【Live Classics/LCL105】
●チャイコフスキー:Vn協奏曲ニ長調 op.35 →ジャンスク・カヒーゼ/モスクワ・フィル ●ショスタコーヴィチ:Vn協奏曲第1番イ短調 op.77 →アレクサンドル・ラザレフ/ソヴィエト国立交響楽団 ⇒オレグ・カガン(Vn) ショスタコーヴィチのVn協奏曲第1番は、ブラームスのPf協奏曲第2番みたいな「協奏交響曲」だと個人的に思っているんだけど、そのくせVnソロパートに名人芸的な箇所があまりにも多いので、だいたいの演奏は、それでいいと思って「協奏曲」の檻の中に寝っ転がっている。 そういう場合、Vnソロには何か責任があるわけじゃなくて(死ぬほど難しいもんね)、指揮者とオケの認識がシンプルすぎるところに理由がありそうです。何しろああいう曲調だから、オケはお団子状に仕立て上げたってなかなか聴き応えがあるし、そういう演奏もずいぶん多いように感じる。 + + + オケに量感とほぐれ感が両立している、みたいな演奏はないのかなあと思っていて。…いや、ここにあった。名高い名盤だけども、予想外に素晴らしい。 第1楽章は、メンツの名前からこちらが勝手に想像する暑苦しい重さが稀薄で、むしろ適度に風の吹く冷ややかなマチエールに仕上がっているのが面白い。 それどころか、この沈鬱な曲調の中から多くの段差や間隙を見つけ出して、寒色系グラデを自在に操っているフシさえある。豊かな音色のトゥッティを抑えたり、放したり、それが極めて巧い。ラザレフ36歳くらい? どこもかしこも響きが緻密で、そのためにトゥッティ内の圧力が異様に高いのに、いちいち身のこなしが素早い第2楽章。これはソヴィエトのライヴとは思えないくらい分離のいい録音コンディションも多分に影響しているものと思うが、いや、やはりUSSR響管楽隊の優秀さが根底にあるんだろうね(スケルツォが最初に回帰したところで続々と表に出てきてソロを迎えるFg、Ob、Hr、Cl、Fg、Fl、コーラングレ、そしてBsClの百花繚乱ぶりは…これは本当に見事としか言いようがない)。 前二つの楽章でも若干ヨタってひっくり返ることのあったカガンのソロは、第3楽章初めまではその傾向を維持するけども、中盤以降、この痛ましいパッサカリアとの親和を強める。 カガンのいがらっぽい音色は、レーピンやムローヴァのようにスマートではなく、かと言ってコーガンのように凍てつきもしない。オイストラフのような全能感もない。しかしその、市井のおじさんが瞬間的にフルスロットルに入ったような集中力の中に、そうでなければと思わせる何かが含まれているように思う。 第4楽章はまことに贅沢な花園状態で、コメントすることがない。この肥沃で傲慢な音響のバランスを整えているラザレフの手腕は絶賛に値するでしょう。 + + + カガンのおじさん的味わいに触れるなら、カップリングのチャイコフスキー。ショスタコを繰り返し聴いたあとでは、まるで温泉に入っているような好い気持ちになる。
by Sonnenfleck
| 2010-06-05 23:45
| パンケーキ(20)
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