![]() ●江村哲二:武満徹の追憶に《地平線のクオリア》(世界初演) ●ショスタコーヴィチ:Pf協奏曲第1番ハ短調 Op. 35 →シモン・トルプチェスキ(Pf)、デイヴィッド・ヘルツォーク(Tp) ○アンコール ショパン:ワルツイ短調 ●同:交響曲第4番ハ短調 Op. 43 いいコンサートでした。以上。 今日だけはそれで済ませてしまいたい!それくらいすばらしい完成度でした。 1曲目は江村氏の新作。舞台には指揮台を挟んで二台のHpが向かい合い、Vnは対抗配置、さらに六台のKbも三台ずつ分けられて左右に配置、という二群オケ的な感じです。 江村氏の作品を聴くのは初めて(でもブログは毎日のように拝見しているので、知らない人という感じはまったくしない)。しかし冒頭から、、あまりの美しさにびっくりしましたです。終始たゆたうような響きで確かに晩年の武満へのオマージュなのだろうけど、彼のように不安定な印象はなく、まるでドビュッシーのようにどっしりとした温かな雰囲気。まさに典雅を音にしたような…なんというか未体験の何かでした。二群のオケは特に対話することもなかったように思ったんですが、ひどく印象に残っているのは、左右に分かれたVnが上行のグリッサンドと下行のグリッサンドでぶつかる箇所。噛み合わない・像を結ぶことのない何か。 ゲンダイオンガクって何かを否定するような響きが本当に多いと思いますが、この作品はそうではなかった。繰り返しますが、美しかったです。また聴きたい。 2曲目はショスタコのピアノ協奏曲第1番。 なんといってもすばらしかったのは、ピアノソロのトルプチェスキ。1979年生まれ、ぜんぜん知らない名前で期待半分不安半分というところでしたが、蓋を開けてみると…軽やかな美音を誇る超絶新人でした。とんでもなく叙情的ながらすっきりとした歌い口でアゴーギクにもいやらしさがなく、第2楽章など最高級・最上級のムード音楽を聴かせてもらったような感じです(まったく皮肉ではなく!)。とにかく天衣無縫を地で行くような幸福なタッチに感激。なるほどアンコールのショパンもいい。Tpのヘルツォークはピアノとオケから幾分テンポが遅れ気味だったものの、弱音器装着時でも痩せない音に惚れます。 (*この曲はガツガツ・ゴツゴツと弾く曲ではない。「ソ連最後のヴィルトゥオーソ」を名乗るような皆さんは、肩に力が入りすぎ!←トラーゼ!) いよいよ後半は第4交響曲。 実は昨日のリハ、10:35ころに鳴り響いた第1楽章序奏があまりにも腑抜けていて仰天したのですが、今考えるとあれはやっぱり朝一番だからであって、今夜の20:15ころに始まった序奏はまさに一点に凝集するような緊張感ある響きでした。続くハ短調の行進曲は比較的遅めのテンポながらきつめのスタッカートがついていてだれない。今夜の演奏は全曲とおして終始テンポが崩れず、非常に快感でした。(*確かに昨日は、拍に旋律を乗せる練習を重ねていた。)何度か訪れるトゥッティのクライマックスも金管を突出させすぎることなく、スマートで理知的な印象を与える。しかし高速フガート(プロの意地を見た。)の頂点で見せた、嵐が吹き荒れるようなずり上げには戦慄しましたです。 第2楽章は管の巧さが光る。この作品はFgソロばかりでショスタコのFgフェチぶりを強く感じさせますが、今夜のソロは大健闘!ただ第2楽章終結部で打楽器(チャカポコチャカポコ...)を導く箇所などあとちょっとだけ力強い音がほしかったかなあ。。 第3楽章はまったく文句のつけようがないっす。どの旋律もみなノーブルで(大野氏の美点はここじゃないかと思う。昨年聴いたベルギー国立との来日公演も落ち着いた美しさが光った)、中間部のおもちゃのような楽想たちも非常にかわいらしかったし、コーダの金管コラールの晴れがましさも理想的。終結部のチェレスタとTpとの不吉な掛け合い、、十数秒の静寂、、盛大な拍手。 こうやって書いてしまうと普通に見えますが、その普通は特別であって、簡単に達成できるようなレベルではない。細部をグロテスクに強調してごまかすなどの阿漕な手段(誘惑は曲中に潜んでいる)を用いずに、こういう難曲を「普通に」仕上げるのは並大抵の才能ではないと思った次第。まったく…年の初めからこれ以上望めないようなショスタコを聴いてしまいました。
by Sonnenfleck
| 2006-01-07 02:23
| 演奏会聴き語り
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