【2012年(収録日不明)】
●渋谷慶一郎:finger light
●同:one
●同:バラッド*
→渋谷慶一郎(Pf)
ジム・オルーク(シンセサイザー)
●ケージ:ONE(1+5+7+8)
→渋谷慶一郎(Pf)
ジム・オルーク(シンセサイザー)
多井智紀(Vc)
(2012年8月18日/NHK-FM)
独奏楽器のために作曲されたケージの「ONE」を多重演奏する試み。
「互いに呼応していない」ことを強調する渋谷氏であったが、聴取者としての自分が捉えるのは、
互いに呼応していない「ように偽装した」呼応した世界なんだわなあ。20分間の長いスパンで聴いたときに、この翌朝の「能楽鑑賞」のようなアトモスフェールを感じ取るのは、演奏者が能の幽玄を知っているからなのか、聴取者が能の寂寞を恋しく思うからなのか、あるいはその両方なのか。
だから、おおッこりゃあすげぇぜ、という感興は起きないんである。むしろ、ああ、これよく知ってる、という気持ち。気持ち。気持ち気持ちいい。でも多重演奏による問題提起みたいなものは感じ取れない。
後半、ゴルフボールを転がすようなノイズが闖入したのはクール。これは演奏者たちの動きを視覚で捉えることができれば、より刺激的なのかな?洗濯ばさみによるプリペアドチェロや扇風機によるパフォーマンスもあったみたい。
「聴くほうが調和を求めてしまう、耳の集中力が(まとまらない音楽たちを)統一させてしまう」というゲストのねーちゃんの最後のコメントにどきりとする。
+ + +
ところでアナログシンセ発のノイズはかわいらしい。あれ、そろそろ伝統楽器の仲間入りさせたげてよ。オンドマルトノみたいに。