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on the air:《ヴェニス・ヴィヴァルディ・ヴェルサイユ》音楽祭のアレッサンドリーニ

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【2011年7月2日 シャペル・ロワイヤル】
<ヴィヴァルディ>
●グローリア ニ長調 RV.589
●TpとObのための協奏曲ニ長調 P.210 RV.563
●マニフィカト ト短調 RV.611
→ロベルタ・インヴェルニッツィ(S)
 ラファエラ・ミラネージ(S)
 ロミーナ・バッソ(CA)
⇒リナルド・アレッサンドリーニ/コンチェルト・イタリアーノ&アカデミア
(France Musiqueオンデマンド)

毎年やってるのかなあこれ。ヴェルサイユ宮殿とNaïveがタイアップして、6月から7月にかけて「3V」音楽祭が開かれてたみたいです。クリスティ、スピノジ、ビオンディからジャルスキー、バルトリ姐さんまで、なるほど豪華な出演者陣。

+ + +

アレッサンドリーニ、個人的にはかなり好不調の波の激しい指揮者だと思っていて(この人はよく「学究肌」とか書かれるけど、僕は全然そう思わない)、調子の良いときはほかの誰も辿り着かないような軽やかな音楽をやるのに、調子が沈むとそれこそ死んだような音楽を鬱々とやる。で、死んでるほうがちょい多め。
(※蛇足だけど、須賀敦子の随筆などを読んでいると、イタリア人のインテリってこういう振れ幅の大きな人が大多数なんじゃないかという気がしてくる。)

この日の演奏は、良いときのアレッサンドリーニが最高のかたちで表出してた。
グローリアもマニフィカトも、ヴィヴァルディらしいシンプルな起承転結には持ち込みにくいフォルムをしているので、彼の厖大な作品の中でも演奏困難なほうに属していると思うのだ。最強の機会音楽にしてアンチ機会音楽の親玉…これはバッハのいくつかの作品と事情がよく似ているんではないかしらん。

で、アレッサンドリーニはそれを逆手に取る。いや、ヴィヴァルディらしい起承転結がそんなに得意でない人だからこそ、これが可能なのか。

マニフィカトは特にお見事。各構成部分ごとにトゥッティに対して多彩な色分けを施し、なおかつコンティヌオをきゅっと引き締めて、細くて強い光線が空間に向かって放射されるのを眺めるような快感、さらにそこから、ヴィヴァルディがこの作品に与えた自律的な安定感まで感じさせた。当然ながらインヴェルニッツィもバッソもその安定感をよく守っている。

ヴィヴァルディに「反機会性」を発見できずにお困りのドイツ系バロヲタの皆さん、いくつかのヴィヴァルディ作品の、なおかつ良い演奏ではそれが聴けるから、騙されたと思って耳を傾けてみてくださいな。
by Sonnenfleck | 2011-10-12 23:08 | on the air | Comments(0)
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