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支店を畳む日、そしてさらばレコ芸

この1年で支店に起きた出来事といえば、大家がマスクという御仁に変わったことだ。次々と新しい施策が打ち出されるものだから、店子は海原の小舟のように翻弄されている。

支店を出して10年となるこの7月、大家は大規模改修のためついに店子の活動を著しく制限するに及び、店子が1日あたり見ることができる他の店子各位のツイート件数に上限を設けることとなったのである。
かくして支店は昨夜半から突如としてスタンドアローン状態に陥りました。ちなみに家賃を多めに払うとちょっと他と繋がせてもらえるらしいよ!いやらしい。

店子同士のライトな情報交換の機会が消失したら、もはやそれは支店を開いておく意味がない。本店集約の時が来たのかもしれない。

* * *

ここ最近で時の流れを見ることになった出来事といえば、『レコード芸術』誌の休刊(廃刊)に尽きる。

レコ芸を最初に買ったのは、プーランク生誕100周年記念の特集が組まれた1999年4月号と思われます。メルカリやヤフオクで99年度のレコ芸を検索してみると、どの月の号も表紙や特集を完璧に記憶していて、当時どれほど熱心に読み込んでいたかがわかります。
僕はニフティのクラシック音楽サークルを熱心にやられていた世代より下で、したがってそれらを直接目にしたことはありません。以前もどこかで書いているだろうけれど、当時の僕にとってのインターネット上の情報源はBBS群「クラシック招き猫」が主体でありました。東北の県庁所在地住まいであれば、街の本屋で買うレコ芸をメインとし、そこへ招き猫の情報をサブ的に用いれば、なんとか街のCDショップで目星をつけて小遣いの投入先を知ることができたわけです。

初めて買うブラームスの交響曲全集をヴァントにするかチェリビダッケにするかひたすら悩んだカワイ楽器のCD売り場、新品の輸入盤を初めて見たタワーレコード、家に帰れば『FM fan』の番組表片手にMDにエアチェックしながらレコ芸を読み耽る。これが北東北の田舎の高校生の暗く充実した青春の一コマだったわけですよ。Alas!

それから四半世紀後にレコ芸の命脈が尽きるのは不可避だったのかもしれないが、紙媒体の形を保てないことと、そこにある情報の確からしさを混同するような論調がこの度たくさん見られたのは、なんだかおかしーなーと思う。
とある古参論客がTwitterで書いておられたことに心から同意なので、無断で恐縮だが「RT」させてもらう。おお、そう言えば支店では無断RTが当たり前なのであったが。

《休刊によって経済学で言うところの「サーチコスト」にこれから多くのクラシック愛好家が苦しめられる…》

ここですよね。
(本当はこの下のツリーも読みたかったが障害のせいで読み込めない。)
実はレコ芸の休刊(廃刊)によって、僕たちは母艦を失って漂流する小舟になった。特集が大時代的だ!とか、些末なミスが!とかいう意見は、母艦がプロの編集者・プロの音楽評論家の手で誠実に運営されており、いつでも困ったことがあったら母艦を参照しにいっていいという甘い環境にいればこそ発しうるのであった。
かくして小舟は海原に投げ出され、これからは玉石混交の商的サイトとフリマアプリとサブスクとたくさんの小舟たちの間を右往左往するしかない。そのコストを思うだけで目の前が暗くなる。

小舟は相互扶助的な船団を組むだろうか?それとも母艦の乗組員だったプロの評論家の下に再度結集して新たな母艦を称揚するだろうか?いずれにせよそこに至る道のりはよくわからない。

by Sonnenfleck | 2023-07-02 06:08 | 日記 | Comments(0)
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