シャガール展かと思ったら、ミニ・ロシアアヴァンギャルド+魔笛展だった。展覧会としての構成は若干弱いのだけども、出品作における名作率?が高くて、かなり満足がいきます。
14時半の灼熱上野公園を縦断して藝大まで辿り着く。何もかも色彩がくっきりしている。この会場はだいたいいつもそうなのだけども、この日も土曜日の午後のわりには会場が空いていて、眺めやすい。真夏の日なかは狙い目なのだね。 ◆ゴンチャローワ+ラリオーノフ レイヨニスム 右 ミハイル・ラリオーノフ 《タトリンの肖像》(1913年) 美しいね。夫妻の作品が、他に埋もれずにしっかり見られたのは、この規模の展覧会ならではかもしれません。 特にゴンチャローワの《葡萄を搾る足》と《孔雀》の2点は、厳密にはレイヨニスムではないかもしれないけども、ヴィヴィッドな色彩と直球勝負な構図が爽快で、この素敵な時代の勢いを感じます。のちのストラヴィンスキーとの協同は(《結婚》とかね)、この時期の作品からしても十分に予想される。要するに、好きだ。もっと知られてほしい。 夫のラリオーノフのほうは、様式で様式を描いている感がなくはない。それでも《タトリンの肖像》は、マチエールが異常なまでに透き通っていて(jpgだとこんな見え方ですが)、タトリンのトンガリぶりを見事に表現していると思われた。 + + + ◆MET 1967 THE MAGIC FLUTE 1967年、メトロポリタン歌劇場の依頼で《魔笛》の舞台美術を担当したシャガール。その一連のシリーズ約50点が、まとまった形では今回が本邦初公開なのですな。ちなみに、以下がこのときの豪華キャスト(METのアーカイヴより抜粋)。 Pamina..................Pilar Lorengar 最上部左 同《パパゲーノ》(1966-67年) それにしても、見蕩れてしまった。どれもこれも本当に美しい。舞台のデザインなのだが、画家シャガールがあの色彩をそのままデザインにぶつけているので、衣装も、背景も、煌めくような仕上がりなんですな。それだけでなく、どの人物にもシャガールの温かい愛情が注がれているのが、僕にとっては感動であった。かわいそうなモノスタトスにも、ザラストロの車を牽く獅子にも。 フィナーレの音楽を頭で再生しながら、フィナーレの背景幕を眺めていると、久々に、絵を見て涙が出た。この強い幸福感。 + + + そうそう、シャガールの他の作品は…。今回もポンピドゥーの所蔵品から選ばれているために、2002年の都美での大規模展に来ていた作品ばかりで、新たな発見はなかったけれども、それでもこの人のエッセンスが濃縮されてたなあ。《ロシアとロバとその他のものに》、そして《イカロスの墜落》との再会。 そのほかにも、カンディンスキーの闘争的風景画や、マレーヴィチのデザインに基づく夢想的建築模型など、見所が多い。なんと10月11日までという長期開催なので、もう一度行ってみようかと思っています。
by Sonnenfleck
| 2010-07-25 19:32
| 展覧会探検隊
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Comments(2)
こんにちは。私はお盆休みに行ったのですが、そんなに混んで
ないですね。夏休みとあって科博の大哺乳類展と上野動物園に 人は流れて行ってしまった気がします。都美館は工事中だし、 他の美術館は何故か地味だし、穴場かなあと思いました。 「魔笛」の展示はオペラ好きにはたまりませんね。
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Sonnenfleck at 2010-08-18 22:14
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