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晴読雨読:舞城王太郎『阿修羅ガール』

晴読雨読:舞城王太郎『阿修羅ガール』_c0060659_19301325.jpg舞城王太郎『阿修羅ガール』、2005年、新潮文庫/2003年、新潮社。

三島由紀夫賞受賞作。性別と顔を明かさない覆面作家という一途なアホらしさに惹かれて、以前から舞城王太郎は気になっていましたので、いっちょ読んでやるかっという軽い気持ちで購入しましたが。

舞台は東京都調布市と異界。女子高生アイコが、好きでもないクラスメートとやっちゃって自己嫌悪に陥ったり、近所で起こったバラバラ殺人を気にしたり、巨大匿名掲示板にくだらないことを書き込んだり、瀕死の怪我を負って冥界に行ったり、本当に好きな男の子に振られたり、夏の暑いさなかお寺で水饅頭を食べたり。いちおう、バラバラ殺人の謎を追うというのが物語の筋となってはいますが…とにかく舞城、やりたい放題すぎだろ。
文体は主人公アイコの口語体一人称をベースにきわめて荒々しく挑発的に造形され、露悪の限りを尽くしたストーリー展開に拒否反応を示す読み手は数多いと思います。これを形容するのに、ポップな、という言葉では到底足りない。いちばんしっくり来るのは「エロ・グロ・ナンセンス」かしら。暴力とエロの応酬です。

でもそこに、仄かなリアリティすらないのが、逆にこの作品を破滅から救っていると思うのですよ。僕など、たとえば同じ露悪路線、村上龍では「もしかしたらこの世界、あるかも」とふと思わせてしまうところが嫌いなのですけれど、この『阿修羅ガール』には不思議とそういった生臭さがない。(ほぼ)日常の話を、ここまで現実感から解放されて展開させられる手腕というのは非凡だと思います。結末がバッドエンドじゃないのも買えるところ。最後は意外にしみじみさせて、このひどく破天荒な話をふわっと軟着陸させます。読後感は決してみじめじゃない。
by Sonnenfleck | 2005-05-11 20:29 | 晴読雨読 | Comments(0)
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