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[エピローグ]弥生・オトテール尽くし御膳

[エピローグ]弥生・オトテール尽くし御膳_c0060659_8353111.jpg【SEON(SONY)/SB2K 62942】
<オトテール>
●Flのための作品集 op.2~
  Recと通奏低音のための組曲 変ロ長調
●トリオ・ソナタ集 op.3~
  2つのRecと通奏低音のためのトリオ・ソナタ ニ短調
ほか、オトテール尽くし

→フランス・ブリュッヘン(Rec)、ヴァルター・ファン・ハウヴェ(Rec)
  ヴィーラント・クイケン(Gamb)、バルトルド・クイケン(Ft)
  グスタフ・レオンハルト(Cemb)ほか

LvBを継続的に集中して聴くのって、ほんとにほんとにほーんとに疲れる。
特に、何か新しいものを常に探しながら聴くのは。
今日はブリュッヘンのオトテールを聴くのだ。

+ + +

ジャック・オトテール(1674–1763)の音楽を、フランスバロックにおいてはラモーの次に愛好する私なれば、この古典的名盤は擦り切れるほどに聴いていなければならぬが、手に入れたのはわりと最近です。

ここでふえを吹いているおっさんと、この間まで錦糸町にいたヨボヨボの爺さまと、イメージはつながるだろうか。僕はいまだにつながらない。指揮者のほうをよくよく調べたら、フランヌ・ブリュッヘンとかいう別人だったんじゃないか。

このアルバムでブリュッヘンはリコーダーとフラウト・トラヴェルソを吹いてます。
イメージは攪乱されているけれども、しかし、指揮における変な彫りの深さ、あるいは空虚感好きにつながる音楽性は、ここでもどことなく共通していて、あえて一生懸命探すまでもないんだな。
変ロ長調の組曲のサラバンド、ロンドなどゆったり系舞曲に耳を傾けると、彼の好みは今でも大して変わってないような気がしてくる。すうっと空気の薄まるこういう瞬間、田園にもあったぜ。

ニ短調のトリオ・ソナタ、めっちゃくちゃカッコイイです。
ブリュッヘンとハウヴェは気ままに縺れ合ってひらひらと飛んでいるし、ヴィーラントの抉るようなアーティキュレーションには惚れ惚れとするし、第3楽章などいつものようにさりげないレオンハルトの推進力も素敵。第1楽章のアインザッツの断乎たる趣きは、キリッとして苦みもある柑橘系のシャーベットを口にするようだ。オトテールって大体においてはカスタードクリームっぽいのだが、これもアリ。

ただし、ブリュッヘンの通奏低音のセンスがこうしたレオンハルト的なものとずいぶん異なる、というのは、このまえのロ短を思い出してみても明らかなのね。上の例を持ち出すなら、ブリュッヘンはどう考えてもカスタードクリーム派なのである。

いっぽう、ホ短調の組曲は調性も手伝って、特に切れ味鋭くて呻る。
ハードボイルド・ジーグ。

+ + +

ヒュッと強く吹けば強靭な音になるし、ロングトーンだと息の濃度は下がる。結局今でも、息に紐づいたシンプルな音楽をやってるだけなのかも。
by Sonnenfleck | 2011-03-05 09:04 | パンケーキ(18) | Comments(0)
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