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新世紀プーランク慕情

新世紀プーランク慕情_c0060659_6211287.jpg【Zig Zag Territories/ZZT110403】
<プーランク>
●2台Pfと管弦楽のための協奏曲ニ短調
●《フランス組曲》
●《田園のコンセール》
→クレール・シュヴァリエ(Pf)
 カテジナ・フロボコヴァー(Cem)
⇒ジョス・ファン・インマゼール(Pf)/アニマ・エテルナ

インマゼールのモダンシリーズのなかで、最強のスマッシュヒットと思う。
革命的なプーランク。

まず2台ピアノのコンチェルトを耳にして、ぶったまげてしまった。
それは、プーランクの「愉快」や「諧謔」だけでなく、そうしたアトモスフィアを生じさせようと意気込んだ作曲家の設計図面までつまびらかにされるような、ほとんど残酷と言ってもいい細かな作り込みがインマゼールによって展開されているからだ。そのせいで音楽は極端に重層的になるし、プーランクの―たぶん彼の本質であるところの―宗教的厳格までもが炙り出されている。

ストラヴィンスキー趣味の第1楽章・第3楽章では、これまでこの曲には存在しないと思っていた陰翳が、ふあさふあさと五線譜の隙間に降り積もっている。それはインマゼールが非情に微細なフレージングをこれでもかと積み重ねた結果であるが、それがために、プーランクらしいフラットな感興が損なわれていると感じる人がいてもおかしくはない。それぐらい凡百のプーランクとは異なる。

特に第1楽章の終結部では(しかしおそらく、これは1896年製と1905年製エラールのおかげでもあるが)、仄暗いなかから非情に奇妙な「何ものでもない音楽」が立ちのぼってきて戦慄する。直後、第2楽章の擬モザールに救われました。

《田園のコンセール》も、ずいぶん厳しくて清潔な風貌の音楽に姿を変えている。第1楽章の序奏なんか、まるでカベソンでも聴いているかのようだ。

+ + +

インマゼールもここまで来たのなら、いっそショスタコーヴィチまで駆け抜けてほしいもんです。第1、第6、第9交響曲、あるいはぐるっと一周して死者の歌や第15交響曲。それからもちろん弾き振りでピアノ協奏曲第1番。鼻に黄金時代にボルト(このへんは組曲があるんだからちょうどいい)。インマゼールのスタンスが通じるこれらの作品たちはきっと著しく成功するだろう。
by Sonnenfleck | 2012-11-12 06:22 | パンケーキ(20) | Comments(2)
Commented by 森くま at 2012-11-15 10:32 x
思わずポチらずにはいられない文章でしたm(__)m
プーランクは強烈に好きで、
田園のコンセールも強烈に好きなんです…。
Commented by Sonnenfleck at 2012-11-17 15:54
>森くまさん
コメントありがとうございます。
一見するとプーランクみたいな音楽はいくらでも模倣されてしまいそうですが、実際にはプーランクただひとりがあの不思議な音楽をつくっていますね。魅力的です。
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