるラ・トゥール作品がこうして日本で一堂に会するのは恐らくこれが最初で最後でしょうね。先年のローマ彫刻展、マティス展と、西洋美術館の最近の企画の充実ぶりには驚かされます。

《聖トマス》(c.1615-20、油彩、国立西洋美術館)は十二使徒の連作のひとつ。このシリーズは大部分が失われ、今日では≪聖トマス≫のほかに数点が残るのみです。小さな目、額に深く刻まれた皺…頑迷固陋な描写に「疑り深い」トマスの逸話が透けて見えますね。衣紋の無骨さが味わい深い。
《ダイヤのエースを持ついかさま師》(c.1636-38、油彩、ルーヴル美術館)は、山手線や東京メトロの車内広告用ポスターに使われているインパクトの強い作品。漆黒の背景から浮かび上がるいかさま師たちの一瞬の動き、交錯する視線、鈍く重く光る金貨、カモにされた坊ちゃんのうぶな表情、どれをとってもあまりの見事さに言葉を失います。リンク先の画像は解像度が低いのが残念。
《聖ヨゼフの夢》(c.1640、油彩、ナント美術館)はこの展覧会の白眉。イエスの義父、聖ヨゼフが眠りこけている傍らに、天使が訪れて何事かお告げを垂れています。口を半開きにして眠る聖ヨゼフ。側に立つ天使の、人間らしさの微塵もない陶器のような顔が、なよやかにしなる指先が、蝋燭の光を受けて妖しく光ります

ラ・トゥール展@国立西洋美術館_c0060659_1152324.jpgそれにしても入場者の少なかったこと。。長い間作品の前に突っ立って見ていられる幸せを噛みしめましたが、アートマネジメント的にはかなり気になります。この展覧会、保険料だけでもかなり行っちゃってるはずですから(^_^;)

夕方に入館しましたが、見終わって出るころになってもまだ明るい。ずいぶん日が長くなりましたねえ。
その足で上野公園を散歩して何枚か写真を撮りました。ライトアップされないギリギリの明るさでしたが、夕暮れの青空を背負った満開の桜は実にきれいであります。
by Sonnenfleck | 2005-04-10 12:06 | 展覧会探検隊 | Comments(0)
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