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ヱヴァンゲリヲン:Q 感想文

ヱヴァンゲリヲン:Q 感想文_c0060659_2213593.jpgネタバレするので、ご注意ください。






「シン・ヱヴァンゲリヲン劇場版:│┃」

予告に現れた次回作のタイトルはこうだった。新劇場版シリーズが繰り返しの(あるいは繰り返しにまつわる)物語であることが初めて明示されたような気がする。

しかし序破Qときて、:│┃。これだともう一度だけ繰り返す必要がある。D.C.のほうが永遠の輪廻のようで綺麗にまとまる気もするのだが、あるいはフィーネもコーダも用意しませんよという残忍な意思表示なのか?

+ + +

1 あらすじ
「破」の終わりで綾波レイを助けたかに思われた碇シンジは、エヴァンゲリオン初号機ごと使徒に囚われたまま、衛星軌道にあった。地上からロケットで飛び立ち、それを回収する式波・アスカ・ラングレー。

地上では「破」の最後でシンジが引き金になって起こったサードインパクトによって、人類はほぼ全滅。NERVも分裂し、ミサトさんはNERV殲滅を目標とするWILLEという組織を設立して、神殺しの異名を取る空中戦艦の艦長に就任。物語は「破」から14年が経過した世界を舞台にしている。

14年間眠っていたシンちゃんは、その間の事実を知らない。初号機はコアだけになって空中戦艦の内燃機関に使われているから、パイロットは不要。

がっかりしたシンちゃんは旧NERVに舞い戻り、渚カヲルと出会って全てを知る。カヲルの友だち作戦に魅了されたシンちゃんは、彼に導かれるままダブルエントリーシステムを搭載したヱヴァ拾参号機に乗ってセントラルドグマに降下。サードインパクトの贖罪を焦るあまりカヲルの制止も聞かず、シンちゃんはリリス(?)に刺さったロンギヌスの槍2本を引き抜く。

フォースインパクトの発生を避けたいカヲル君は、自ら首をはねて自殺。絶望するシンちゃん。彼を助けにくるのは、しかしアスカとレイであった。幕。つづく。

2 四手連弾とリピート
「うまくいかないや…どうしたらいいんだろう?」「君がいいと思えるまで、何度でも繰り返すしかないよ」―
うーん。これだとやっぱりFine抜きのD.C.のイメージではないか?ともかく、公開前予告の第一弾に使われていたピアノ(YAMAHA!)のエピソードは、旧NERVでのシンちゃんとカヲル君の妖しい友情シーンにしっかり登場(今回は一緒にお風呂シーンはありません)

初号機から返してもらったS-DAT。せっかく壊れていたのにカヲルが修復してしまう。S-DAT輪廻からの解脱が新四部作のテーマだと思っているんだけど、カヲルの言動を見ていると、シンちゃんを繰り返しから脱出させたいのかそうじゃないのか、どうもよくわからない。カヲルの死に放心したシンちゃんは、最後にS-DATを地面に落としても気づかないものの、レイがそれを拾うような素振りも見せる。果たして?

われらがジークフリートが完全にもとのダメ人間に逆戻り。何とも言えないペーソスを感じさせますね。「:│┃」ではちゃんと思い出してくれるかな?

3 第九
フォースインパクトのスタートに伴って、やっぱり第九が鳴り響く。このあとカヲル君の首が落ちるシーンを僕たちはいやでも幻視して、そしてそのとおりの結末を迎えるものだからますますQの位置づけがわからなくなります。新劇場版のカヲル君はシンちゃんにとってのコーダじゃなかったのか?

第九の演奏がテレビ版と同じ音源かどうかなんていうところまではもう付き合いきれませんが、ちょっとタルい演奏だったなあ。ノリントン(旧)とかインマゼールとか使えばよかったのになあ(投げやり)。

4 :│┃
でも、Qのサブタイトルは「YOU CAN (NOT) REDO.」である。普通に受け取れば、フォースインパクトでサードの失態をチャラにするなんて無理よ、ということだろうが、僕はこのサブタイを良い方向に曲解しておくこととしたい。

+ + +

上演後に観客で三三七拍子、みたいな噂があったので身構えてたのだが、実際に暗転してみると弛緩の溜息8割にくすくす笑い2割といった風。年季の入ったおっさんヲタも、カポーも、ヲタ系若者グループも、一様に微妙な表情だったのが印象的だった。

序も破もわりと熱気があってドライな21世紀お花畑風の作劇だっただけに、Qにおける90年代世紀末風の空気の再来は、多くの観客を惑わせることになるように感じる。このジメジメ、この宙ぶらりんこそ自分の慣れ親しんだヱヴァの本質だけどね。。
by Sonnenfleck | 2012-11-18 00:26 | 日記 | Comments(0)
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