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五百羅漢│増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信@江戸東京博物館(5/1)

普段はあまり極端な言葉遣いをなさらない「はろるど・わーど」のはろるどさんが「猛烈におすすめします」と激賞されていたのを見、これは何かあるなと思って、会期が始まってすぐに出かけることにした。

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c0060659_9195567.jpg芝の増上寺に、狩野一信(1816-1863)の描いた100幅の《五百羅漢図》が眠っている。この作品たち、幕末から明治の初めころはわりと知られた連作だったらしいが、今ではすっかり忘れ去られ、増上寺でも思い出すようにして数幅が取り出されるような状態だったようなのですね。それが140年ぶりに寺外に出され、このたび大規模展として一堂に会し、それはもう目も眩むような色彩と構図の乱れ雪月花、という感じなわけです。

羅漢というのは仏教の聖者たちのことで、しかし一信の描き方では、キリスト教の聖人たちのように清潔でもなければ非人間的でもなく、どこまでいっても泥臭くて、人間的であった。目を血走らせて怒っているものもあれば、風呂に入ってふやけた顔もあり、竜宮城に招かれて楽しそうにしているものも、施しに集まる餓鬼どもに呆れて引いているものもある(ついでながら餓鬼のがっかり感も必見)。

羅漢の肉体の肉々しさは江戸最後期のマニエリスム的な様子をよく伝え、また羅漢の衣や地獄の鬼や異教徒の描写の鮮やかさは、きついアクセントで演奏されるロカテッリやジェミニアーニを聴くような、才気走った鮮烈な印象を残すのです。

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↑第22幅《六道 地獄》 今回のポスターにも使われているド迫力の一幅。AKIRAもベルセルクもこのあたりからそんなに離れてないよな。

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↑第61幅《禽獣》 羅漢が一角獣の耳を掃除してやっている。《地獄》のような威圧的な作品は実はあんまり多くなくて、このような動物関連の和みシーンの絵が多い(一角獣の気持ちよさげな表情はぜひ実物で確認方)。二頭の霊獣がじゃれ合って毛玉化している「ぬこムービー」作品もある。

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↑第82幅《七難 震》 81から90までの七難セットは、背景が黒々と塗られて恐ろしい。地震で倒壊した家屋から人々を救出する羅漢隊。


全部で100幅、加えて下書きやら、東博所蔵の写しやらが数幅、一信が描いた成田山新勝寺の巨大壁画まで、この世の中のほとんどすべての事柄がこの中にあるんではないかと思われるくらい、宇宙的な規模の展開です。作品はそれほど小さくないけど、細部まで偏執狂的に描かれているので、ぜひ混雑しないうちにどうぞ。
by Sonnenfleck | 2011-05-15 09:21 | 展覧会探検隊
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