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上品の昔

上品の昔_c0060659_11405545.jpgクレメンス・クラウス/ウィーン・フィルの《英雄の生涯》(DECCA、1952年モノラル録音)。今のところ、僕が所有するR.シュトラウス演奏の中ではこれがダントツのお気に入りです。
僕は普段ヒストリカル音源というものをほとんど聴きません。ヘッドフォンで音楽を聴くことがほとんどの身で、頭の中心でガッチリ定位するモノラル録音は長時間聴くのが辛い、というのが一番の理由ですが、そのほかにも、ここ20年くらいの録音に比べれば明らかに情報量の乏しい50年前の録音からいったいどれだけのものを責任持って聴き取れるのか、という底なしの懐疑もあります。どうなんだろう。脳内補正能力の問題なのか??

でもこの演奏はなんか違う。
収録年代が比較的新しく、かつDECCAのスタジオ録音というせいもあって、モノラル録音のなかでもかなりの高音質な部類なのだとは思いますが(各セクションの音をそれぞれ聴き取ることは可能だし、ちゃんと奥行き感があります)、、なんとも言葉にできない雰囲気が漂っているんです。
フレージングの切れ味、まさに小股の切れ上がったというのか…とにかく瀟洒な身振り。ネトネトした無用のタメは一切作らず、リズムが軽やかに飛び跳ねる。「洒脱」という誉め言葉はこういう演奏のためにあるんじゃないかと思います。とにかく格好いい。〈英雄の敵〉での木管の色彩感にはただ唖然とするしかないですし、〈英雄の伴侶〉の色気(ボスコフスキー!)、〈英雄の戦い〉が期待通りストイックなのも実に満足。例の「国葬」部分だけちょっと金管がうるさいのが玉に瑕ですが、末尾のリタルダンドのしみじみとした様子には胸が熱くなります。
こちらで部分的に試聴可能ですんで、ぜひ。
by Sonnenfleck | 2005-05-23 13:50 | パンケーキ(20) | Comments(0)
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