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室内の聖なるメガネのために

室内の聖なるメガネのために_c0060659_551209.jpg【DECCA/4669642】
<ヴィヴァルディ>
●ニシ・ドミヌス RV608
●弦楽のための協奏曲へ長調 RV141
●モテット「明るい星々よ、煌きたまえ」RV625
●弦楽のための協奏曲ハ長調 RV109
●モテット「あなた方の聖なる君主のために」RV633
●サルヴェ・レジナ RV616
⇒アンドレアス・ショル(C-T)
→ポール・ダイアー/オーストラリア・ブランデンブルク管弦楽団

たまにこう、むらむらっとヴィヴァルディが聴きたくなるじゃないですか。今やわれわれにはたくさんの選択肢があるけれど、今日はショルの美声に耳を傾けよう。

+ + +

ヴィヴァルディのこまごましたソロ用モテットを集積したこのディスク、iPodに入れて外で聴いているときには全然いいと思わなかったんだよねえ。線が細くて。

しかしたとえば休日の夜に灯りを落として聴いていると、歌い手とオーケストラが静かに堅く結合して、まるで蝋燭の火に照らされる宋代青磁のように透き通った碧を示していたのがわかる。ダメだねえ外でばっかり聴いてると。外は濃口がよく映えるものだから、薄口の旨みがわからなくなってしまう。

ショルはたとえばヘンデルのアリアで彼が聴かせるものより、もう少し観念的な作り込みを心がけているようである。それは人間の声のえぐみや臭みを蒸留して、つるりとした無生物的嫋やかさを保つような歌い方。ヴィヴァルディの明るい旋律線と化学反応を起こしていて面白い。

また、オーストラリア・ブランデンブルク管の品格のあるアンサンブルが「宋代青磁」の出現に深く寄与していることも書き落とせない。
この古楽オケの名前から漂ってくる辺境感は凄まじいが、それに反して音楽の作り方は洗練の極みといえる(昔NHK-FMでライヴを聴いたことがあるような気がしているものの、詳細は思い出せぬ)。通奏低音なんか硬く薄く引き伸ばされていて、この系統のヴィヴァルディは流行のものと違う。BCJのヘンデルといい、メインストリームからの距離は独自の進化を生み出すのか?
by Sonnenfleck | 2012-09-26 05:53 | パンケーキ(18) | Comments(0)
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