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モニクおばさんとモーリス

c0060659_1010927.jpg【DGG/00289 477 5353】
<ラヴェル>
●Pf協奏曲ト長調
●左手のためのPf協奏曲ニ長調
●ソナチネ
●高雅にして感傷的なワルツ
→ポール・パレー/フランス国立放送管弦楽団
⇒モニク・アース(Pf)

とっても佳い演奏です。知らなかったあ。
ラヴェルの協奏曲でいつも聴いてるロルフ=ディーター・アレンス+レーグナー/ベルリン放送響の録音は、オケの音色はほとんど最強なんだけど、ピアノが微妙な瞬間も多々あって、なんとかならないものかしらんと感じていたのだが、ここへ来てやっと美しいバランスの演奏に出会うことができた。

+ + +

ト長調のほう。
アースおばさんのきめ細やかさな音色は、彼女のドビュッシーを何度も何度も何ぁーん度も聴いた自分には、ごく当たり前に染み入ってくる。ばあちゃんの味噌汁という感じだ。ドビュッシーのプレリュードと異なるのは、そこでタッチのさらなる怜悧さが追求されているところかな。

パレーのサポートはちょっぴり癖がある。ラヴェルが本来的に抱えている「かたち」のエグさエロさをわりにストレートに演出することで、ドビュッシー風に流れるのをよく防いでいると思う(蛇足だけど、パレーはドビュッシーでも「ドビュッシー風を避ける」ので、結果としてあの剛毅な不思議音楽ができあがる)
第2楽章の複調的階層を、一部の管楽器をかなり強調することで炙り出したり、第3楽章ではピアノからゴジラ主題を受け取ってゾワゾワと蠢かしたり、この指揮者ならではの細かさは枚挙にいとまがない。

そして、より素晴らしく、理想的な演奏なのが「左手」。
ラヴェルの管弦楽作品のなかで最もラヴェルが「素」の状態なのが「左手」だと思っているんだけど、ほかの作品のお洒落な外側に影響されて、この協奏曲の岩山のような荒々しさはあまり顧みられない。でもこの録音は違う。

ここでのアースのタッチは野人のようであり、野人が岩山を駆けるような軽快な運動性と、同時に、野人が感じているシンプルな哀しみのようなものにもちゃんと気を配っていて、軸がぶれない。
パレーは岩山を蔽う黒雲や稲妻のような烈しい伴奏をつける。だいたい模っ糊り模糊模糊としてしまうこの曲のオケ部からちゃんと「かたち」を見つけ出して、いつものように鋭角的に仕上げている。藝術を感じる。



アンコール風に置かれた2曲。パレーもオケもいなくなってアースおばさんの肩の力が抜け、親しみ深いドビュッシーの薫りがふあふあと立ちのぼってくる。「ワルツ」が本当に高雅で感傷的に聴こえる演奏はけっして多くない。
by Sonnenfleck | 2011-07-30 10:12 | パンケーキ(20)
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